【コラム・オダギ秀】足取りもおぼつかない先輩老写真家の撮影を見ていて、学んだことがある。彼は年を経て、経験はたっぷり身に付けているが、今の機材には疎(うと)過ぎる写真家だと思っていたから、彼から学ぶことなんてないと思っていた。彼は、生涯、野草や野の昆虫などを撮ることを専門にしていた。

そんな彼に学べたことがうれしい。

彼が野に撮影に出掛ける姿を見た。野の花を撮りに、ヨタヨタと。そんな彼が、手にしていたのはピッケルだ。どこかに登るわけでもない野原でする撮影に、なぜ、ピッケルが要るのだろうか。ボクは、不思議でならなかったが、すぐ、その理由がわかった。

彼は、撮影現場に着くと、いきなりピッケルを地面に突き立てた。雑草が繁茂して足場の悪い地面でも、ピッケルはしっかりと刺さり、立った。体を低くした彼は、そのピッケルを左手で握ると支えにし、その左手の腕に、右手に持ったカメラの重いレンズを載せて支え、撮影にかかったのだ。

これでブレないで撮影できる。こんなやり方は、どんな教科書にも出ていない。長い経験があったから生み出した知恵、工夫なのだ。なるほど、と思って学ばせてもらったが、写真の世界には、経験が教えてくれる工夫がよくある。

中腰にはスタンディングチェア

若い人には無縁なのかもしれないが、年をとると、中腰での撮影がきつくなる。あと10センチ低い位置でカメラを構えたいとか、だからといって座ってしまうと低過ぎるというようなことがあって、その中間の中腰でカメラを構えることが、少し長い時間になると、なんともきついのだ。

そんなときのために、ボクは、スタンディングチェアというのを見つけて使っている。ボクなりに知恵を絞った工夫のつもりだ。

欧米のビジネス会議は、どっかり椅子・テーブルに着いてではなく、少し高いテーブルを囲んで、腰掛けずに討議することが多くなっているそうだ。そんなとき、腰が弱い者はつらいので、スタンディングチェアを使ったりするらしい。

立った姿勢で座ってやれる。そうだ、こんなのがいい、とボクは、一本足で高さが調節できる、そんなスタンディングチェアという椅子を買った。これが、中腰撮影にはとてもいい。長時間、中腰でカメラを構えていても平気だ。椅子一つでいい工夫だ。

サーフボードの短いケース

さて、うんと背の低い被写体に対応するには、シート1枚が必需品だ。シートがあれば、寝転んで撮影できる、とボクは、写真教室などで言ってきた。「100均」のシートでいいから、と。これは、ウソではないが、工夫が必要だ。

確かに、地面に這いつくばって撮影することはよくある。そんなとき、シートが1枚あれば、大助かりだ。だが、地面が荒地だったりデコボコだったりすると、というより大抵は、肘や膝が痛いなど、快適ではない。

肘当てや膝当ては、とても面倒でイヤだ。ボクは、このために、サーフボードの短いケースを見つけた。防水も完璧だし、軽くてショックに強いから痛くない。大きさも適当なものを選べる。ものすごく使用頻度が多く、気に入っている工夫だ。

色々な工夫をすることは楽しいが、それらは大抵、経験が生み出す。やってみると、いろんなことができるようになって面白い。(写真家、日本写真家協会会員、土浦写真家協会会長)