【コラム・塚本一也】県内鉄道の体験乗車報告も、いよいよ最終路線のJR鹿島線の番になりました。「鹿島線」は、その名称が廃線となった「鹿島鉄道」や以前取り上げた「鹿島臨海鉄道」などに似ており紛らわしいのですが、れっきとしたJR東日本の旅客営業路線です。香取駅から鹿島サッカースタジアム駅(臨時駅)まで6駅あり、営業キロ17.4キロの単線直流電化路線です。
ちなみに、県内の直流電化路線は、この鹿島線と古河駅から乗車する東北線(宇都宮線)しかありません。
私は土曜日の昼間に香取駅から乗車しました。ダイヤは2時間に1本という超ローカル路線であり、駅は無人駅ですが、Suicaが使えたことはさすがJR東日本と、少しうれしくなりました。乗客も、学生や親子連れなどが乗車しており、車両も都市近郊の通勤電車仕様ということもあって、車内には都会の空気が漂っていました。
鹿島線には目玉が2つあります。1つは、平日の始発電車が2時間ちょっとで総武線経由で東京駅へ直接乗り付けており、土曜と休日は3時間で大船まで乗り入れていることです。いずれも8時10分台に東京駅に到着しており、この1本があるということは沿線地域にとっては大きなメリットです。
全長1200メートルの北浦鉄橋
香取駅を出発してすぐに踏み切りがありますが、そのあとはオール高架で高規格路線となっています。さらに、全長1200メートルにも及ぶ北浦鉄橋からの景観は、鉄道ファンならずとも一度は体験する価値があろうかと思います。真っ直ぐに伸びる鉄橋を渡る電車の車窓からは、遠くに筑波山を望み、湖面は電車の振動に共鳴しているかのようにさざ波が立っていました。
これで県内の全鉄道をリポートしましたが、約20分の乗車時間がこんなにすがすがしかったのは初めてです。私は「乗り鉄」でも「撮り鉄」でもありませんが、帰りにはどうしても北浦鉄橋を走る鹿島線の雄姿を脳裏とスマホに焼き付けたくなり、撮影スポットに寄り道しました。ダイヤの関係上、電車は撮影できませんでしたが、とても印象的なひと時を過ごすことができました。
鹿島線にはJR東日本が誇る周遊型臨時寝台列車「四季島」が乗り入れて、鹿島神宮駅で下車するコースがあります。同じく四季島と関連の深い笠間市(車内で使われているぐい飲みが笠間焼、食材でも笠間の栗を使用)ではこのほど、JR東日本とコラボして道の駅をオープンさせました。鹿島線沿線も、自信をもって観光開発に取り組んでいただきたいと思います。(一級建築士)