【コラム・若田部哲】古来、霞ケ浦とかかわりの深い魚、鯉(コイ)。湖周辺の遺跡からは縄文の頃より食べられていた形跡が見つかっており、近年まで滋養に富む食べ物として、妊婦さんが出産後の肥立ちにあたり、体力回復のため食べていたそうです。現在でもこの霞ケ浦一帯は、食用養殖鯉の出荷量日本一の大産地となっています。
そんな中でも大拠点の一つが行方市の手賀地区。航空地図で一帯を見ると、水田とともに多数の養殖池が並び、独特の景観となっているのがわかります。今回は、手賀地区で35年にわたり鯉の養殖を営んできた、霞ケ浦北浦小割式養殖漁業協同組合代表の理崎茂男さんにお話を伺いました。
養殖の流れは3つの段階に分かれており、まず陸上の水田のような「陸(おか)いけす」で4~5カ月ほど稚魚を育て、その後、霞ケ浦の湖面内のいけす「網いけす」に移します。縦横各5メートルに区切られたいけすを多数並べたこの養殖方法は「小割(こわり)式」と呼ばれ、ここで十分大きくなるまで2~3年ほどかけて育てられます。
そして、最後の仕上げに、きれいな地下水が満たされた陸上の「締(しめ)いけす」に移し、内臓をきれいにし、身の旨味(うまみ)を引き出すのだそうです。
イラストは、締いけすから鯉を網ですくいあげ、大きさごとに選別して出荷用の車の水槽に移しているところですが、この手並みが実に鮮やか。鮮度を落とさないよう、長年の経験で素早く選別するさまは実に見事です。
冬は脂がのり煮つけが最適
さて、そんな鯉の出荷量日本一を誇る霞ケ浦ですが、2003年に養殖業を揺るがす一大事件が起こりました。それが鯉の病気「コイヘルペス」の流行。これにより、一時、鯉の生産は完全に停止し、廃業する生産者も現れました。
この苦境に対し、理崎さんはいけす内の鯉の過密を防ぎ、エサのやりすぎを避けるなどの対策を行い、長年の経験をもとに鯉の様子をよりこまめに確認し、常に元気な状態を保つことで乗り切ったそうです。
現在、取引としては活魚での出荷が多いそうですが、息子さんが手掛ける加工場「鯉丸水産」で、煮つけをはじめとする加工品も生産しているとのこと。また近年は、鯉を高級魚として重用する中国との取引も増えてきているそうです。
最後におすすめの食べ方をうかがうと、冬のこの季節は脂ものって煮つけに最適で、通年では洗いがおすすめとのこと。霞ケ浦大橋たもとの「道の駅たまつくり」ほか、近隣の道の駅などでの購入が可能です。霞ケ浦に古くから根差す豊かな味わいを、ぜひお楽しみください。(土浦市職員)
①サイクリストの宿(2022年7月8日付)
②予科練平和記念館(8月11日付)
③石岡のおまつり(9月8日付)
④おみたまヨーグルト(10月6日付)
⑤冷たくてもおいしい焼き芋(11月12日付)
⑥阿見町のツムラ漢方記念館(12月9日付)
【付記】本コラムは「周長」日本一の湖・霞ヶ浦周辺の、様々な魅力をお伝えするものです。