月曜日, 7月 14, 2025
ホーム未分類国の落ち度一部認める 9人に3900万円賠償命令 常総水害、水戸地裁で判決

国の落ち度一部認める 9人に3900万円賠償命令 常総水害、水戸地裁で判決

2015年9月の鬼怒川水害で、住民が甚大な浸水被害に遭ったのは国交省の河川管理に落ち度があったためだなどとして、常総市の住民32人が国を相手取って約3億5800万円の損害賠償を求めた国家賠償訴訟の判決が22日、水戸地裁で出された。阿部雅彦裁判長は、国の河川管理の落ち度を一部認め、国に対し、住民9人に約3900万円の損害賠償を支払うよう命じる判決を出した。

争点として①砂丘林による自然堤防が掘削され太陽光発電パネルが設置された場所から水があふれ出た若宮戸地区について、国が砂丘林を河川区域に指定しなかったのは河川管理に落ち度があったのか②堤防が決壊した上三坂地区について、堤防の高さが低かったのに他の地区に優先して改修しなかったのは、国の河川管理に落ち度があったのかなどが争われた。

判決は、若宮戸地区の砂丘林について、国は砂丘があることを根拠に安全性が備わっていると扱っていたのだから、砂丘を河川区域に指定することを怠ったのは国の河川管理に落ち度があったとし、住民側の主張をほぼ認め、若宮戸地区住民の家屋や家財などの被害に対し損害賠償を命じた。

一方、もう一つの争点である上三坂地区の堤防決壊について、判決は、堤防の高さだけでなく堤防幅も含めた評価を行う必要があるなどとし、「国の改修計画が格別不合理であるということはできない」などとして、国の落ち度を認めなかった。

全国に勇気与える判決

住民側の只野靖弁護士は判決について「当初から人災だと言われ続けてきた被害が、一部かもしれないが(損害賠償を)認められたことは、裁判所の優れた判断があったと思うし、原告32人が力を合わせてやってきたからこそと思う。水害訴訟のこれまでの判例の枠組みの中でも、河川管理者による瑕疵(かし)が認められる事例はひじょうにレアなケース。若宮戸(の砂丘林)を河川区域に指定しなかったのはだめだよと真正面から言ってくれたことは意義がある。全国に勇気を与える判決だったのではないか」と話した。一方、上三坂については「(若宮戸からの溢水による被害と、上三坂からの決壊による被害との)割合的な(損害賠償の)認定も十分可能だったのではないか」とした。

大木一俊弁護士は「晴れとは言えないが、土砂降りとも言えない判決だ」とし「(国の落ち度が認められなかった)上三坂は、周辺より堤防が低くて幅が狭くて洪水が起きやすいところで、本来、他の地点よりも早く堤防を改修すべきだったと主張したが、判決は、上三坂よりも安全度の低いところがあったのだから、著しく不合理とは言えないという理屈で河川管理に瑕疵はないという判断だった。(若宮戸と上三坂の)割合的な認定もあり得たがそれは採用しなかった。その点については高裁でも争う余地がある』と話した。

国交省は真摯に受け止めを

原告団共同代表の片倉一美さん(69)は「国の瑕疵を認めたことは歴史的」と評価し、「国の対応があまりにもひどかったから、何とか直せないかと原告が立ち上がった。国は、改修計画があったといえば自分たちは責任を問われることはないと確信しているようだった。国民に目が向いてないところを直したいと思った。毎年のように各地で水害が起きている。歴史的な判決が出たことに対し、国交省は真摯に受け止めて、危険なところから河川改修をやる方向に改めていただきたい」と強調した。さらに「水戸地裁で決着がつくとは思ってない。必ず最高裁まで進むと思っている。私たちは裁判に勝ち抜いて、鬼怒川が(水害訴訟の)判例だというところまでもっていきたい」と語った。

裁判で損害賠償が認められた若宮戸地区に住む高橋敏明さん(68)は「若宮戸については河川区域に指定しなかったことを全面的に認めていただき、主張通りの結果が得られた。若宮戸は上流で、上三坂は下流。若宮戸の水、上三坂の水に限らず、合流して水海道の方に襲い掛かった。上三坂の方も認めてもらいたかった」と悔しさをにじませた。(鈴木宏子)

➡NEWSつくばが取材活動を継続するためには皆様のご支援が必要です。NEWSつくばの賛助会員になって活動を支援してください。詳しくはこちら

2 コメント

コメントをメールに通知
次のコメントを通知:
guest
最近NEWSつくばのコメント欄が荒れていると指摘を受けます。NEWSつくばはプライバシーポリシーで基準を明示した上で、誹謗中傷によって個人の名誉を侵害したり、営業を妨害したり、差別を助長する投稿を削除して参りました。
今回、削除機能をより強化するため、誹謗中傷等を繰り返した投稿者に対しては、NEWSつくばにコメントを投稿できないようにします。さらにコメント欄が荒れるのを防ぐため、1つの記事に投稿できる回数を1人3回までに制限します。ご協力をお願いします。

NEWSつくばは誹謗中傷等を防ぐためコメント投稿を1記事当たり3回までに制限して参りましたが、2月1日から新たに「認定コメンテーター」制度を創設し、登録者を募集します。認定コメンテーターには氏名と顔写真を表示してコメントしていただき、投稿の回数制限は設けません。希望者は氏名、住所を記載し、顔写真を添付の上、info@newstsukuba.jp宛て登録をお願いします。

2 Comments
フィードバック
すべてのコメントを見る
スポンサー
一誠商事
tlc
sekisho




spot_img

最近のコメント

最新記事

土浦二 1勝ならず 鹿島学園に6回コールド【高校野球茨城’25】

第107回全国高校野球選手権茨城大会は7日目の13日、4球場で2回戦8試合が行われた。J:COMスタジアム土浦の第2試合では土浦二が鹿島学園と対戦し、6回コールドで敗れた。 13日 2回戦 第2試合 J:COMスタジアム土浦土 浦 二  000000  0鹿島学園 330013X 10 土浦二は序盤の大量失点を取り返せなかったが、試合の中でチームの持ち味を見せることができた。石井咲久也主将は「昨年の先輩の成績を超えたい思いはあったが、簡単には勝たせてもらえないレベルの高さを感じた。来年はもっと強いチームになれる。一日一日を大切に頑張ってほしい」と後輩にエールを送った。 先発投手の橋本真直が初回から打ち込まれた。打者8人に4安打1四球を与え3点を献上。「緩急は通用したが厳しいコースを痛打された。上位から下位まで隙がない恐ろしい打線」と橋本。「ていねいにコーナーを突く投球だったが反対方向に低い打球を飛ばされた」と相良真博監督。 橋本は、打たれた分は自分のバットで取り返そうと、2回表にはチーム初安打を記録。「甘い球を全開で振っていった」という左前打で出塁し、次打者の6番・瀧田遥斗が送って2死二塁。7番・清水陽太のとき捕逸に乗じて三塁を回ったが、三本間で挟殺された。これが唯一の得点機だった。 2回裏の橋本は、2安打1四球に走者と野手が交錯する不運も重なり、再び3点を失ったところで降板。代わりにマウンドへ上がったのはのは信戸葵夷。80~90キロのスローボールを低めにコントロールする投球スタイルだ。「自分は球が遅いので高校で野球を続けることに迷いがあった。だが3年生が『投手は球速ではなく制球力だ』と言い、野球の楽しさを教えてくれた。アウトを重ねて先輩が笑顔でナイスピッチと言ってくれるのがうれしかった」と思いを語った。 鹿島学園はこの投球に惑わされ、3~5回は散発3安打でわずか1得点のみ。「投手のコントロール力を軸に守備位置なども工夫した結果、0点の回をつくりゲッツーも取ることができた。投手と守備が連携し、各ポジションがそれぞれやるべきことをやってくれた」と石井主将。「0点の回を2つ続けられたことは3年生への恩返しになったと思う。球の遅さに悩んでいる全国の高校球児にも勇気を与えられたら」と信戸。 今年の土浦二は1、2年生が大半を占めるチーム構成なので、来年への期待が高い。信戸は「この悔しさを糧に、来年は自分たちが中心になって夏1勝に向け、日々練習に励みたい」と目標を掲げ、橋本は「来年、どこと当たっても絶対打たれない投手になって、また夏のマウンドに立ちたい」と心に誓った。(池田充雄) つくば国際、土浦工業が勝利 13日の土浦、つくば地区の高校の試合結果は、J:COMスタジアム土浦の第1試合でつくば国際が佐和に9回の勝ち越しで3-2と勝利、笠間市民球場の第2試合で土浦工業が八千代に9-3と大勝した。 13日 2回戦 第1試合 J:COMスタジアム土浦つくば国際 110000001 3佐   和 000101000 2 13日 2回戦 第2試合 笠間市民球場八千代 100000110 3土浦工 00003321X 9 ◆3回戦以降の日程は以下の通り

土浦日大 初戦で水戸商に敗れる【高校野球茨城’25】

2年前、夏の甲子園で4強入りした強豪土浦日大が、初戦で伝統校の水戸商業に敗れた。第107回全国高校野球選手権茨城大会は7日目の13日、2回戦8試合が行われた。ノーブルホーム水戸では土浦日大が水戸商業と対戦、1-2で破れた。 13日 2回戦 第1試合 ノーブルホーム水戸土浦日大 001000000 1水戸商業 00000020× 2 強豪土浦日大と、伝統校水戸商業の試合とあって、スタンドには多くのファンが詰めかけた。大会7日目で初戦を迎えた土浦日大の小菅勲監督は「自分を信じて思い切りやれ」と選手に声を掛けて送り出した。 3回表、土浦日大はエラーと四球で1死1、3塁のチャンス。「絶対にランナーを返す強い気持ちで打席に入った」という伊勢山暖は、水戸商業の先発 大内来芭のスライダーをセンターに弾き返し、チーム初ヒットとなる先制のタイムリーを放ち、1点を先制する。 土浦日大の先発 永井柊帆は4回までノーヒットに抑えるが、5回に守備の乱れと初ヒットを許し無死満塁のピンチを招く。永井は「ここを抑えれば(チームが)流れに乗るので絶対に抑える」という強い気持ちで投げ、後続を抑えてピンチをしのいだ。 永井を援護したい打線は7回に1死3塁のチャンスをつかむが、近藤祐哉が凡退。するとその裏、永井は2本のヒットを浴び、2死2、3塁とされ、水戸商の代打菊地拓真にライト前タイムリーヒットを打たれた。2者の生還を許し1ー2と逆転される。 反撃したい土浦日大は9回、先頭の梶野悠仁が2塁打でチャンスをつかむが、続く牛久保亮平が空振り三振、一村璃来がセンターフライに倒れると、最後の大橋篤志の打球はセンターの好守備に阻まれ敗れた。 先発の永井は8回を1人で投げ抜いた。「いつも通り、練習通り、やってきたことができたし、今やれることはやった」と永井。スライダーを中心に真っすぐ、ツーシーム、シンカーを使い分け2失点に抑え好投するも、打線が援護出来なかった。 梶野悠仁主将は「野手が永井を援護出来なかったのが悔しい。自分が主将になってから甲子園を目指しやってきて、チームが上手くまとまらない時があったけど、最高の仲間たちとここで負けてしまったのが悔しい」と悔し涙を流しながら語った。 先制のタイムリーを放った伊勢山暖は「自分は2年生で、3年生に引っ張ってもらった部分が大きかったので、自分が先輩に学んだことを後輩たちに引き継いで、結果で3年生に恩返ししたい」と新チームでの雪辱を誓った。 小菅勲監督は「初戦は難しく、初回から固さが取れず、自分たちのスイングが出来なかった」と振り返り「先発の永井はよく投げた。1点も与えられない展開の中で、自分の限界を超えて頑張ってくれた」と永井をたたえた。「9回の無死2塁の場面では逆転を狙って4番の牛久保に思い切って打たせて、結果的に点が入らなかったが、悔いはない」とも語った。(高橋浩一)

追悼カフェ・ド・コトブキさん《ご飯は世界を救う!》68

【コラム・川浪せつ子】暑い日々が続いております。7月3日、私が絵を描き始めた時からお世話になった「カフェ・ド・コトブキ」(土浦市荒川沖町)の店主さんが、熱中症で突然召されました。8日がお葬式でした。7日までつくば市でグループ展をやっていて、その最終日の翌日。7日がお葬式だったら行けなかった。優しかった店主さん、待っていてくださったのだと思いました。 旧常陽新聞に、私がこの欄を掲載し始めたのは、東日本大震災の翌月からでした。そして、ネット新聞「NEWSつくば」に移り、また掲載させていただいたのが2018年7月からでした。その初回で取り上げたのが「カフェ・ド・コトブキ」。開業が1985年でしたから、39年間で幕を閉じたことになります。 この欄で同じお店を2回取り上げたことはありません。それに、お店は無くなってしまったのに…。今回は、店主さんへの追悼として掲載をお許しください。 何でも先延ばしにしてはいけない かつては、息子の塾通いの送迎時などでよく寄らせてもらい、ミニ展示会もお店で3回させてもらいました。しかし、我が家からは少し距離もあり、最近はご無沙汰していました。「またランチスケッチさせてくださいね」と言いつつ、下の絵(2023年)が最後のスケッチ。今年初めにうかがったものの、3月と7月は私の展示会があり、7日の展覧会が終ったら行こうと思っていたのに…。 残されたご家族に、今まで描いたスケッチをまとめて差し上げたいと思っています。今回つくづく感じたことは、何でも先延ばしにしていては取り返しのつかないことが起きてしまうということ。会いたい人には、直ぐにでも会い、いつかやりたいと思っていることは、なるべく早くやることです。合掌。(イラストレーター)

土浦三 科技日立破り3回戦へ【高校野球茨城’25】

第107回全国高校野球選手権茨城大会は6日目の12日、2回戦が行われた。ひたちなか市民球場ではBシードの土浦三が登場、1回戦で逆転勝ちし勢いのある科技日立を7ー4で破り、3回戦進出を決めた。  12日 2回戦 第2試合 ひたちなか市民球場土浦三高 201002101 7科技日立 000030010 4 土浦三は初回1死から下村悠真のヒットと盗塁で1死2塁のチャンスに、鈴木大芽がセンター前タイムリーを放ち先制した。続く星典蔵、池田翔の連続ヒットで満塁とし、大塚秦多の犠牲フライで1点を追加した。 3回にも1点を追加し3点をリードすると、土浦三の先発池田翔は4回まで科技日立打線を1安打に抑えた。しかし5回、1死後に連続四球と2本のタイムリーと内野ゴロの間に同点とされた。 直後の6回、1死2、3塁のチャンスに山本真聖がセンターへの2点タイムリーヒットで勝ち越し。山本は「(相手が)前進守備だったので、コースを絞って強く叩く気持ちで振り抜いた」と話した。 7回には、2死2塁で先発投手からレフトの守備についていた池田翔に代わって、代打島田優聖がストレートをセンターへタイムリーヒットを放ち、突き放した。「池田の代打とは思わなかったので驚いたが、しっかり準備はできていた」と島田。9回にも来栖大蒼の犠牲フライで1点を追加した。 粘る科技日立は、5回途中から池田に代わりセンターの守備からリリーフした2番手黒田広将を攻め、無死2、3塁と反撃に出るも、黒田がスピリット、カーブ、ストレートを上手く使い分け、気迫のこもった投球で3者連続三振に仕留め、チームを3回戦進出に導いた。野手と投手の二刀流の黒田は「次の試合でも打つ方も守備も投げる方もいつも通りチームに貢献出来るように頑張る」と誓った。  3安打を放って鉄壁な守備でチームに勢いを付けた下村悠真は「夏の大会初戦は自分自身経験したことがなくとても緊張感があったが、楽しみつつ思い切りプレーすることが出来た。先制のホームを踏みチームが盛り上がった。次の水戸葵陵は打力のあるチームなので、自分たちの武器である守備をしっかりやって守備から攻撃に流れを持ち込み勝ちにつなげる」と力を込めた。 土浦三高の竹内達郎監督は「科技日立はしっかり鍛えられた、しぶとい、いいチーム。夏の大会は(対戦相手同士の)お互いの思いがぶつかり難しいが、ひるまずにリラックスして闘えたのが良かった。選手には焦らずに狙い球を定めて自分のスイングをしてこいと伝えた。島田は代打の切り札として春から勝負強さが目立っていた。ストレートをよく打った」と島田をたたえ、「次の試合も1試合ずつ勝っていきたい」と語った。3回戦は16日に水戸葵陵と対戦する。(高橋浩一)