【コラム・坂本栄】つくばの市民有志から「市内に県立高校を新設してほしい」「県営洞峰公園内に宿泊施設はいらない」との声が出ています。しかし、いずれの要望にも茨城県の対応は冷たく、市民有志と県の間のズレが目立っています。その原因は「上り坂」にある市と「下り坂」にある県の違いにあるようです。今回はそのおはなし。

県立高設立要望vs県立高整理整頓

県立高問題については、118「…学園都市は公立高の過疎地」(2021年10月18日掲載)で触れました。要望のポイントは、▽つくば市は人口が増えているのに市内の県立全日制高が減っている、▽このため市外の県立高や私立高に行かざるを得ない、▽平均的な生徒が通える県立高を近くにつくってほしい―ということです。

これに対し県は、県全体の人口減(下り坂の主因)や少子化を踏まえ、県立高を整理整頓しているのに、つくば市を例外扱いにできない―との考えです。新設など問題外で、せいぜい学級増で対応するスタンスと聞きます。TX効果(上り坂の主因)でつくば市は人口が増えていますから、県の教育インフラ抑制方針を適用するのはおかしな話です。

県立公園で稼ぐvs公園は散歩の場

洞峰公園問題については、134「県営の洞峰公園…市が買い取ったら?」(6月6日掲載)で取り上げました。こちらを仕掛けたのは県で、▽学園都市の代表的な公園の管理を民間にまかせ、▽そこに宿泊&BBQ施設をつくって管理会社に稼いでもらい、▽その上がりで公園整備費をまかないたい(できるだけ税金を使いたくない)―といった計画です。

これに有志市民が反発。宿泊施設が建つと酔っ払いで夜の散歩が不快になる、BBQ施設ができたらその煙や臭いで散歩が不快になる―と反対。計画取り止め(公園の現状維持)を県に求めています。

要は、県営公園を使って、県の魅力度アップ=新しい遊び場づくり=を図り、同時に少しでも稼ぎたい「貧しい」県と、つくば市には公園らしい公園が必要と考える「豊かな」市民の対立です。県は当初計画を修正はするものの、基本構想は変えないようですから、有志市民とのズレは埋まりそうにありません。

つくば市は県から「独立」したら?

私は、これら問題の解決は難しいと思い、上記2コラムで2つの提案をしました。県立高問題は、県を当てにせずに市立高をつくり、つくば市が自分で解決したらどうか―と。また、洞峰公園問題は、公園を買い取って市営公園にして、現状のまま市民に供したらどうか―と。県と市の置かれている状況と方向が違うのだから、市は県から「独立」したら?ということです。

つくば市は、市民有志の要望を踏まえ、ペーパーにして県に出しています。しかし、県立高校問題の解決、洞峰公園の現状維持には、書類を運ぶ仕事ではなく、独自のアクションが必要ではないでしょうか。(経済ジャーナリスト)