【コラム・浅井和幸】2022年のイグノーベル賞で、最も成功するのは、そこそこの才能と大きな運が大切であるという論文がありました。それはさておき、全ての人は一生懸命に頑張って生きていると私は考えています。
ですが、一生懸命に頑張ってもうまくいかないことがあります。自分より豊かな人は何かずるいことをしているのではないか、ただ運がいいだけじゃないのか―と捉えてしまうこともあります。自分よりも豊かでない人には、自業自得だとか、努力が足りないからだ―と捉えてしまうこともあるようです。苦しいときは、このような考えが浮かび、やりきれなくなるものです。
私が代表理事をしている一般社団法人LANSという居住支援法人があります。「住宅確保要配慮者」の方々、つまり住まいが不安定な方々を様々な面で支援しています。
暴力からの避難。会社を辞めさせられ社員寮からの退居。住居取り壊しや火災。自己破産での自宅手放し。家賃の滞納。近隣住民とのトラブル。低所得者や障害者や高齢者。母子・父子家庭。ホームレスや車上生活者。刑余者などで住まいを見つけることが困難な方。
保証人がいない、天涯孤独で緊急連絡先になる人がいない、保証会社が通らない、初期費用が払えない―などで賃貸住宅の契約ができない方もいます。
そのような方には、不動産会社、福祉事業所、病院、自治体などと連携し、各種の制度を利用して、住まいのマッチングを考えます。中には、冷蔵庫や洗濯機などを所持していないし購入もできない、プロパンガス契約の保証金1万円が払えない―というような人もいます。
日用品を購入してまで寄付をいただく
そのような状況に理解のある方から、寄付を常時募集しています。昔、自分も貧乏で大変だったから、役立ててほしいと、寄付をいただくこともあります。捨てるに捨てられないで家に置いてある衣装ケース、昔使っていた布団が押し入れに眠っている―などです。
定期的に寄付をいただく方が言っていました。今、自分は不自由なく暮らしている。それなりに良い暮らしをしている。でもそれは運が良かっただけ。支援を受けることになっていたかもしれない。これからも分らない。
とても努力をされたであろうことは想像に難くない方です。ですが、客観的にご自身をそのように捉えられているのでしょう。日用品を購入してまで寄付をいただくこともあります。感謝に堪えません。自分もこのような気持ちを持っていたいと考えています。(精神保健福祉士)