【コラム・斉藤裕之】その日は水栽培用のヒヤシンスの球根を求めてホームセンターに向かった。特に用もないが木材売り場の辺りをうろついていると、目新しい薪ストーブが目に留まった。1桁違う値段が付いていて量販店では以前には見なかった知る人ぞ知る代物だ。

「これいいんだよね!」と言ってみたものの、色のいい返事は期待していない。ところがカミさん、「煙が少ないのはいいね。中古がネットで出てたりしないの?」と、まんざらでもなさそうな返事だ。しかしオークションサイトではほとんど見かけたことがない。

試しにネットオークションを見てみるとなんと、出品されたばかりの「NEW」のマークとともに、同社製の上位機種の薪(まき)ストーブを発見。これは何かの縁。久しぶりに物欲というかリビドーってヤツか、アドレナリンが沸いてくる。

「こんなん出ました!」とカミさんに見せる。しかし引き取り限定。しかも新潟県。おまけにオークションの経験もないので、ここは一息置いて熟考。交通費や手間を考えると、ホームセンターで新品を買ってもいいのか?

結局タイムリミットを迎えたのだが、翌朝もう一度ネットをのぞくと、入札がなかったらしく「即決価格」に変わっている。起きてきたカミさんを待って相談の上、「ポチリ」。めでたく落札と相成った。

今年の冬はこれで万全!

世の中、「ゴートゥー〇〇」で高価なホテルがお安いだの、ランチがお徳だの、金持ちが多いのか、全く別の世界のように感じてしまうのは、多分私がズレているからだろう。

というか、そもそも何万円もする部屋に泊まって、テーブルいっぱいに並べられた料理を食べることになんの興味もない私は、ひとり「サイトゥーキャンペーン」と称して、この冬を楽しく過ごすために新潟行きを決意。ちなみにカミさんは高速道路が嫌いという理由で自宅待機。

出発は朝5時。カミさんの軽自動車で圏央道から関越道へ。朝日に映える赤城山、榛名山を通過して、紅葉美しい谷川岳は晴天。しかしトンネルを抜けると、そこは雨。越後妻有 (えちごつまり)トリエンナーレの名残を車窓に、現地に着くころはすっかりまた晴れていた。

恐らく、もう1カ月もすれば、雪景色となる日本有数の豪雪地帯。基礎の高さや屋根のつくりから冬の厳しさが想像できる。小旅行気分を味わいながら、グーグル先生に導かれて無事現地に到着後、ストーブをゲット。帰りに魚沼産の新米を買って2時過ぎには帰宅。思いの外疲れなかった。

さて、ここからは百戦錬磨の夫婦の技の見せどころ。培った知恵となけなしの体力で100キロの代物を何とか家に運び入れ、夕方には煙突も着け終えて火入れ式。

「かーちゃん、よく頑張った! これで今年の冬はこれで万全! 今日は回転ずしだ!」。「割引クーポンでもあるの? 都民割? 何割?」。そうさなあ、あえて言えば、このストーブの暖かさは「じんわり 」。それからあるとすれば「薪割り」かな。(画家)