【コラム・山口京子】人生100年時代という言葉をよく耳にする。2016年に出版された「LIFE SHIFT(ライフ・シフト)100年時代の人生戦略」(リンダ・グラットン著)がきっかけになったようだ。その本によると、2007年生まれの人は50%の確率で107歳まで生きるという。
では実際、日本人の寿命はどうなっているのか。2020年、100歳以上の人口は8万人を超えた。そのうちの88%が女性だ。厚生労働省の簡易生命表によると、平均寿命は男性で81歳、女性で87歳となっている。平均寿命とは、0歳の赤ちゃんがこれから生きるだろう人生の長さを示す。
それに対して、すでにある年齢まで生きた人がその時点から、あと何年生きるであろうかということを示す寿命のことを平均余命という。平均寿命とは、0歳児の平均余命を指す。すでに60歳の人の場合は、男性であと23年、女性で29年。もし、今年80歳の人なら、これから男性で9年、女性で12年生きるだろう。
実際に何歳ごろに多くの人が亡くなっているのかを見ると、男性で85~89歳、女性で90~94歳の間で死亡数が高い。そうした数字をふまえ、私のセミナーでは、生活設計は100歳、もしくは95歳を設定することを勧めている。
健康寿命のこと
寿命を考えるに当たって、もう一つ大事な寿命がある。それは健康寿命だ。周りの人の手を借りず、自律した生活が可能な年齢のことだ。男性で72歳、女性で75歳。今は健康寿命を延ばす取り組みが全国で広がっている。そうしても、いつかは介護のサービスをお願いする時が来るだろう。介護状態になるきっかけは、認知症・脳血管疾患・老衰・骨折などがある。85歳以上の約6割は、要支援・要介護認定を受けている。
だれも自分の人生の長さはわからない。また、介護状態になるのかどうかもわからない。あれこれ悩むよりも、心のけじめをつけること、お金の算段を整えること、法律や制度、自治体のサポート体制を知ることなどが大事だ。制度は改正が頻繁にあるので、新しい情報にアンテナを張ること。
昨今、終活やエンディングノートを書くことが流行っているが、それは心配なことを整理して、前向きに暮らすためのツールだからだろう。数年前、母にエンディングノートを書くことを勧めたが、「縁起でもない」の一言。「あとのことはみんなあんたにまかせたから、あんたがやって」と。
母からいろいろな話を聞きながら、様子を見る。初めて聞く、母の子どもだったころの話、私が知りようもない私が赤子であったことのこと。嫁である母としゅうとの食い違い…。現在88歳の母は、85歳を過ぎて歩行能力が極端に落ちてきている。親の老いは、自分の25年後の姿なのか。
もうすぐ玉ねぎやジャガイモが収穫できる。(消費生活アドバイザー)