【コラム・冠木新市】昔見た映画を今見ると印象が変わる場合がある。アルフレッド・ヒッチコック監督の『裏窓』(1954)がそれだった。
J・スチュアート主演の『裏窓』
報道カメラマンの主人公ジェフ(ジェームズ・スチュアート)がケガをし、ギプスで身動きが取れずにいて、窓から正面アパートの住人たちの暮らしを観察する。そのうちジェフは、セールスマンが寝たきりがちな口うるさい妻を殺害したことに気付く。
眼下の小さな庭を囲むビル。アパートには「独身で売れない作曲家」「肌の露出を気にしない若いダンサー」「子犬を子どものように熱愛する中年夫婦」「夫も恋人もなく寂しさを感じている上品な婦人」「現代アート風な彫刻を作る老婦人」ら、窓の内側で暮らす人たちの人間模様がそれぞれ1本の映画のように描かれている。
今見ると、セールスマンの殺人よりもこちらの方にインパクトがあった。新型コロナ感染拡大の状況下で、巣ごもりを強いられた現代と似た景色に見えたからだ。さらに、建物に囲まれた庭がどことなくセンター広場と重なったからかもしれない。
秘かに「妻の遺体を切り刻み」処理
センター広場も、外で眺めるのと窓の内側から見るのとでは印象が変わる。ホテルの眼の形をした11Fから見下すと、小さく見える広場は地球ではなく、どこか遠い惑星かのように錯覚させられる。
だが、吾妻地域交流センター5Fの和室から見ると、意外に庶民的な空間に映る。また、ノバホール3Fの三角窓から眺めると、エキスポセンターから一直線の秩序的な道が階段を降りると混沌(こんとん)とした広場となり、対比をなしていてとても面白い。私のお気に入りは、市民活動センター1Fの印刷室から見た広場の噴水だ。窓枠が額縁となり静謐(せいひつ)な絵となっている。
半年前、「広報つくば」3月1日号に、センタービルのリニューアル計画が初めて発表された。しかしそこには、ノバホール脇の階段が削られ急なスロープになることも、正面玄関の白壁が無くなることも、市民活動センターの窓ガラスが壊され取り替えられることも、何一つ説明は出ていなかった。
これでは、秘かに妻の遺体をバラバラに切り刻み少しずつ処理していく、『裏窓』の犯人と同じ方法といっても過言ではないのではなかろうか。
だから、何か発見あるのではと思って、久しぶりに『裏窓』を見てみたのだが、今回はそんな「犯人」よりも、窓の内側で暮らす「作曲家」「ダンサー」「彫刻家」たちの方が気になった。
改造計画発表後、これまでセンタービルや広場を利用してきたアーチストの声が、賛否を含めてほとんど聞こえてこない。「つくばセンター研究会」のメンバーから、アーチストは市や関係者とのしがらみがあり弱い立場なので、何も言えないのではないかとの声も聞かれた。すでに自由な空気は失われ、匿名の世界でしか発言できない状況なのだろうか。
『つくばセンタービル謎解きツアー』
『つくばセンタービル謎解きツアー』という企画を、メンバーから提案があり「アイラブつくばまちづくり補助金募集」に応募することとなった。センタービルの状況を内側から知るよい機会だと思った。
8月11日、ヒアリング審査がつくば市役所で開かれた。企画内容を説明しようとしたら、すぐ止められ、いきなり質疑応答になった。ところが、議長が促しても質問が出ず、議長から「予算が出なくてもやりますか?」と聞かれ、「やります」と答えた。(その後2名から短い質問があった)
8月12日付で10万円の交付が決定した。センタービルでの活動なので、市の担当部署は中心市街地振興課と思っていたら市民活動課だった。
アイアイモール(これも半分の狭さになる)によって囲まれた、一見何もないように見えるセンター広場には、あるエネルギーが流れているように思える。その正体は何なのか? 『つくばセンタービル謎解きツアー』で解答を示すつもりである。サイコドン ハ トコヤンサノセ。(脚本家)