金曜日, 1月 30, 2026
ホームつくば日本写真協会新人賞受賞、田川基成さん つくばで「海の記憶」展

日本写真協会新人賞受賞、田川基成さん つくばで「海の記憶」展

今年、日本写真協会新人賞を受賞した田川基成さん(37)による写真展「海の記憶」が、10月7日からつくば市天久保のギャラリーYで始まる。田川さんは長崎県出身。受賞作品である故郷、長崎の島々の暮らしを4年にわたり記録した作品群「見果てぬ海」から、同名の写真集収録作品を含む18点が展示される。

同新人賞は将来を期待される有能な新人写真家に贈られる。受賞理由として「『見果てぬ海』は、大航海時代にポルトガル人やスペイン人がキリスト教を伝えた記録から、隠れキリシタンの歴史を掘り起こし、長崎の風景、豊かな海、人々など様々な視点で捉えており、単なる一地方の記録に収まらない。スケールの大きな作品」などと評された。

田川さんは、同テーマの展示を全国5都道府県で開催してきた。県内では初めての開催となる。「海の記憶」に込めた思いについて「長崎自体が持つ歴史、行為、物語、それらを包み込んでいるのが海」「写真は見る人の記憶を呼び起こすメディア。見る人、土地によって感じ方は変わる。会場で、何かを感じてもらえたら」と話す。

初めて訪ねた五島列島から故郷の島を眺める(同)

魔法がかかる

ないだ群青の海。水平線に浮かぶ島影を、雲間から差す光が照らす− 

30歳を迎えた田川さんが、初めて訪ねた長崎県沖の五島列島から、本土に近い自身が育った島を見た日の写真だ。子どもの頃に故郷から見ていたのは、遠く西の海に浮かぶ五島の島々。大人になり、初めてその地に立つと、子どもの頃は知り得なかった海の向こうに広がる「もう一つの世界」を感じ、不思議な気持ちになったという。

写真集「見果てぬ海」には、田川さんが長崎の島々を旅し、出会い直した風景が収められる。新緑の山が包むグラウンドで聖母マリアを囲む人々、部屋の隅に積まれた布団に差す夕日、豊富な海の幸が並ぶ食卓、漁港に立つ男性。どれも島では日常の光景だ。

田川さんは、長崎県西海市の離島・松島で海に親しみ15歳まで過ごした。長崎には600を超える島がある。一帯は、16世紀に欧州から伝わったキリスト教が時代を超え地域に根付く。しかし、その土地の特殊性のみを強調しない。淡々と並ぶ、田川さんの目を通した日々の光景が見る者を惹きつける。その理由は「写真の魔法」だと話す。

「いい光をとらえた写真には魔法がかかる。見慣れた光景が現実から離れていく。現実だけど、幻のよう。僕はそれが『写真の魔法』だと思っている」

五島市福江島の5月第2日曜日に行われる聖母祭(同)

旅人にしか見えないものがある

幼少期、田川さんは海で釣りをし、父の船で海を行き来した。中学校へは町営の船で通学した。高校は本土の長崎市内へ進学。島を離れ下宿した。その後、北海道での大学時代、東京での社会人生活を経て昨年12月に九州に戻った。今は福岡県で、妻、2人の娘と海辺の町で暮らしている。

これまで南米を1年間旅するなど世界50カ国以上を訪ねた。旅することで世界を知り、思考を深めた。「旅人にしか見えないものがある。僕はそれを写真に撮っている」と話す。

30歳で始めた故郷の撮影も「旅」にこだわった。多くの島、長く複雑な海岸線を持つ長崎は移動に制約が多い。「ここなら国外と同様の旅ができる」と感じたという。東京を拠点に1、2週間の滞在を繰り返す「旅」は4年に及んだ。「過ぎ去る一瞬、その場所で2、3日しか見えない景色。長崎に住んでいたら、絶対に撮れない写真」だった。

「海の移動」という視点

故郷で再発見したのが「海の移動」という視点だ。東北出身の知人の言葉を引き合いに出す。

「その人は『長崎の島は、険しい山を越えなければ次の村に行けず、大変』と話していた。でも、それは陸を中心にした見方。島の人は山を越えずに海から行く。長崎には、船で渡る方が早い場所がたくさんある」

「海」の視点は、以前に訪ねたブラジル、ポルトガルでの出会いともつながる。大西洋を挟んだ両国で引かれたのは、海を見渡す入り江の斜面に広がる街だった。平地が少なく、斜面に家が密集する長崎と同じ視点でつくられた街であると気がつくと、「どうしてこんな斜面に人が住まなければならないのか?」という長崎市に感じていた疑問が解けた気がした。各地に通じるのは、交易で栄えたポルトガル人がつくったということ。彼らが見ていたのは、海の向こうの世界だった。

五島市福江島(同)

500年前の大航海時代の最中、ポルトガルの港から帆船で海へと出た人々がいる。長い航海を経てブラジルのリオ・デ・ジャネイロや長崎となる入り江と出会った時、「彼らは祖国の風景を思い出し喜んだのではないか」と田川さんは想像する。また、ポルトガルにある地名と同名の土地が現在のブラジルにもあることを知ると、「もう帰ることのない故郷を思うポルトガル移民が名づけたのかもしれない」と思いを寄せる。

移民への思いは、15歳で故郷の島を離れ、他の土地で暮らしてきた田川さん自身の記憶と結び付く物語でもある。

つくばでの展示と同時開催するのが、東京・新宿区にあるオルトメディウム(Alt_Medium)での写真展「サッポロ スノースケープ(SAPPORO SNOWSCAPE)」。田川さんが学生時代の6年間を過ごした札幌を撮影した新作だ。大学入学前、18歳で初めて立った札幌で目にしたのが一面の雪景色。長崎との違いに「外国のよう」だと感じた。撮影は、今後、数年かけ北海道全域を対象に進めていく。長崎と北海道。見る人は、ふたつの展示を通じて新たな視点と出会うかもしれない。(柴田大輔)

◆写真展「海の記憶」は10月7日(金)〜16日(日)、つくば市天久保1-8-6 グリーン天久保201、ギャラリーYで開催。開館時間は午前11時から午後7時、最終日のみ午後5時まで。入場料300円。

➡NEWSつくばが取材活動を継続するためには皆様のご支援が必要です。NEWSつくばの賛助会員になって活動を支援してください。詳しくはこちら

2 コメント

2 Comments
フィードバック
すべてのコメントを見る
スポンサー
一誠商事
tlc
sekisho




spot_img

最近のコメント

最新記事

入院中の子供たちに寄り添う ファシリティドッグ導入へ 筑波大病院

来年4月から 入院中の子供たちに寄り添い、前向きな気持ちを引き出す「ファシリティドッグ」を筑波大学附属病院(つくば市天久保、平松祐司病院長)が2027年4月から小児病棟に導入する。国立大学病院としては全国初となる。 平松病院長は「つらい治療に向き合っている子供たちの心の支えとしてファシリティドッグが医療チームに加わってくれれば、子供たちは強い力を発揮して病気を克服してくれると思う」と期待を話す。 ファシリティドッグは、がんや重い病気と闘う子供たちのそばで、治療や検査に付き添ったり、リハビリに参加したり、不安な時に添い寝したり、話し相手になったりする。特別な研修を受けた看護師が犬とペアを組んで子供たちの心のケアをする。 同小児病棟には40床の病床がある。病気と向き合う子供たちにとって、治療や検査に伴う不安や恐怖、痛みは大きなストレスとなっていることから、子供たちが少しでも笑顔で過ごせる時間を増やそうと導入を決めた。 ファシリティドッグの訓練を実施し全国のこども病院などに様々なプログラムを提供している認定NPOシャイン・オン・キッズ(東京都中央区)と協働で取り組む。 導入に向け、地元の関彰商事が支援するほか、3月4日から2200万円を目標にクラウドファンディングによる寄付を募る。さらに寄付による支援を受けながら、犬の訓練や看護師の研修などの準備を進める。導入後は6年以上にわたって継続的な活動を想定している。入院患者には利用料は発生しない。将来的には緩和ケア病棟など一般病徴で大人のケアを行うことも視野に入れているという。 29日はファシリティードッグのミコ(ラブラドールレトリバー、3歳メス)が、同NPOのトレーナーなどと共に実際に小児病棟を訪れ、入院中の子供たちと触れ合うなどした。その後、永田恭介学長、平松病院長らと並んで記者会見席に座り、西尾チヅル副学長のひざにあごを乗せるなどのデモンストレーションを披露した。支援を決めた関彰商事の関正樹社長は「セキショウグループは2018年に創業120周年を迎え、120周年記念事業の一つとして取り組む。全社員で企画の志を共有したい。少しでもお役に立てれば」と話していた。(鈴木宏子)

水戸と筑波の「梅まつり」を比較する《水戸っぽの眼》9

【コラム・沼田誠】今年もまもなく「梅まつり」の季節…と言ったとき、つくば市の皆さんは「筑波山梅まつり」を想起されるでしょうか? それとも「水戸の梅まつり」でしょうか? つくば市の皆さまには申し訳ないのですが、「梅まつり」と言えば、水戸に縁がある私にとっては偕楽園の「水戸の梅まつり」です。年明けに暖かい日もあったことから、偕楽園では梅が咲き始めているとの情報も入ってきました。一方、本サイトの記事「ロウバイが満開 筑波山梅林…」(1月14日掲載)に掲載された写真を見て、「筑波山の梅もなかなかよいかも」と感じました。余談ですが、水戸でロウバイ(蝋梅)と言えば弘道館です。本館前のロウバイが開花したとの情報を得ると、早春の香りを楽しみに弘道館を訪れたものです。ということで、今回は「水戸の梅まつり」と「筑波山梅まつり」を比べてみます。 入込客数:水戸24万、筑波15万 まず、県の観光動態調査の数字(入込客数)を見てみます。「水戸の梅まつり」は2010年までは約100万人で推移していました。ところが、2011年の東北大震災で50万人台に落ち込みました。その後も震災前の水準に戻らなかったところ、コロナ禍でさらに減り、直近では24万人台(2025年24.4万人)で推移しています。 もちろん「入込客数」は推計であり、数え方が変わって実数に近づいた結果、減ったように見える可能性もあります。しかし、外部からのショックで数字が大きく揺れる、という傾向は読み取れます。一方、「筑波山梅まつり」はどうでしょうか。2010年は18万人で、震災の年だった2011年でも12万人を確保しています。そして2019年が19万人。ここがひとつのヤマで、2023年には18万人まで戻り、2024年は15万人でした。「水戸の梅まつり」に比べると、乱高下はしていないが、右肩上がりでもない、「上限が見えやすい催し」だと思います。 無理せず気持ちよく回遊-筑波山 その原因は、たぶん交通です。筑波山の梅は、ロープウェイ駅などの限られた入口から歩き出して見に行くようになっています。このため、駐車場やロープウェイなどの収容力や渋滞、公共交通の便といった物理的限界が、そのまま来訪の上限になっているのではないかと思います。 上にリンクを張ったロウバイ記事の「駐車場満杯」も、その「入り口の細さ」を象徴しているように見えます。このことを踏まえれば、無理に増やすより、気持ちよく回遊してもらう―そういうイベント設計思想の方がふさわしいのかもしれません。 歴史を借景に楽しむ-水戸偕楽園 一方、「水戸の梅まつり」は、「地元で自然発生した催し」ではなく、鉄道開通後に始まった観梅列車の運行(当時のインフルエンサーだった新聞記事とセット)と深く結びつきながら、観光のしくみとして育ってきた経緯があります。偕楽園が「藩主の庭園」から観光資源へと変わっていく過程で、鉄道側の観光サービスが重要だったわけです。つまり、偕楽園は「歴史を借景に梅を見る」場所、筑波山は「地形を楽しみながら梅に会いに行く」場所。同じ早春の花でも、味わいが別ジャンルなのです。その違いを感じるために、今早春は、どちらの「梅まつり」にも行ってみませんか?(元水戸市みとの魅力発信課長)

書店で万引き 職員を停職処分 つくば市

つくば市は28日、同市教育局、40代の非管理職職員を同日付けで停職2カ月と3日の懲戒処分にしたと発表した。同職員は昨年4月8日と7月28日の2度にわたり、市内のそれぞれ別の商業施設内の書店で書籍を万引きし、7月の万引きについて窃盗罪で起訴され、昨年11月20日に土浦簡易裁判所から罰金20万円の略式命令を受けたなど、地方公務員法に定められた全体の奉仕者たるにふさわしくない非行があったなどとされる。 市教育局教育総務課によると、職員は4月に書籍10冊を万引きし警察の取り調べを受けた。7月には3冊を万引きし、防犯カメラに映っていたことから後日、警察の取り調べを受け、起訴された。 職員は両日とも休暇をとっており、公務外だったという。いずれも犯行を認め謝罪しているが、なぜ万引きしたかについては、万引きの記憶がないなどと話しているという。 罰金の略式命令が出されたのを受けて、市は職員の懲戒処分について審査する職員分限懲戒審査委員会を開き、27日に処分を決定した。規定では本来、停職6カ月にすべきだが、同職員には雇用期間の定めがあり今年3月末までの任期であるため、任期末日までの停職処分にしたとしている。同職員の性別や、正職員であるか非正規職員であるかについて市は公表しないとしている。 森田充市教育長は「市民の信頼を著しく失墜させる事態になり、誠に遺憾で深くお詫びします。改めて職員に服務規律の順守を徹底させ信頼回復に努めます」などとするコメントを発表した。

稲葉英樹氏第一声 全文文字起こし 茨城6区 衆院選’26

➡音声はこちら https://youtu.be/XNo6pDA-eEk ただいまご紹介に預かりました、茨城6区から立候補いたしました、稲葉英樹と申します。二見さんからの応援、そして恩人でもある古澤市議からの応援、とてもうれしかったです。その声に負けず、この選挙戦を頑張っていきたいと思います。 今度の選挙、どの政党が国民目線で働く政党かを見極める選挙になります。日本共産党は、暮らし、平和、人権、あらゆる分野で、党を作って103年、国民のために1ミリもブレずに働いてきた政党です。政党を選ぶ比例は日本共産党に、そしてここ茨城6区は私、稲葉英樹に皆さんの一票をお寄せください。よろしくお願いします。 皆さん、私は土浦で生まれ、土浦の風に吹かれ育ちました。私にとっての日常というのは決して平坦なものでありませんでした。小学校2年生の時に私は父を亡くしました。それ以来、私の家は母一人子一人の家庭となり、母は泣き言一つ言わず、文字通り身を粉にして働いてくれました。「生きるということはこんなに大変なのか」と子供心に感じてきました。今度の総選挙、私が立候補を決めた理由の一つは、、母のような苦労を他の誰にもさせたくないという思いがあったからです。 皆さん、今の政治は一体誰の方を向いているのでしょうか。地域を歩けば切実な声が聞こえてきます。「給料は上がらないのに、スーパーの買い物は日に日に高くなる、閉店間際の半値引きでしのいでいる」「子どもの学費を払うために、自分の食事を抜いている」ー。これが、この茨城の、この日本のリアルな姿です。ひとり親家庭が増えています。しかし、社会のセーフティーネットはボロボロにされ、自己責任が押し付けられています。 自民党の政治家はどうでしょうか。裏金にまみれ、特権階級の椅子に踏んぞり返り、一杯のカップラーメンの値段すら知らない。そんな人たちに私たちの生活の痛みが分かるはずもありません。国民を向かない、庶民の苦労を知らない自民党政治は、もう終わらせようでありませんか。 皆さん、今政府が進めているのは、5年で43兆円という途方もない大軍拡。その莫大な税金があるなら、なぜ今この瞬間、明日の生活におびえる親子に差し伸べないのか。軍備に回す金があるなら福祉に回せ、これが私の魂からの叫びです。 消費税を5%に下げ、将来的に廃止する。子どもが笑える社会なら、その親も、そして日本を支えてこられた高齢者の皆さんも、安心して笑っていられるはずです、笑って暮らせるはずです。それが政治の本来の役割ではないでしょうか。 私にはエリートのような輝かしい経歴はありません。しかし誰よりも生活の痛みを知っています。母の手のひらの固さを知っています。 自民党が強くても諦めるわけにはいきません。私、稲葉英樹、そして日本共産党が大きく強くなることは、あなたの暮らしが大切にされる社会への第一歩です。 どうか皆さんの手で、この茨城6区から新しい政治の扉を開かせてください。皆さんの暮らしの声を、まっすぐに国会へ届けてまいります。比例は日本共産党、小選挙区は私、稲葉英樹への一票を周りの方へ大きく広げてください。共に誰もが笑って暮らせる日本を作っていきましょう。全力で最後まで訴え抜きます。寒い中ありがとうございました。