【コラム・川上美智子】茨城県芸術祭美術展覧会(県展)が10月2日(土)~17日(日)、茨城近代美術館で始まります。新型コロナウイルスの感染下にあって開催が危ぶまれていましたが、デルタ株も沈静化の方向で、無事開催の運びとなります。昨日、自分の作品の搬入を終え、発表の場があること、ありがたく思っています。

振り返ると、第23回国民文化祭茨城大会(いばらき2008)の実行委員会で、陶芸家の荒田耕治先生とご一緒したことがご縁で、先生の教室の生徒になり、それから毎年、県展と水戸市展には欠かさず出展し続け、今日に至っています。かれこれ、陶歴も13年。家の中には所狭しと、10キロの大型作品が30点余り鎮座しています。

県展で2回、水戸市展で1回、賞も頂戴し、いつか個展をやりたい、が夢ですが、60歳からのスタート、夢がかなうかどうかわかりません。荒田先生とは、実行委員としての出会いが初めてでしたが、私が結婚し茨城に移った1970年の笠間佐白山の陶器市で目に止まった、黒釉(こくゆう)彩のコーヒーカップセットを購入した時にお名前をインプットしていました。

今も、陶芸に興味をもたせてくれたそのカップは、マイセンやロイヤルコペンハーゲンのカップと並べて大切に飾ってあります。

陶芸の良さは、作品作りそのものが集中力と持続力をもたらしてくれる時間になることです。日頃のストレスフルな生活を忘れて、ひたすら土をこね、器の表面をきれいに仕上げる手仕事に傾注できることにあります。手指を動かすと、脳の感覚中枢や運動中枢の血流が10%くらい上がり、脳の広範囲の神経細胞が活性化すると言われています。

さらに、手順や段取りを考える、形を創造するなどの高次機能も発達させ、日頃と違う脳の使い方をさせてくれます。高齢者の認知症予防に効果があるため、介護領域ではリハビリのための陶芸療法という言葉も生まれ、高齢社会にピッタリの活動と言えます。

脳の発達や創造性を育てる粘土遊び

また、幼児の粘土遊びも、手指の発達を促し、脳の発達や想像性と創造性を育てるのに効果があり、保育園などの教材としてお道具箱に納められています。男の子は恐竜を、女の子は食べ物と、性差を感じますが、集中して好きなものを作っています。

勤務する保育園ではアート活動に力を入れており、年長さんのクラスには、筑波大学の直江俊雄教授の研究室による絵画活動を導入しています。当方も幼稚園の頃から絵の教室に通い、小学校で大型の油絵を描いていた経験から、幼少期のアート活動が生涯のアートへの関わりにつながることを実感しています。

環境を整え、いろいろな技法を提供するのは園側の仕事ですが、子どもたちが自由な発想で描くこと、創ることを大事にして、多くの機会をつくりたいと考えています。

県内では、芸術の秋に向け、県展のほか、笠間陶芸大賞展、県近代美術館企画展、天心記念五浦美術館企画展など、展覧会が繰り広げられます。新型コロナ禍での巣ごもり生活を少し開放して、アートで癒やされませんか。(みらいのもり保育園園長、茨城キリスト教大学名誉教授)