【コラム・先﨑千尋】「東海村議会が大変だ」。村の友人が知らせてくれた。何が大変なのかを調べてみた。
顛末(てんまつ)はこうだ。日本原電東海第2発電所の再稼働について今年3月、水戸地裁は避難計画の不備などを理由として認めない判決を出している。原発に大きく依存している村の商工会は「これは困った、東海第2が再稼働しなければ商売が成り立たない」と考えた。そして4月30日、議会に再稼働を求める請願と速やかな避難計画を村が策定するよう求める請願を出した。
文面には「村内商工業者が自立し、安心して健全な経営を維持継続させるために、東海第2の再稼働に伴う広域避難計画の策定についての議論を進めていただくよう」とある。水戸地裁の判決が避難計画策定を再稼働の条件にしているので、議会が請願を通して、村当局に早く避難計画を作るように圧力をかける狙いだと読める。
一方、原発の再稼働反対を訴える「3.11を忘れない東海村アクション」も、6月に「計画策定には慎重を期し、住民との合意が必要だ」とする請願を出している。同村では、2016年5月に避難計画の素案を公表しているが、計画の策定には至っていない。
12月17日に開かれた議会原子力問題調査特別委員会では、商工会からの請願をめぐって激しいやりとりがあった。
18日付「茨城新聞」によると、賛成する最大会派の議員からは「請願は早期に策定するか慎重に進めるべきかが論点で、同計画の中身の審査ではない」「今できる最大限の計画を作ることが事故時のリスク低減につながる。その後見直しながら実効性を高めていくべき」などの意見が出され、採決を求めた。他の議員からは「専門家や福島原発事故避難者らの話を聞くなど、さらなる調査が必要だ」「実効性のない計画を作ることは村民を不安にさせる」などの意見が出され、採決は時期尚早とした。
同委員会では議論の末に採決を行い、次回に論点を整理し、請願を採決することを多数決で決めた。来年1月の委員会で採決の見通しだ。
議会や村長だけで決めてもらっては困る
原発再稼働の条件の一つに「実効性ある避難計画の策定」ということがあり、国や茨城県知事のこれまでの説明では「具体的かつ合理的だと国の原子力防災会議で了承されること」となっている。請願に賛成する議員は「中身ではなく、形だけでいいから早く作れ」という考えのようだが、そのような計画では、原子力防災会議では通らないのではないか。それよりも、私は「東海村が不十分な避難計画でもOKした」という事実が広まることの影響を懸念する。
東海村は日本の原子力発祥の地だ。村の経済は原子力とともに歩んできた。さらに村民あっての商工会だ。もし東海第2が事故を起こせば、村はなくなり、商売もできなくなる。それなら「安全対策を万全にし、避難計画も万全なものにしてほしい」という請願にすべきではないか。この商工会の請願は、村民全体の安全ではなく、自分たちの商売のことしか考えていないようだ。
委員会では、これまでに請願の内容や避難計画の中身について議論されることはなかったという。東海第2の再稼働は、これからの村、そして私たち周辺の住民にとっても極めて大事な課題だ。東海村の議会や村長の考えだけで決めてもらっては困る。まず村民が議会の動きに強く関心を持ってもらいたい。(元瓜連町長)