【コラム・先﨑千尋】「私は先﨑さんの話でかっこいいなと思うことがありました。それはふるさとを大切にしていること、そしてふるさとにほこりを持っていることです。自分が勉強したことを社会のために生かそうとする姿勢がとてもかっこいいと感じました」。私は昨年秋、瓜連小学校の5、6年生と中学校の1年生24人に、ゲストティーチャーとして「自分のキャリアをデザインしよう」という話をした。
私だけでなく、市長、住職、花栽培農家、看護師、消防士、新聞記者など、瓜連地区に住んでいるさまざまな職種の人が教壇に立った。
「自分の人生について考えようという総合的な学習の時間」の一コマで、地域と学校の子どもたちはつながっていることを学ばせたい、地域で活躍する人の話を聞き、自己の生き方を考えていく資質・能力を育成させたい、というのが学校側のねらい。3学年の生徒を異学年交流させ、一緒に聴いたあとで、講師の話をどう受け止めたかをディスカッションするというのがみそだ。
私はこの中で、小学生の時から家の仕事(農作業)を分担してやった、宿題は少なく放課後は友達とよく遊んだ、貧しかったが楽しかったという70年も前の子どもの暮らしや、小中学校の時どういう勉強をしたのか、社会に出て大事なことはどういうことかなどを話した。私が強調したのは、とにかくたくさん本を読むことと友だちをたくさん作ることの二つ。本を読むことによって、自分の世界が広がっていく楽しさを語った。
多く学べばそれだけ遠くへ飛べる
そのあと、しばらくして子どもたちから手紙が届いた。冒頭の文もその一つ。他に「自分がどう生きたいのかは自分で決める。瓜連はステキな所だということがわかった。本をたくさん読む。食べることに感謝する。世のためにがんばりたい。自分の一生は世のために使いたい」などがあった。
私は手紙が届くとは考えていなかったので、うれしかった。いずれも、私の言いたかったこと、訴えたかったことを的確にとらえ、自分のものにし、これから進む道への希望を書いてくれている。
私は返事を書くことにし、話を聞いてくれた一人一人に万年筆で名前を書き、学校に届けた。「子どもの時に多くのこと、人間の基礎となることを学ぶことが大事。多く学べばそれだけ遠くへ飛べる、行ける。心も豊かになれる」と書いた。そして「道」という松下幸之助の次の詞(うた)を添えた。私の孫よりもさらに若い世代の人との対話。希望が見えてくる。
自分には 与えられた道がある
広い時もある 狭い時もある
のぼりもあれば くだりもある
思案にあまる時もあろう
しかし 心を定め 希望をもって歩むならば 必ず道は開けてくる
深い喜びも そこから生まれてくる
(元瓜連町長)