【コラム・奥井登美子】13日は25℃の異常な暑さだったのに、翌14日は12℃。雨が降って薄ら寒い。1日に気温の差が13℃以上あると、その温度差に、肉体的、体力的についていけない人たちがたくさん出てくる。
気象病、気温差病という病名はまだ一般的でないので、「花粉症」「花粉症の一種」「アレルギー」などと呼んでいる人もいるが、花粉症とは根本的に違うような気がする。
「もしもし、急に寒くなって、血圧が上がったり下がったり、めちゃめちゃなんです。血圧の薬、お宅の薬局からいただいて飲んでいますけれど、こういう時はどうすればいいでしょうか」
「血圧の薬は単に血圧を下げるだけでなく、血管を保護したり、心臓の機能を守る作用もありますので、そのまま、今まで通り飲み続けていた方がいいと思いますが…」
「えっ?」
「ちなみに血圧は何時間おきに測りましたか?」
「心配で、心配で、2時間おきぐらいに測って、1日に7回ぐらい」
うちの薬局に来てくれる人は昔ながらのお馴染みのご近所の人で、1人暮らしのお年寄りが多い。コロナ禍で外に出られない。友達とのおしゃべりも少ない。1日中テレビをみていると、コロナ禍とウクライナの情勢に引き回されて、精神的にも自信がなくなって、どうしたらいいのか、わからなくなってしまうようだ。
真面目過ぎる人を不真面目に導く
そういう時は相手を褒めてあげないといけないのだが、何を褒めたらいいのだろうか。具体的に、何かやるべきことを指示するのもいいのだが、どうすれば精神的に安定してくれるのだろうか、むずかしい問題だ。
真面目過ぎる相手を不真面目に導かなくてはならない。
「気温と気圧に反応が早いのね。敏感だということはいいことだけれど…」
「敏感って、そんなの…、困る?」
「血圧を測るのを1日2回ぐらい、同じ時間に測って、この前さしあげた血圧手帳にキチンと記入して、心配なら、次の診察の時に先生に手帳を見ていただくのはいかがですか」
真面目過ぎる人を不真面目に導くのはむずかしい。(随筆家、薬剤師)