高齢化が進む地区内を走るなど、新たな公共交通として注目される小型低速電動車「グリーンスローモビリティー(グリスロ)」の運行が23日から、土浦市おおつ野、土浦協同病院周辺で始まる。先端技術を活用して公共交通の利用を促進しようと「つちうらMaaS推進協議会」(会長・松上英一郎関東鉄道社長)が12月17日までの約2カ月間、3路線で運行する。2020年度に同協議会が実施した実証実験に次ぐ第2弾の実験の一つとなる。
今年度の実証実験は来年3月31日まで半年間実施する。後半の12月24日から来年3月31日までは、おおつ野地区周辺で28人乗りの小型バスを運行する。ほかに、土浦協同病院の待合スペースに電子看板(デジタルサイネージ)を設置し、同病院に乗り入れるグリスロや小型バス、路線バスの到着時刻などを表示する。さらに来年3月末までの期間中、スマートフォンアプリで土浦市内の公共交通や商店、観光施設をキャッシュレスでお得に利用できるサービスを実施する。
協同病院は、JR土浦駅や神立駅を行き来するバスが乗り入れる交通結節点であることから、グリスロや小型バスで地域住民に同病院に来てもらい、乗り換えて出掛けてもらおうという試みだ。
最高時速19キロ
同協議会は関東鉄道と土浦市など13団体で構成する。今年度の実証実験は計約1500万円で取り組む。運行するグリスロは最高時速19キロで公道を走る。乗客の定員は6人。車両は軽自動車よりも一回り大きい、長さ3.6メートル、幅1.6メートルで、1回約9時間の充電で約50キロ走行する。
車内は木製のベンチが向かい合わせに設置され、中央にテーブルが設けられている。乗客席には窓ガラスがない。風を感じながら周りの景色をのんびり楽しむことができるため、観光客の移動手段として利用されている地域もある。雨の日は窓にシートをかける。テーブルをたためば車いすも乗車できる。
県内では笠間、取手、石岡市、境町などですでにグリスロの実証実験が実施されている。
土浦の路線は、協同病院を起点に、平日は、道幅が狭く路線バスが乗り入れできない、沖宿町地区まで往復計約4.5キロを午前8時30分から午後4時まで1日8便運行する。土日祝日は子供たちに新しい公共交通を体験してもらおうと、新興住宅地のおおつ野地区を循環する往復計約5.5キロと、霞ケ浦環境科学センターまでを往復する計約3.3キロの2路線を午前8時30分から午後3時50分まで1日8便運行する。停留所の一部には、電柱にバス停の標識や時刻表を貼った電柱停留所を県内で初めて導入する。
一方、12月24日から運行する小型バスは、協同病院を起点に、午前8時から午後5時45分まで、県立土浦湖北高校、上大津公民館など15.3キロを1日8便運行する。グリスロも小型バスも運賃は無料。代わりに乗客にアンケートに協力してもらい、実際にバス路線として運行できるか、需要動向を探る。
「交通弱者などへ持続可能なネットワーク確保」
運行開始に先立って22日、土浦協同病院で開幕式典が催され、協議会の松上会長は「期間中、市内、県外からいろいろな人が訪れることを期待している。交通事業者として安全運転に努めてまいりたい」などとあいさつした。協議会副会長の安藤真理子土浦市長は「人口減少や交通弱者など持続可能な交通ネットワークを確保することが課題となっており、土浦市の課題解決につながると大いに期待している。たくさんの方に乗っていただいて、この地区に必要だという実証実験になってほしい」などと話した。
式典には、同副会長の中川喜久治土浦商工会議所会頭、小坂博市議会議長のほか、青山大人衆院議員、協同病院を運営する酒井義法JA県厚生連代表理事理事長、河内敏行土浦協同病院院長、古賀重徳国交省関東運輸局茨城運輸支局長ら約50人が参加した。式典後、グリスロの試乗会が催され、病院敷地内を試乗した安藤市長は「変わった車に乗るのは、わくわく楽しい気分になる。スピードもゆっくりで、車内での会話もはずむ」と感想を話した。