【鈴木宏子】つくば市が公共工事の入札時に導入している「ランダム(無作為)係数」について、今年9月、市監査委員が見直しを求める意見を出した。9月議会に提出した2019年度決算審査意見書の中で言及したものだ。
市内の業者の1人は「なぜランダム係数が導入されたのか、監査委員は、つくば市の入札の実態も経緯も何も分かってない」と憤る。
「神業」が急増
ランダム係数は、入札の最低制限価格がいくらなのかを分からなくする手法だ。つくば市の場合、市があらかじめ設定した仮の最低制限価格に、4%以下の無作為の係数を掛け算して、正式な最低制限価格とし、落札業者を決める。係数は0.05%刻みで4%まで81通りある。それぞれの入札ごとに、開札日当日、入札参加業者がくじ引きをして、係数を何%にするかを決める。
入札の公正性、透明性、競争性を確保しようと18年10月から導入された。2017年9月と18年9月に、それぞれ塚本洋二市議、木村修寿市議らから出された市議会の決議がきっかけになった。
当時つくば市では、最低制限価格とぴったり同じ金額で入札する案件が急増していたことが背景にあった。最低制限価格と同一金額で入札した業者が複数あったことから、くじ引きで落札業者が決まった入札案件は、2014年度は全体の5.4%(44件)だったのに対し、15年度は12.7%(96件)に増え、16年度は前年度の2倍の24%(170件)に急増していた。
最低制限価格と入札価格がぴったり同じになる理由について、市は当時、工事単価が公表されていたり、性能のいい積算ソフトが出回っているためではないかと説明したが、市内の業者は「工事費の中には県が公表していない単価もあり、数千万円の工事を、万の単位でぴったり一致させるのは神業に近い」と反論する。
議会では「万が一にも、最低制限価格が事前に漏れているのではないかと疑われるようなことが起こらないように万全を尽くす、職員を守るという意味もある」(宇野信子市議)との意見も出て、賛成多数で4%のランダム係数導入が決まった。
「8割は公平公正な入札を望んでいる」
導入から2年を経た今年9月、監査委員から出された意見は「(ランダム係数の導入により)初回の入札で落札者が決まらない事案が報告されており、事務量を増やしたり、工期に影響が出ているので、効果的な入札方法について積極的に改善を検討されたい」という内容だ。
市契約検査課によると、2019年度にランダム係数の対象となった公共工事の入札206件のうち、入札価格が最低制限価格を下回るなどして全員失格となり、初回の入札で落札者を決定できなかった案件は19件、うち10件で再度入札を実施し契約締結をしたという。
市内の業者は「つくば市は2012年から一般競争入札が導入されて、指名競争入札のときは予定価格の99%に近かった落札率が平均85%くらいになった。業者の競争によって市民の税金が毎年15~16億円くらい浮いたということ。業者もいろいろだが、8割くらいの業者は公平公正な入札を望んでいると思う」と話す。
ランダム係数を見直すつもりなのか。市は「まだ何も決まってない」とし、コメントを避ける。
(終わり)