【コラム・堀越智也】2年ほど前、香川県でネット・ゲーム依存症対策条例が施行されて話題になりました。18歳未満を対象として、ゲームの利用時間を1日60分、休日は90分までとし、スマホは中学生以下が21時まで、それ以外は22時までとする目安を設け、家庭内でのルール作りを促す―というものです。
賛否両論あったことは想像に難くありません。しかし、この条例施行からたった2年の間でも、ネットによる誘惑が日に日に増えているように感じ、誘惑に負けないように工夫している自分を思うと、条例を作らなければと考えた気持が分かります。
大人も子供も、スマホでゲームやネットサーフィンやSNSを楽しんでいます。僕らが子供のころ、ファミコンは1時間までと親にルールを作られ、それなりに守っていたように思えます。しかし、ファミコンはあえてやろうとしなければできませんが、スマホは手元にあり、ほぼ無意識に利用してしまいます。
そんなスマホの利用を、子供の意思だけでコントロールすることは、容易ではなさそうです。
受験生の間では、スマホ断ち、SNS断ちという言葉があるようで、できる子供はできるのだと思います。それでも、大人も子供も、この誘惑の多い社会で、やるべきことに集中して成果を上げるには、強い意志と秀逸な工夫が必要です。
時間を無駄に使うと寿命を縮める
時間術に関するビジネス書の大半は、スマホやSNSとの付き合い方について触れています。僕もネットのニュースを見る時間を決めたり、プロ野球の開幕前には、スポーツ中継専門チャンネルを解約するなどの工夫をしていますが、それでもネットの誘惑に飲み込まれそうになります。
先日、勉強のためにという言い訳をしながら、投稿された数秒の動画が次々に出る某アプリをインストールしましたが、面白くて永久に見ていられるのではないかという恐怖を覚え、封印しました。
100歳まで生きる時代と言っても、人生には限りがあります。堀江貴文さんがよく書いていますが、時間を無駄にすることは、寿命を縮めるのと同じです。誘惑が多いせいで損する時間を100年から差し引くと、いくつになるのか計算してみたくなります。
確かに、どの時代にも誘惑はあり、1つの誘惑でも膨大な時間を無駄にします。しかし、アリストテレスが生きていた古代ギリシャと比べたら、はるかに多くの誘惑があり、時間を無駄遣いする要素であふれています。ネットがなければ生まれていたはずの哲学者の生まれ変わりが、生まれないままになっているかもしれません。
そんな訳で、ネットの誘惑から法で国民を守ることの賛否はともかく、ネットの誘惑に負けそうになったとき、それを見ている時間、アリストテレスだったら勉強しているぞと自分に言い聞かせて、誘惑を撃退したいと思います。(弁護士)