【コラム・坂本栄】つくば市長リコール(解任)署名集めが未達に終わったことで、総合運動公園問題の次の焦点は住民訴訟の判決に移りました。市議会が運動公園用地跡売却の可否を議決にかけていれば、解任運動も住民訴訟もありませんでした。議会の怠慢が問題をこじらせているといえます。
署名運動の結果は、本サイトの「市長リコール請求を断念 … つくばの市民団体」(8月16日掲載)をご覧ください。また、用地処分契約の内容は「グッドマンと売買契約を締結 …旧総合運動公園用地」(8月30日掲載)に出ています。
未達の原因について、▽つくばには研究機関用地が必要だとの訴えに市民の関心が薄かった(市民の多くは東京通勤に便利な上質な街つくばに満足?)、▽訴えが多岐にわたり、問題の核心(市の用地売却手順の違法性)がぼけた、▽市民の関心が売却額(110億円)に集まり、用地売却の手順に向かわなかった―と、私は分析しています。
運動公園用地問題はまだ終わらない
解任運動を引っ張った酒井泉さん(研究者)は、市長解任を決意した理由を「今年1月の議会で、用地売却は議決不要との市執行部の判断が示された。売却案を議会に諮り、それを議会が承認するなら、それはそれで仕方ない。しかし、議会の議決も取らず、執行部の勝手な売却を許すというのなら、市民運動で止めるしかないと思った」と言っています。
その第1弾が水戸地裁への住民訴訟(5月下旬、判決は1年ぐらい先、訴状は下記リンク先に転載)、第2弾が不発に終わったリコール署名集め(7中旬~8月中旬)でした。
地裁判決後の流れは、A:市の売却手順は合法→有志市民は上級審に持ち込む、 B:市の売却手順は違法→市執行部は上級審に持ち込む―といった展開が考えられます。判断するのは、(議会を軽視する)行政でも(執行部に従順な)議会でも(あまり関心がない)市民でもなく、(法律に基づき裁く)司法ですから、どうなるか予想できません。いずれにしても運動公園問題はまだまだ終わりそうにありません。
市の「議決不要」を素直に受け入れ
有志市民が違法だと主張する「市の用地売却手順」のおかしさについては、コラム135「運動公園用地売却に見る つくば市の不思議」(6月20日掲載)で取り上げました。
私はこの中で、「不思議なのは、66億円で購入した運動公園用地が市の大事な財産であるにもかかわらず、帳簿上は市のものでなく、市のペーパーカンパニー『つくば市土地開発公社』の所有だから、その売却については議会に諮らなくてよい―という手続き論をタテに、議会の議決を回避したことです」と指摘しました。
笑えるのは、執行部の「議決不要」に議会が異論を唱えず、素直に受け入れたことです。市が運動公園用地を買ったときは、関連する議案を審議しています。ところが、売るときは必要がないというのでは、議会の仕事の放棄です。議決しておけば、この問題はずっと前に片付いていたのに、実に困った議会です。(経済ジャーナリスト)
<参考> 住民訴訟の訴状