【コラム・玉置晋】本稿は掲載の1週間前、2月17日に執筆しているところなのですが、宇宙天気アナリストとして、今週(2月12日~)は少しだけ忙しかったです。久しぶりに太陽フレアが発生したのです。

喜んでよいやら悲しんでよいやら、自分のおかれたポジション柄、ちょっと複雑な気持ちです。宇宙天気アナリストとしては、お仕事できるわけでウキウキしますが、人工衛星の運用者としては困ったもの。なので、仕事場ではポーカーフェースに徹しているつもりですが、時折ニヤリとしていても、皆様お察しくださいね。

さて、事の始まりは日本時間2月12日9時に、地球から見て太陽面の中心付近で発生した太陽フレアでした。この日は建国記念日の振替休日で、僕はお休みを頂いていました。パソコンで宇宙天気データを常にモニタしていますので、宇宙天気のトレンドの変化を見つけてしまうわけです。

僕ってば仕事熱心ですね。いや楽しいんですけどね。果たしてこれは仕事なのか?どこまでが仕事でどこから趣味?世の中、働き方改革が叫ばれ、残業時間削減が言われていますが、この様にグレーな部分をどう扱っていくのか?じっくり労働争議いたしましょうかね。

別次元のネタになってしまいますので、話を元に戻しましょう。太陽フレアの監視は人工衛星や地上の望遠鏡で行われています。僕が太陽フレア監視のために、常日頃モニタしているのは赤道上空、高度3万6千kmから太陽を監視する米国の静止気象衛星GOES(Geostationary Operational Environmental Satellite)のX線データです。

X線はレントゲンでお馴染みの電磁波の一種ですが、皮や肉を透過して骨を診るだけあって、強力なパワーがあってこそ発せられるわけです。太陽上空の100万度を超えるコロナ大気は、その温度故にハイパワー。すなわちX線が放射されています。特に太陽フレアのパワーは超ど級で、1発で水爆10万~1億個分です。太陽フレアが起きるとX線がギラリと輝くわけです。

今回の太陽フレアは「Cクラス」という最弱のものだったのですが、ちょっと厄介なタイプで、太陽コロナの塊を地球方向に吹き飛ばしてくれました。この塊が地球の磁場と衝突して発生する磁気嵐は、人工衛星故障の原因となりますので、動向を追跡しておりました。衛星運用者にアラートを出すべきか否か、悩ましい選択でしたが、今回は限定的に情報を展開するに留めました。

塊が地球を通過したのは2月15日17時過ぎでしたので、太陽から3日と8時間でやってきたことになります。結果として「そよ風」程度で、下手に騒がなくてよかったとホッと胸をなでおろしております。だって毎回騒いでいると、オオカミ少年になってしまうでしょ?(宇宙天気防災研究者)