月曜日, 12月 23, 2024
ホームつくば英教育専門誌が見解発表 外国人学生数問題 平行線のまま 筑波大

英教育専門誌が見解発表 外国人学生数問題 平行線のまま 筑波大

筑波大学の教職員有志でつくる「筑波大学の学長選考を考える会」(顧問・指宿昭一弁護士)が、「(同大は)指定国立大学法人の申請にあたって、水増しした外国人学生数を文部科学省に報告していた」と指摘している問題で、世界版と日本版で異なる外国人学生比率を掲載した英国の教育専門誌「タイムズ・ハイヤー・エデュケーション(THE)」(英タイムズ紙発行)は3月18日、この問題に対する見解(ステートメント)を発表した。

見解は「THEは筑波大学と共同で、世界大学ランキングに提出されたデータを理解し、今後のデータにどのような学生を含めるべきか提案するために作業を行った。私たちは、今後提出されるデータが我々の公表している定義に沿った一貫したものになると確信している。我々は今回の結果として筑波大学のランクに重大な影響が生じることはないと考えている」とした。

見解に対し、考える会は「THE社が、筑波大学に対し、定義上含めるべき学生のみを外国人学生に含めるよう勧告したことを明らかにした」ものだと述べた。

日本版と世界版に掲載された各大学の外国人学生数の比率を示した図表。考える会、緊急会見時資料より作成。筑波大学の差は他大学に比して大きい

同大は昨年10月、指定国立大学法人に指定された。考える会は、指定国立大学法人の申請にあたって、「外国人学生数を水増しした」などと指摘、永田恭介学長はその責任を取るべきだとして、3月23日、萩生田光一文部科学相宛てに「次期学長に選出された永田恭介学長を再任用しないよう」に求める要望書を提出した。

他方、筑波大は「THEに提出した外国人学生比率の計算方法には大きな問題はなかった」との姿勢を現在まで崩していない。

問題となっているのはTHEに掲載された外国人学生比率(外国人学生の人数を全学生数で割り100を掛けた値)だ。世界版では同大の外国人学生比率は20%だが、日本版では12.60%で、実に7.4%もの違いがある。

考える会は「世界版においては本来含めるべきではない種類の学生を算入することによって、恣意的に外国人学生の比率を多く見せようとしているのではないか」と指摘する。

一方、同大学長補佐室長の池田潤教授(大学執行役員)=当時=は「最大の差を生み出しているのは『データの報告形式の差』。例えば、世界版では外国人学生の総数を報告し、日本版では学年別の人数を報告する。この際、学年という考えを持たない交換留学生が日本版からは漏れてしまう。形式の差がある以上は、数字上の差が出るのは当然のこと。恣意的な判断によるものではない」と反論した。

大学側の主張に対し考える会は「大学が示した計算根拠の表は、いかにして恣意的な水増しを行ったのかを丁寧に説明しているように読める」と批判する。「THEはフルタイム(通常のカリキュラムを受ける学生)ではない学生については、フルタイムの学生と比して数値を減ずることとしている。しかしながら筑波大学は単位の取得が出来ない『研究生』や他大学に所属をする大学院生で筑波大学では研究指導を受けるのみの『特別研究学生』を1人分として計算に入れている。これはTHEの示す基準に則っているとは到底言えない」と指摘する。

算出根拠のうち非正規生について区分別に示した表。1人当たりの割合が1の区分は、フルタイム学生と全く同じに数えていることを表す。18日の筑波大学定例会見の事前資料および、筑波大学発行の「留学生のためのガイドブック(p.15)」から作成

考える会が3月23日に文科相に提出した要望書は、THEのステートメントを受けたもの。要望書では「学長選考会は永田学長を『人格が高潔で、学識が優れ』『国立大学法人筑波大学の卓越性を高めることができる』として再選したが、その決定の正当性は失われているのだから、再選は適当ではない」と述べている。(山口和紀)

FTE換算について たとえば、通常4年で取れる学士を8年かけて長期履修し取得するような場合には、0.5人と換算するべきであるとされる。このように、パートタイム学生の数をフルタイム学生の数に相当するように標準化することを、FTE(Full-Time Equivalents=フルタイム等量)換算と呼ぶ。

➡NEWSつくばが取材活動を継続するためには皆様のご支援が必要です。NEWSつくばの賛助会員になって活動を支援してください。詳しくはこちら

2 コメント

コメントをメールに通知
次のコメントを通知:
guest
最近NEWSつくばのコメント欄が荒れていると指摘を受けます。NEWSつくばはプライバシーポリシーで基準を明示した上で、誹謗中傷によって個人の名誉を侵害したり、営業を妨害したり、差別を助長する投稿を削除して参りました。
今回、削除機能をより強化するため、誹謗中傷等を繰り返した投稿者に対しては、NEWSつくばにコメントを投稿できないようにします。さらにコメント欄が荒れるのを防ぐため、1つの記事に投稿できる回数を1人3回までに制限します。ご協力をお願いします。

NEWSつくばは誹謗中傷等を防ぐためコメント投稿を1記事当たり3回までに制限して参りましたが、2月1日から新たに「認定コメンテーター」制度を創設し、登録者を募集します。認定コメンテーターには氏名と顔写真を表示してコメントしていただき、投稿の回数制限は設けません。希望者は氏名、住所を記載し、顔写真を添付の上、info@newstsukuba.jp宛て登録をお願いします。

2 Comments
フィードバック
すべてのコメントを見る
スポンサー
一誠商事
tlc
sekisho




spot_img
spot_img

最近のコメント

最新記事

主力 長谷川の穴埋められず ロボッツ、長崎に敗退

男子プロバスケットボールBリーグ1部(B1)の茨城ロボッツは21日、水戸市緑町のアダストリアみとアリーナで長崎ヴェルカと対戦し75-91で敗れた。茨城は2026年開幕の最上位リーグ「Bプレミア」への参入を決めたばかりだった。長崎も参入が決まっている。今季の茨城の通算成績は7勝16敗で東地区6位。22日は同会場で再び長崎と対戦する。 2024-25 B1リーグ戦(12月21日、アダストリアみとアリーナ)茨城ロボッツ 75-91 長崎ヴェルカ茨城|20|25|15|15|=75長崎|23|25|13|30|=91 茨城は第3クオーター(Q)までは長崎と互角の戦いをしていたが最後に突き放された。60-61で迎えた第4Q、長崎はマーク・スミスやジャレル・ブランドリー、馬場雄大らが得点力を発揮し前半5分間で16点を挙げ、この間に茨城はわずか2点しか奪えなかった。その後は遠藤善の3点シュートやジェハイヴ・フロイドのバスケットカウントなどで追い上げるがなかなか点差は縮まらず、最後は5ファウルに追い込まれた。 「4Qの頭から相手が守備の強度を上げてきて、自分たちはそのプレッシャーで攻撃のリズムが悪くなり、守備も崩れてしまった」と茨城、中村功平の談。クリス・ホルムヘッドコーチ(HC)は、相手の得点源であり28点を奪われたスミスへの守備を例に挙げ「彼に対しては選手全員が責任を持って守らなければならないと話していたが、マークを受け渡す場面で得点を許してしまった。特に4Qは、全員がそこに集中してプレーすることができていなかった」と評した。長崎が古巣のフロイドは「相手がフィジカルに戦ってくることは分かっていて準備していたが、それを40分続けられなかった。明日は意識を集中して試合に勝ちきりたい」と話した。 茨城はチームの要である長谷川暢がアキレス腱断裂の重傷で前節からチームを離脱しており、代わりを務めるポイントガードが課題だった。この日は今季新加入の駒沢颯が前節に続いてスターターを務め、約20分間コートに立ち、3点シュート5本を含む17得点と4アシストの活躍。「前節の北海道戦ではガード陣の得点が少なかったので、今日はオープニングから積極的にシュートを打っていった。明日も常に前を向いてアタックしていきたい」と意気込んだ。後は駒沢がベンチに下がった時間帯をどうするかだが、平尾充庸はまだ本調子ではなく、久岡幸太郎もこの試合ではミスが多かった。 「長谷川とエリック・ジェイコブセンという主力2人が長期離脱中。いままではこういう場面で選手が下を向きがちだったが、今は不利な場面でも戦うことを止めないチームになってきた。ただ、成長はしているがまだ完璧ではない。全員が共通認識のもと責任を持って戦い、ロボッツがBプレミアの舞台にふさわしいチームであることを証明したい」とクリスHCは先を見据える。(池田充雄)

野山に消えた子たち 「ひきこもり」その5《看取り医者は見た!》32

【コラム・平野国美】今風に言えば「ひきこもり」とか「不登校」と呼ばれるであろう子供たち。通学路から外れ野山に消えていった子供たち(12月6日掲載)。元気であれば齢90前後になる彼らの人生はその後どうなったのか? 就職はできたのか? 社会からドロップアウトした状態で過ごしたのか? 私の患者さんの話は意外でした。「当時、貧しさが理由で学校に通えなかった子が多くいました。そうでなく、勉強が嫌いなのか、みんなと群れるのが苦手なのか、野山に消えて行く子が、私の周りに3名ほどいました。3人とも普通に大人になり、うち2人は社長になりました」 私には「不登校」「ひきこもり」と「社長」に違和感がありましたが、この患者さんの話には驚きました。 「社長と言っても、株式を上場するような一流会社じゃないですよ。家族経営の土木や建築会社を立ち上げ、自分も現場に出て朝から晩まで働き、いつの間にか仲間を増やし、会社の看板を掲げていた。あの2人は頑張ったんだ」 なりふり構わず働く姿は想像できました。しかし疑問も湧きました。「小さい会社でも帳簿付けなどの能力が必要と思うのですが、学校に行かないことで読み書きや計算にハンディがあるのに、独学で何とかしたのでしょうか」 私の患者さんは笑いながら、「いや、2人とも読み書きはできなかったな。親戚の人や妻が事務的なところはやっていた。彼らは肉体的に働いていた。見ていてすがすがしかった」 みんな、呼んでくれてありがとう 患者さんは話を続けます。「70歳のとき同窓会を開いたんです。1人は欠席でしたが、もう1人は黒塗りの運転手付きの高級車でやって来ました。会の中で、1人ずつ近況を報告する時間がありました。彼は決して偉ぶる感じもなく、子供のころの表情で、みんなの前で話そうとするのですが、うまく話せないんですよ。口下手でね」 「やっと出た言葉、『オレ、学校にほとんど行ってないのに、みんな、呼んでくれてありがとう』と言うのが精一杯なんですよ。恥ずかしそうにしているから、そばに行って、お前、頑張ったなって肩をたたいてやったら、泣いて喜んでいた」 私の友人でも、彼らのその後を聞くと、意外な活躍をしている人がいます。バランスよく規格にはめようとすると、外れてしまう子供もいるのです。患者さんから聞いた規格外の人たちの生き方を見ていると、興味深いものがあります。(訪問診療医師)

墳丘の輪郭を探る 土浦 常名天神山古墳から大量の埴輪片

土浦市常名(ひたな)の市指定史跡、常名天神山古墳で21日、発掘調査に当たった筑波大学考古学研究室の滝沢誠教授らによる現地説明会が行われた。壺型埴輪(つぼがたはにわ)の破片とみられる土器(須恵器)が大量に出土、前期古墳としての築造年代をより詳しく検討できることとなった。 前方後円墳の姿変わって再測量から 調査は同研究室と同市上高津貝塚ふるさと歴史の広場の共同で、2023年度から行われた。 墳丘の長さが70メートルから75メートルの前方後円墳。古墳時代前期、4世紀ごろの前方後円墳と見られていたが、後世になって墳丘の上に土砂が堆積し、地元常名神社の神域として手が加えられたりしたため、元来の輪郭が不明確になっていた。 西側「前方」部には宝篋(ほうきょう)印塔が据えられ、市指定工芸品にもなっているが、東側「後円」部の墳丘上に鎮座していた神社本殿は23年5月の火災で焼失した。 23年度の調査は古墳周りにトレンチ(溝)を数本掘っての再測量からスタートした。24年度は新たに6本のトレンチを掘って、地層や土砂の地質から墳丘の輪郭や傾斜を割り出す発掘作業が行われた。 考古学研究室の学生らが実習の一環として取り組んだ。トレンチは幅1メートル、長さが4~6.5メートル。在来の関東ローム層や常総粘土の地層が出てくるまで垂直に掘り進める作業だ。 その結果、地質の違いから、墳丘の大半は元々あった丘を削ってならす「地山削り出し」の手法で築造されたことが明らかになった。 前期古墳に特徴づける壺型埴輪 前方後円墳はお椀を2つ伏せたように並んでいる見た目だが、西の前方部は後世の盛り土で、高さが数メートルせり上がっていることが今回初めて突き止められた。 これらのトレンチからは大量の土器片がみつかった。古墳時代の前期、特に東日本での副葬品を特徴づける壺型埴輪の破片だ。いわゆる人型や馬型の埴輪が出てくるのは古墳時代の後半5世紀以降になってからだそうだ。 今回は「コンテナ3箱分」(滝沢教授)もの土器片が見つかった。前方と後円の中間部、「くびれ」部のトレンチからは長さが40センチほど「底の部分だけ欠けた」ものが見つかったという。 現地説明会には同市内外の古代史、郷土史ファンら68人が集まった。滝沢教授の総括的な解説の後、各トレンチで研究室の学生による説明が聞けた。展示された壺型埴輪片の周囲には人だかりが出来た。 同市上高津貝塚ふるさと歴史の広場の比毛君男副館長は「これで調査は完了。トレンチは埋め戻して報告書にまとめる作業に移る。出土品を展示する機会はぜひ持ちたい」としている。(相澤冬樹)

猪口孝先生の訃報に接して《文京町便り》35

【コラム・原田博夫】11月27日夜、思わぬ火災事故がTVなどで報道されました。猪口邦子・参議院議員の住居が火災に遭われ、その後、ご夫君・猪口孝先生(東京大学名誉教授)とご長女が亡くなられたことが判明しました。私は孝先生とは2011年に初めてお目にかかってから、重要なタイミングで刺激と激励を受けていましたので、残念な気持ちでいっぱいです。今回は、そうした経緯を踏まえたエピソードを3つ紹介します。 一つは、私が研究代表を務めていた専修大学社会関係資本(ソーシャル・キャピタル)研究センター(文部科学省私立大学戦略的研究基盤系施支援事業、2009~13年度)主催のシンポジウム「アジアのソーシャル・キャピタル―実態調査を踏まえて」(2011年12月3日)で、基調講演を引き受けていただきました。 孝先生は当時、新潟県立大学長(2009~17年)で何かとご多忙でしたが、自らアジア・バロメータ調査を精力的に進めていたこともあり、われわれの研究グループをその後発グループ(の一つ)として認めてくださり、その立ち上げを寿(ことほ)ぐ観点からも出向いてくださり、この種のサーベイ調査の課題を指摘してくれました。 二つは、孝先生が創始者・編集長を務めていたAsian Network for Public Opinion Research(世論調査のアジア・ネットワーク)の研究大会が新潟トキメッセで2014年11月29日に開催され、そこに招待されたことです。共同論文の発表後、数名の招待発表者と、孝先生の研究チーム(新潟県立大学以外の関係者も)数名による会食(情報交換の機会)を設定していただきました。 そこで、中堅・若手研究者に強調されていたことは、英語による論文・著作を発表することでした。学問で(それ以外でも)世界で認められるには、現状では英語だ、というのです。それを自らに課している、と繰り返していました。 先生のサービス精神に驚く 三つは、ISQOLS(国際「生活の質」研究学会)の第16回年次大会が香港工科大学で2018年6月14日に開催され、私もそこで共同論文を発表しまとき、孝先生は基調講演者でした。 私は会場の前方で聴講していましたが、孝先生が突然、私の名前を挙げ指さし、日本でもアジアをベースにしたサーベイ調査を進めている研究グループがいる、と言及してくれました。先生の講演後、数名が私に近寄り、情報交換を求めてきました。講演者の影響力は大だな、と実感した次第です。また、孝先生のサービス精神には驚きました。 前回コラム(11月24日掲載)で触れた英書(邦語タイトルは『アジアにおけるソーシャル・ウェルビーイング(社会的安寧)、発展、多様な近代化』)も、孝先生の叱咤激励へのささやかな回答の一つです。国連大学上級副学長(1995~97年)などの公職で多忙な中、若手の先導役も務めた猪口孝先生の御霊に同書をささげたいと思います。(専修大学名教授)