【コラム・吉田礼子】いつの間にか冬に足を踏み入れている。今年の紅葉は美しかった。特に真紅の赤に心奪われ癒された。寒いと赤がきれいだと祖母が話していたのを思い出した。今年はコロナに翻弄(ほんろう)された1年だったように思う。来年こそこの閉塞感から脱したいと願うのみである。
子どものころ、12月の行事と言えば大掃除から始まるお正月に向けての準備。少しずつ整えていく日々が思い出される。12月の半ばごろは不思議と晴れの日が続き、大掃除にも適していた。
障子を貼ったり畳を上げて陽に当てる。母のモンペ姿、手拭いの姉さんかぶりが目に浮かぶ。昭和の風物詩だった。きれいになったところでいよいよおせち作り。献立や段取りを考える。
少しずつ買い出しが始まる。25日過ぎたころから黒豆を煮たりする。故郷の宮城県ではあんこ餅を必ず食べる。大きなシャモジであんを練っていた姿が忘れられない。商家の大みそかは、みそか振る舞いと言って、細やかなご馳走で1年の労を労う。31日は忙しくなるので30日にしていた。
お正月は生ものや四足ものは食べないので、年内のご馳走にはお刺身が付く。それにナメタカレイの煮魚。茶碗蒸しもこの日の付き物。おせちやお雑煮の準備をして年越しそばを食べる。
紅白歌合戦を見たり、年賀状を書いたり、おせちの準備をしたり。除夜の鐘を聞くころには、何とか1年の仕事が終わる。
人気の公民館「おせち料理」講座
今年はコロナの影響もあり家で過ごす時間が増え、お料理や家庭菜園など、家族と一緒にする家庭が増えたという。色々なことに気付くきっかけになったという若い方の感想はうれしい。
お正月は家族そろっておせちを食べるお宅が多いということで、売れ行き好調のニュースも流れていた。今年の公民館講座「おせち料理」には定員の4倍の希望者があり、関心の高さを感じている。
節目=季節の区切りに神様にお供えをし、そのお供えを下げていただく御節供(おせちく)が、おせちの始まりと言われている。
年末年始の家庭行事は各地方や各家庭で千差万別。また時代の流れで変わる。その精神性をよく理解したうえで取捨選択していきたい。先ずは先輩の方々から譲り受けたことを、次の世代の方々に語り部として伝えたい。(料理教室主催)