【コラム・中尾隆友】日本経済が長期低迷から抜け出せないのは、潜在成長率が過去30年にわたって低下し続けているからだ。潜在成長率というのは、経済的に持続可能な成長率のことを指しており、その国の長期的な経済の実力と言い換えることができる。

政治の不作為が日本を没落させた

日本の潜在成長率はバブル末期の1990年に4%程度と高かったが、2000年代には1%を割り込み、2010年代には0.5%まで低下した。日銀の最新の推計では0.2%まで落ち込んでおり、このままでは2020年代にマイナスになるのではないかと危惧されている。

潜在成長率が低下の一途をたどってきた背景には、人口減少や少子高齢化によるマイナス面が非常に大きいのに加えて、生産性が一向に伸びてこなかったという要因がある。

これは、政治の不作為によるものだ。バブル崩壊後に、国や自治体は景気を下支えするために一時しのぎの公共工事を繰り返してきただけで、それらの政策は潜在成長率を高めることにはほとんど寄与してこなかったからだ。

過剰なインフラ大国・日本

国土交通省や総務省の推計によれば、全国のインフラの維持管理・更新費は現時点で5兆円を優に超える。当然のことながら、20年後、30年後にはこの費用は膨らんでいく。最大で12兆円に拡大する見込みだ。

インフラの更新だけでも困難なのは明白であるため、国土交通省は自治体に対してインフラの取捨選択を促している。しかし、しがらみが多い自治体ほどその動きは逆行する傾向が強い。

インフラの総量を示す公的固定資本ストックは、日本がGDP比で126%であるのに対して、米国が61%、ドイツが45%にすぎない。私たちの子どもの世代のことを考えれば、「新しい道路をつくろう」とか「鉄道を延伸しよう」とか、無責任で愚かな考えは出てこないはずだ。

やるべきことは極めてシンプル

人口減少という大きな足枷(かせ)があるなかで、潜在成長率を引き上げようとしたら、1人当たりのGDPを引き上げていくほかない。要するに、働き手1人1人の生産性を向上させるため、恒常的な「人への投資」が必要不可欠になるというわけだ。

やるべきことは、極めてシンプルだ。生産性を高めるためには、国・自治体・企業が協力して「スキル教育(学び直し)」を広く普及させることだ。

日本は人への投資額が官民そろって先進国のなかで最低水準にある。国だけでなく、茨城県にも賢い財政支出を心がけてもらいたいところだ。(経営アドバイザー)