【コラム・浅井和幸】新年あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。
何かと物騒なこのご時世。外に出かけても、場合によっては家の中にいても、危険なことが目白押しです。転ばぬ先のつえなんて言葉もありまして、大けがしないように前もって準備することが大切だよなんて言いますよね。
かといって、何事も行き過ぎはよくありません。けがをした後に装着するコルセットやサポーターなんかも、下手に使いすぎると筋力が落ちてしまうらしいですね。ましてや、けがをする前から体を支えるつえを使いすぎてしまうと、体がゆがむかもしれないし、筋力は落ちるかもしれませんね。
危ないからと刃物を持たせない、危ないから川遊びをしない、殺菌や滅菌をする、怒鳴るような場面には会わせないなども、度を越せば危険なことにつながります。人を傷つけたくないとか、自分が傷つきたくないとかへの対処も行き過ぎると、部屋で一人過ごし続けるということになります。いわゆる、ひきこもりという状態も起こりうることなのです。
塩や油が体に悪いと全く摂取しなければ、健康を害するものです。それと同じように、心理的なストレスはいけないものだと、ストレスを減らしすぎると不調が起こります。光や音などの刺激のない、ストレス(ストレッサー)がない状況が危険であるという結論の心理実験もあるようです。
苦手なことに適切に挑戦する
成長段階では、様々なことを習得するために苦手なことに適切に挑戦するのが大切なのは分かりやすいと思います。大人になってからの苦手なもの、怖いものに対処するにはどうすればよいでしょうか。
例えば、嫌な上司や仕事、緊張する人前での発表など、出来れば逃げたいけれど完全に逃げられない事柄には、どうすればよいでしょう。手が震えて呼吸も早くなり、想像しただけでも抑うつな気分になってしまうことに。
出来るだけ考えないというのも一つの方法ですが、行動療法の一つに暴露療法という技法があります。人は嫌な事柄から遠ざかれば遠ざかるほど、想像により不安や恐怖心が大きくなることがあります。なので、危険がない状況下で、むしろ嫌な事柄に近づいて安全を確かめていく方法です。
例えば、犬にかまれたことが原因で、犬や犬のほえる声が怖いとします。夜も眠れないぐらいで、明日、犬がいる家に訪問しなければいけないことを考えると、夜も眠れないような犬嫌い。安心できる人に横にいてもらって、10メートルのところまで犬に近づくとか、まずはカウンセリングルームで落ち着いた状態で犬の写真や動画を見ることから始めるなど、思ったより怖がる必要がないことを確認して、徐々に刺激を強くしていくのです。
毎日の生活の中で、自分自身が感じているほど、その恐怖や不安の対象は深刻なものではないことがほとんどです。全てを抱え込まずに、周りの信頼できる人に手伝ってもらって、昨日よりも少しだけ怖いものに近づいて、危険でないことを確かめてみてください。世界が少しだけ明るく見えるはずです。(精神保健福祉士)