【コラム・原田博夫】2008年5月にスタートしたふるさと納税制度の問題点は、返礼品騒動以外にも多々ある。たとえば、この制度を通じて寄附を受け入れる自治体と、住民が積極的に他の自治体へ寄附を行うために住民税額が当該自治体から流出する自治体間で、構造的な食い違い・アンバランスが生じている。

まず、2021年度のふるさと納税受入額の多い団体は、全国的には、1位・紋別市153億円、2位・都城市146億円、3位・根室市146億円、4位・白糠町125億円、5位・泉佐野市113億円で、受入件数では、1位・紋別市111万件、2位・泉佐野市89万件、3位・白糠町83万件、4位・根室市77万件、5位・都城市70万件である。

その結果、2022年度の市町村民税控除額の多い団体は、1位・横浜市230億円、2位・名古屋市143億円、3位・大阪市124億円、4位・川崎市103億円、5位・世田谷区84億円で、控除適用者では、1位・横浜市34万人、2位・大阪市21万人、3位・名古屋市19.6万人、4位・川崎市16万人、5位・札幌市12万人である。

茨城県内ではどうか。2021年度の受入額の多い団体は、1位・境町49億円、2位・守谷市35億円、3位・日立市26億円、4位・つくばみらい市17億円、5位・取手市9億円で、受入件数では、1位・境町29万件、2位・守谷市15.9万件、3位・土浦市5.6万件、4位・取手市4.7万件、5位・稲敷市4.2万件である。

その結果、2022年度市町村民税控除額の多い団体は、1位・つくば市10.6億円、2位・水戸市6.2億円、3位・守谷市3.3億円、4位・日立市2.7億円、5位・土浦市2.5億円で、控除適用者では、1位・つくば市2.1万人、2位・水戸市1.4万人、3位・日立市0.7万人、4位・守谷市0.7万人、5位・土浦市0.6万人である。

ふるさと納税がネット通販化

本コラム10(2022年11月27日掲載)で紹介したように、この制度が提案された当時は、地方出身で高所得のサラリーマンが多数居住している大都市部で、この制度を利用する人が多いのではないか、と想定された。その意味では、大都市部の地方自治体から、ふるさと納税の形で寄附額・住民税額が流出するのは想定通りだった。

しかし、受入側の上位団体の顔ぶれを見ると、受入額および件数が多い団体では、明らかに、魅力的な返礼品を取りそろえているケースが多い。その意味では、地元産品の発掘などの営業努力が、こうした結果に反映している側面もある。

一方で、住民税控除の状況(ふるさと納税の利用者が多数居住している自治体)を概観すると、どうも、その地方自治体あるいはそこの居住者が富裕かどうかよりも、むしろ、その地域の住民のウェブ利用の頻度の高さなどが、反映しているようである。

つまり、高所得の中高年齢層というよりは(彼らはしばしばウェブには疎い)、所得水準はそれほど高くなくてもデジタルフリーの壮年層あるいは子育て世代が隙間時間にスマホで検索・アクセスして、魅力的な返礼品をサーチしている様子がうかがえる。現行のふるさと納税がネット通販化している、との批判のゆえんである。(専修大学名誉教授)