【コラム・田口哲郎】
前略

NHKのBSプレミアムで2006年に放送された朝の連続テレビ小説「芋たこなんきん」の再放送が始まりましたね。大阪の女流作家田辺聖子さんの半生を描いたドラマで、主演は藤山直美さんです。夫役のカモカのおっちゃんには國村隼さんという豪華ペア。毎日泣き笑いしながら楽しく拝見しています。

「芋たこなんきん」と言うタイトルは、江戸時代の上方の作家井原西鶴が、女性が好むものは、芝居、浄瑠璃、芋タコなんきんと書いたことからきています。

なんきんはカボチャのことだそうです。確かに、女性は芋が好きと言うのはよく聞く話ですし、「芋たこなんきん」の前に放送されていた「マー姉ちゃん」の原作者長谷川町子さんのマンガ「サザエさん」でもサザエさんは芋に目がなく、よく焼き芋を買うシーンが描かれています。

芋といえば、茨城は芋王国ですね。干し芋、焼き芋、スイートポテトと茨城産の芋製品が世間を席巻しています。「蔵出し芋かいつか」は人気店ですね。松野木にあるつくば店も、いつもたくさんの人が来ています。つくば店にも行きますが、たまにかすみがうら市の本店に買いに行きます。熟成芋のとろける甘さの焼き芋は衝撃的なおいしさです。

はんなり、やんわり、関西弁

さて、「芋たこなんきん」の話です。豪華俳優、おもしろいストーリーと魅力まんさいのドラマですが、もうひとつの魅力があると思います。藤山直美さんの関西弁です。

ご存じ名喜劇役者藤山寛美さんの娘で、大阪生まれの京都育ち。身についた自然な関西弁は聞いていて心地よいのです。関西弁はケンカしているように聞こえると言われますが、本当にそうでしょうか? 私は幼少期に大阪府で過ごしたことがあります。田辺さんがミナミに比べ文化が乏しいと述べた、北摂の阪急沿線の新興住宅地でしたが、関西弁が周りに溢(あふ)れていました。

子どもなりですが、関東とはタイプの違う関西の人情というものに触れた記憶があります。数年前に京都に旅行したとき、バスに「大原に行きませんか?」と大きな広告が載っていました。奈良線で奈良から京都に向かったときに、途中の木津駅に張り紙がしてありました。「いつもご利用ありがとうございます。すべてのお客さまに快適に鉄道をご利用いただけますよう、禁煙にご協力をお願いします。駅長」と。

これが東京なら、さしづめ「大原に行こう!」「終日禁煙」となるでしょう。慶應大学は関西出身の学生も多いのですが、よく聞いたのは「関東人の言い方はきつく聞こえる」というもの。「なになにじゃん!」と断定されると、ひるむと言うのです(じゃん、は神奈川方言と言われますね)。関西なら「なになにとちゃう?」と否定疑問で聞くそうです。ひとクッションかませる感じです。

ですから、私の関西弁に対するイメージは、はんなり、やんわりなのです。藤山さんの関西弁にあこがれます。ごきげんよう。

草々(散歩好きの文明批評家)