【コラム・坂本栄】総合運動公園計画が2015年の住民投票で覆されてから7年。つくば市は3月、ずっと放置されていた用地を民間に売り払うことを告知。これに反対する声が市民から湧き上がり、本サイトのコメント欄にも賛否の意見が書き込まれています。ところが、議会はこの重要案件で「蚊帳(かや)の外」に置かれ、その役割を果たしておりません。

130を超える意見については、コラム129「公有地売却に見る『逃げ』の…市長」(3月21日掲載)のコメント欄をご覧ください。また、記事「一括売却へ…公募開始 総合運動公園用地」(3月8日掲載)、記事「…(市長)リコール運動へ…受任者集め…」(3月10日)では、ことの経緯がリポートされています。

購入手順とは大違いの売却手順

この公用地売却について、①(賛成は少ないのに)なぜ市民の声を無視するのか、②なぜ議会にその是非を諮らないのか、③なぜ民間売却に固執するのか―と、前回コラムで疑問を呈しました。②の市が議会承認は不要と判断した理由は、用地は市土地開発公社が保有し、市の直接財産ではないから、議会の同意は必要ない―ということだそうです。

用地は広い意味で市の財産ですから、この説明は何か変です。「売却」が「購入」の逆のプロセスだとすれば(購入がゼンマイを巻く作業なら売却は巻いたゼンマイを解く作業)、購入のプロセスを見れば、売却の正しい作法が見えてくるはずです。そこで、購入の経緯を調べました。

公社が運動公園用地をUR都市機構から購入する際、公社は土地代66億円を銀行から借り、その借金を市が保証しました。貸し倒れが生じても、市民が納める税金から返してもらえると、銀行は安心したことでしょう。また、公社の借金は複数年度にわたる市の予算から返済されました。言うまでもなく、市の債務保証と返済予算は議会の承認を得ています。

つまり、ゼンマイを巻くときは何度も議会のOKをもらっているのに、ゼンマイを解くときには議会のOKは要らないというのは、おかしな理屈です。コソコソ処分するのではなく、議会に諮るのが正しい作法ではないでしょうか。そうしないのは、公社をタテにして、議会から(否決されるのが怖くて)逃げ回っているとしか思えません。

議会が市の「逃げ」を止めないのも何か変です。議会の決を採るよう議員から提案し、公有地売却の是非について議会の判断を示すべきでしょう。つくば市議会はそういった仕事もできない、陣笠議員の集まりなのでしょうか?

売却は地方自治法・市条例違反

ここまで書いてきて、五十嵐市長解職(リコール)運動を展開している市民グループが、運動公園用地の民間一括売却は違法だとし、市に「監査請求書」を提出したことを知りました(青字部を押すと全9ページが表示されます)。

監査請求では、公社は事実上「市の一部局」であり、その公社が所有する土地を議会の承認を得ないで処分するのは、地方自治法96条1項および市条例第22号に違反すると指摘。売却を差し止めるよう要求しています。私の緩~い「正しい作法」論と違い、違法と判断した複数の厳しい視点が提供されており、とても勉強になります。(経済ジャーナリスト)