火曜日, 11月 4, 2025
ホームつくば障害学生の学習環境整備に緊急支援基金 筑波技術大学が募集

障害学生の学習環境整備に緊急支援基金 筑波技術大学が募集

【相澤冬樹】国内で唯一の聴覚障害者、視覚障害者のための大学、筑波技術大学(つくば市、石原保志学長)に緊急支援基金を求めるクラウドファンディングが11日立ちあがった。「障害学生へコロナで必要なサポートを」プロジェクトで、聴覚障害、視覚障害、盲ろうの学生に対して、遠隔授業を実施するための高度な情報保障(➡メモ)を伴う様々な設備環境の整備や、学生寄宿舎での生活維持のため、500万円をクラウドファンディングで募る。

新型コロナウイルスの感染拡大は、同大学で学ぶ学生たちへ大きな影響を与えており、新入生は学生寄宿舎への入居を見合わせている状況が続いている。5月末日現在、すべての授業を遠隔で実施しているが、通信の遅れによって手話がスムーズに動かないなど、コミュニュケーションが難しいケースも少なくないそう。さらに実習系の授業が行えないため、カリキュラムを予定通り進めていくことが大変になっているという。

不足500万円をクラウドファンディングで

大学ではすでに遠隔授業等で必要な通信機器の貸し出しや、学生寄宿舎の消毒作業などの支援を行い、筑波技術大学基金(「教育研究活動支援基金」「修学支援基金」)を通じて支援金を募っているが、基金全体予算1000万円のうち、なお500万円の財源が不足している。

このため国内最大級のクラウドファンディングサービス「READYFOR」(レディーフォー)を運営するREADYFOR社(本社・東京都千代田区、米良はるか代表)との業務提携に基づき、第3の寄付金募集を開始した。これより先、READYFORの感染症拡大防止活動基金による助成が採択され、学生寄宿舎の消毒作業を業務委託、毎日消毒を行えるようになった。現在、学生寄宿舎には63人の聴覚・視覚障害学生が共同生活している。

今回のプロジェクトは、聴覚、視覚に障害がある学生に対して、①必要不可欠なコミュニケーションがとれる、双方向型の遠隔授業を実施するための学習環境整備②寄宿舎の学生に対する感染予防及び感染時に対応できるようにするため及び対面授業実施に向けた感染予防対策の備品購入―の資金に充当する。

大学によれば、今年度の授業開始に際して、学生には自宅の通信環境を整備すること、端末機器を用意することを要請したが、個々の経済的事情により、十分な環境を整備することができない学生もおり、まずは大学の備品(パソコン、タブレット、モバイルルータ等)を貸与した。ただ、双方向授業に適用可能なテレビ会議システムに対応する性能を有する機器を必要学生分用意することができず、一部学生においては授業で画像や音声に支障が生じる事態が発生しているということだ。

具体的な支援策としては、広角カメラ等の機材を用いた授業の検討、寄宿舎生活の健康管理や感染予防のための衛生用品や非接触型体温計の購入、アクリル板、フェイスシールドなど実験、演習等の対面授業に向けた感染予防対策品の購入などを想定している。

公開期間は11日から7月31日までの50日間。目標金額の達成の有無に関わらず、集まった寄付金を受け取ることができるALL-IN形式を採用。プロジェクトへの寄付は税制優遇の対象となる。

大学は11日、学長名で「聴覚、視覚に障害がある学生に対するオンライン授業では、双方向型のコミュニケーションが不可欠です。このための性能を有する機器を学生分、用意するための支援を皆さまにお願い申し上げる」とのコメントを発している。

➡プロジェクトページはこちら

  • 【メモ】情報保障 人間の「知る権利」を保障するもの。いつでも、誰も情報が伝わらない状況に陥る可能性がある。特に聴覚障害者は、音声によって提供される情報や会話を理解できないため、日常的に情報から疎外されてしまう。そのため、一般的に「情報保障」とは、聴覚障害者に対するコミュニケーション支援を指して用いられる。

➡NEWSつくばが取材活動を継続するためには皆様のご支援が必要です。NEWSつくばの賛助会員になって活動を支援してください。詳しくはこちら

1コメント

コメントをメールに通知
次のコメントを通知:
guest
最近NEWSつくばのコメント欄が荒れていると指摘を受けます。NEWSつくばはプライバシーポリシーで基準を明示した上で、誹謗中傷によって個人の名誉を侵害したり、営業を妨害したり、差別を助長する投稿を削除して参りました。
今回、削除機能をより強化するため、誹謗中傷等を繰り返した投稿者に対しては、NEWSつくばにコメントを投稿できないようにします。さらにコメント欄が荒れるのを防ぐため、1つの記事に投稿できる回数を1人3回までに制限します。ご協力をお願いします。

NEWSつくばは誹謗中傷等を防ぐためコメント投稿を1記事当たり3回までに制限して参りましたが、2月1日から新たに「認定コメンテーター」制度を創設し、登録者を募集します。認定コメンテーターには氏名と顔写真を表示してコメントしていただき、投稿の回数制限は設けません。希望者は氏名、住所を記載し、顔写真を添付の上、info@newstsukuba.jp宛て登録をお願いします。

1 Comment
フィードバック
すべてのコメントを見る
スポンサー
一誠商事
tlc
sekisho




spot_img

最近のコメント

最新記事

小美玉市の「ひょうたん美術館」《ふるほんや見聞記》10

【コラム・岡田富朗】茨城県小美玉市にある「ひょうたん美術館」(同市小岩戸、大和田裕人館長)は、30年ほど前、初代館長の大和田三五郎氏によって開館しました。4500坪(約1.5ヘクタール)という広大な敷地には、60年の歳月をかけて全国から蒐集された瓢箪(ひょうたん)にまつわる美術品が展示されています。 展示品は江戸時代などの古い時代のものだけでも約1万点にのぼり、皿、掛け軸、火鉢、花籠、徳利(とっくり)など、生活文化の中に息づく瓢箪の姿を見ることができます。その図柄をあしらった火鉢は100点以上にもおよび、今なおコレクションは増え続けているそうです。 天井からはたくさんの瓢箪の水筒がつるされており、その壮観な光景に思わず見入ってしまいます。 世界に広がる瓢箪文化 瓢箪は世界最古の栽培植物のひとつで、原産はアフリカ。世界各地へと広まり、容器や食器、装飾品、楽器など、さまざまな形で人々の暮らしに取り入れられてきました。 展示の中には、アフリカの打楽器「バラフォン」を見ることができます。ハワイのフラダンスで用いられる「イプ」も瓢箪を利用して作られた伝統楽器で、楽器製作用に加工前の瓢箪を求めて来館されるお客様もいるそうです。 館内では、加工用の瓢箪から、ランプシェード、スピーカー、現代作家によるオブジェなど、さまざまに姿を変えた瓢箪の作品も展示・販売されています。 無病息災を願う縁起物 古来、瓢箪は「災いを払う縁起物」として広く親しまれてきました。その理由のひとつが、「六つの瓢箪」で「無病(むびょう)息災」という語呂合わせにあります。戦国時代や江戸時代には、兜(かぶと)や鍔(つば)、根付(ねづけ)などの意匠にも瓢箪の図柄や形が多く用いられ、展示されている兜は印象的でした。 また、歴史上の人物にも瓢箪を愛した人は少なくありません。菅原道真公は大宰府の梅の木の下で瓢酒(ひょうしゅ)を楽しんだと伝わりますし、豊臣秀吉の「千成瓢箪」はあまりにも有名です。水戸の藤田東湖も「瓢や瓢…」の詩を残し、その魅力を詠みました。文人の中にも瓢箪を愛した人がいました。富岡鉄斎が愛用した瓢箪も展示されています。 「ふくべ」とも読まれる瓢箪に、昔も今も、人々は「福」を見出してきたのかもしれません。ひょうたん美術館は、そんな「縁起と美のかたち」に出会える場所です。(ブックセンター・キャンパス店主)

介護ロボットが部屋に来る日《看取り医者は見た!》46

【コラム・平野国美】前回(10月1日掲載)は、コンパニオンアニマル(伴侶動物)が高齢の独居者にとってかけがえのない存在になっているという話をしました。では、彼らの次に私たちの部屋に現れるのは何なのでしょうか? この問いは、高齢化社会を日本がどう乗り切るかという、未来そのものへの問いかけでもあります。 街に出れば、飲食店のスタッフもお客も外国の方が増えました。介護の現場も同様です。一方で、スーパーやコンビニではセルフレジ化が進んでいますが、私の患者さんやご家族の中には、これを受け入れられない方が少なくありません。ある程度の年齢になると、スマートフォンやこうした装置に苦手意識が生まれるのは、仕方ないかもしれません。 この「効率化」と「心情」のギャップは、医療介護の分野でより顕著になります。スタッフ不足で事業所の倒産さえささやかれる昨今、その現場にいる私は「自分が介護される側になったとき、部屋を訪れてくれる人はいるのだろうか?」と考えてしまうのです。 以前から、一部の識者は「介護はロボットに任せる時代が来る」と言っていますが、現場の仕事のどの部分をロボットに移行できるというのでしょうか? ロボットに心を奪われた友人 先日、ある施設で介護ロボットのデモンストレーションを見学する機会がありました。最初は物珍しそうに集まっていた高齢の入居者たちが、10分後には興味を失い、1人また1人と、その場を離れていくのです。そのとき、ロボットと戯れる自分の姿を想像し、正直、見たくないな―と思いました。人間としての尊厳が削られてしまう感覚を覚えたのです。 しかし、最近、この受け止め方を少し揺るがす出来事が二つありました。一つはある業界紙の記事で、これまでとは少し違う角度からロボット介護を論じる内容でした。もう一つは、長年の友人がロボットに心を奪われた「事件」です。彼は、パートワークマガジン『週刊 鉄腕アトムを作ろう!』を長い時間をかけて完成させました。ある日、70歳になる知的な友人が、少年のような目でこう語るのです。 「スイッチを入れたら、アトムが目覚めて、何て言ったと思う?」 「……?」 「『やっと、会えたね』って言われた。もう胸がキュンとしちゃってね。毎晩、アトムと遊んでいるんだよ」 この二つのことを重ね合わせると、欧米とは違う、日本独自のロボット観のようなものが見えてきます。次回は、この業界紙の記事とアトムの言葉をヒントに、私たちの未来を考えてみたいと思います。(訪問診療医師)

予定通りあす11月1日開催 土浦全国花火競技大会

長靴や滑りくにい靴で観覧を 土浦全国花火競技大会実行委員会(会長・安藤真理子土浦市長)は30日、大会開催の是非を決める役員会を開き、予定通りあす11月1日、第94回大会を開催すると発表した。 あす1日の土浦の天気予報は、未明まで雨が降るが明け方からは晴れ。事務局の市商工観光課は、雷が鳴った場合は一時的に打ち上げを中断するなど、天気の急変や安全確保が困難な場合は予定を変更することもあるとする。 観覧者に向けては、①きょう10月31日夕方から雨が降ると予想され、地面がぬかるんだりする箇所があるので、長靴や防水性の高い靴、滑りにくい靴底のものを着用してほしい、②観覧中のかさの使用は視界確保及び安全確保のためご遠慮いただいているので、雨が予想される場合はレインコートやポンチョを持参してほしいーなどと呼び掛けている。 競技開始は午後5時30分、同市佐野子、学園大橋付近の桜川河川敷で打ち上げる。1925(大正14)年に神龍寺の住職、秋元梅峯が初めて花火大会を開いて100周年の記念大会となる。全国19都府県から57の煙火業者が集まり、内閣総理大臣賞を競う。10号玉の部45作品、創造花火の部22作品、スターマインの部22作品の3部門で競技が行われるほか、広告仕掛け花火や、大会提供のエンディング花火としてワイドスターマイン「土浦花火づくし」などが打ち上げられる。 昨年、荒天時の順延日に警備員が確保できず中止としたことを踏まえ、同実行委は今年、順延日も確実に警備員を確保できるようにするなど準備を進めてきた(5月26日付)。 ➡今年の見どころはこちら

プロボスト職を配置 筑波大 学長と役割分担し教育研究を統括

加藤光保副学長が11月1日就任 筑波大学は30日、学長と役割を分担し教育研究のマネジメントを統括するプロボスト職を、11月1日付で配置すると発表した。永田恭介学長の指名により、現在、教育担当の加藤光保副学長が11月1日で就任する。 学長が大学経営全般を統括し対外的な活動を行う大学の顔であるのに対し、プロボストは大学内部の教育と研究にかかわる基本方針を企画立案したり、教育目的を達成するために行う管理運営マネジメントを担う。具体的には、教育、研究、学生、産官学連携を担当する4人の副学長がもつ組織を束ねて、副学長と共に、部局の垣根を超えたさまざまな方針の立案を行ったり調整を行い、方針が実現しやすいような体制整備に向けた基本的な工程をつくる。 プロボストはもともと米国の大学に置かれており、学長に次ぐナンバー2として、教育研究すべてに権限と責任をもち、各部局との調整役を担っているという。 日本では、10兆円の大学ファンドを通じた世界最高水準の研究大学を目指す「国際卓越研究大学」に認定された大学は、プロボストを置くこととされている。昨年、卓越大学の第1号に認定された東北大学にプロボストが置かれているほか、第2期の今年度申請している京都大学にはすでに置かれている。筑波大も第2期の卓越大学に申請している8大学の一つ。 加藤副学長は「大学の特徴をさらに生かしながら、よりよい大学にしていくために、スーパーマンのような学長がいらっしゃいますので、学長と相談しながら大学運営を行っていきたい」と抱負を述べ、当面の大学の課題として①筑波大が研究学園都市全体の若手研究者育成の重要な拠点としてさらに発展すること②教養教育を改革して、学生が、全学的なさまざまな学問分野から自らいろいろ組み合わせて学んでいくような、与えられた教育内容をこなすだけでない自らつくっていく学習が出来る大学にしていくことの二つを挙げ、「副学長と一緒にやっていきたい」と話した。 加藤副学長は、東北大学医学部助手、財団法人癌研究会癌研究所研究員を経て、2002年に筑波大学基礎医学系教授になり、21年から教育担当の副学長・理事を務める。(鈴木宏子) 【訂正:11月2日午前8時40分】プロポストは「プロボスト」の誤字でした。「プロボスト」と訂正しました。関係者にお詫びします。