茨城朝鮮初中高級学校(水戸市)に対する補助金交付を県が停止している問題で、「朝鮮学校の子供たちの人権を守る会・茨城」の共同代表の尾池誠司弁護士は27日、土浦モール505ホール(土浦市川口)での同会総会で、「どんなに時間がかかろうが、(補助金再開が)実現するまで主張していく」と訴えた。この日は、同校の高石典校長が記念講演し、「財政的にも(朝鮮学校が)窮地に追い込まれることによって、ゆくゆくは朝鮮学校をなくしてしまえと言わんばかり」だと補助金交付停止の状況を「不当」と訴えた。
茨城の朝鮮学校、つくば・土浦に原点
私立各種学校にあたる茨城朝鮮初中高級学校へは、都道府県の判断で交付できる準学校法人立外国人学校運営費補助が1981年度から交付されてきた。しかし文部科学省が2015年度、「北朝鮮と密接な関係を有する朝鮮総連(在日本朝鮮人総連合会)が教育内容などに影響を及ぼしている」ことなどを問題視して、朝鮮学校が所在する28都道府県の知事宛てに「朝鮮学校に係る補助金交付に関する留意点について」を通知すると、茨城県は16年度の補助金交付の中止を決定し、現在に至っている。
一方、「人権を守る会」などの支援団体は、県が教育の問題に政治・外交的な問題を持ち込んでいることなどを非難し、同年以降、要望書や、約2万筆の署名を届けるなど、県に対して補助金の再開を求める活動を繰り返してきた。
朝鮮学校は、日本の統治時代に朝鮮半島から渡ってきた人たちの中で、戦後の国土分断、政情不安、朝鮮戦争などから日本に残った約60万人が、子どもたちに母国語を学ばせるために各地に自力でつくった「国語講習所」が原点となった。茨城では、1946年2月に開校した朝連関本初等学院と谷田部初等学校が最も古く、その後、下館、土浦、北条など47年までに22校が開校したとされている。茨城朝鮮初中高級学校は、1953年に前身となる茨城朝鮮中学校が創立され、来年創立70周年を迎える。現在は児童・生徒を含め県内外から48人が在籍している。
県「再開を検討する状況にない」
日本政府は2012年に朝鮮学校を高校無償化から、19年からの幼保無償化制度へは他の外国人学校とともに対象から除外した。さらに、コロナ禍で困窮した学生に国が最大20万円を支給した学生支援緊急給付金制度では、朝鮮大学を対象外とした。
高校無償化からの除外に対しては、これを違法だとし、学校の運営法人や卒業生らが全国5カ所で訴えたが、すべての裁判で敗訴が確定している。しかし、国連の子どもの権利委員会は、高校の授業料無償化から朝鮮学校だけを外した日本政府に対し、「他の外国人学校と同様に扱うべき」であるとし、見直しを求める勧告を出した。また、東京弁護士会は「朝鮮学校に在学する生徒の学習権を侵害し、平等原則に違反するおそれが大きい」と声明を発表している。朝鮮大学を給付金の対象外としたことに対しては、国連人権理事会の特別報告者4人が「差別」であるとして政府に是正を求めている。
NEWSつくばの7月28日の取材に対し、県は、補助金の交付再開について、政府が見解を変更させていないことをあげながら、「状況に何ら変化はなく、再開を検討する状況にはない」とこれまでの主張を繰り返した。