土浦市上高津の筑波研究学園専門学校(TIST、佐久芳夫理事長)に2月、「西谷隆義記念室」が設けられた。理事長を務めていた西谷さんが2017年4月7日、76歳で亡くなってから、5年が経とうとしている。
同校のほか、霞ケ浦高校(阿見町)、総合科学研究機構(CROSS、土浦市)の理事長職にあり、アジア学生文化協会やつくばインターナショナルスクールをはじめとする教育や国際交流、福祉分野の諸団体の理事・評議員を務めていた。没後、勲五等旭日双光章を追贈されており、その保管場所を兼ねて蔵書などをまとめた資料庫の整備が進められた。

記念室は学校1号館2階に約35平方メートルの広さで設けられた。生前の西谷さんが毎年開花を楽しみにしていた校庭の桜を望む小部屋に、理事長室にあった蔵書類が書架ごと整理され、愛用のデスク、筆記具などと共に移された。
蔵書は、郷土史はじめ歴史資料、地誌や民俗学関係の文献や図録、字典・辞書類など1000点を超える。学校関係者によれば、「中央省庁への折衝などで出張した際、神田神保町の古書店に立ち寄るのを楽しみにしていて、大事に持ち帰っては書架に並べていた」という。
土浦市選出の元県会議員だった西谷さんは、筑波研究学園都市の建設事業に初期から関わり、晩年まで教育に携わりながら、航空機産業創出や新大学システムを企図する地域振興に取り組んだ。その一方で、古代・中世の仏教が東国にどう伝わったかなどをたどる郷土史研究を精力的にこなした。古希記念の70歳で著した『霊峰筑波山と徳一大師―知足院中禅寺と筑波山神社』(茨城県郷土文化顕彰会、2012年)は地域社会の関心を集め、ちょっとした徳一(とくいつ、奈良時代の宗教家)ブームを巻き起こしている。
徳一関連の著作のほか、『21世紀筑波の軌跡』(STEP社、1998年)、『愚禿釈親鸞の行実(ぐとくしゃくしんらんのぎょうじつ)』(茨城新聞社、2017年)などに関わる手書きの原稿や出版時の校正紙なども保管。専門学校がマスコットにしているフクロウの彫刻や置物など、西谷さんが個人的に集めたコレクションも数百体、コーナーにまとめられている。
図書資料は現在閉架状態だが、専門学校では学生・教職員向けに貸し出すほか、研修室などに活用する考え。佐久理事長は「探求心のかたまりみたいな西谷さんは貴重な資料を膨大に残していかれた。その薫陶に触れられる、これらの資料を学校・学業の発展に役立てたいと考えている。記念室の開設が桜の季節に間に合ってよかった」と語っている。(相澤冬樹)