《婚姻件数、戦後最低ーいばらきの結婚事情》㊥ 農業後継者、悩み多き婚活

おしゃれな客船で横浜港のクルージングを満喫するつくば市農業委員会のカップリングパーティー

農業後継者の結婚難が続いている。つくば市は1995年から、市農業委員会=メモ=担い手対策専門委員会と委員会事務局の市農業行政課が、男性後継者のための結婚支援事業を行っている。

市農業委員会のデータによれば、市の総農家数は4779戸(2016年4月1日現在)。このうち結婚を望んでいる農業後継者がどのくらいいるかは、調査を実施していないため分からないという。

体験型は参加者少なく

2006年から取り組んだのは農業体験型の交流会。農業に関心のある女性向けにと、作付けや野菜の収穫などを中心に企画したが、男女いずれも参加者は少なかった。

5年前に、若者に人気の観光スポットを巡って交流する横浜中華街ランチ&ベイクルーズ「カップリングパーティー」に切り替えた。例年農閑期に入る10月に開催されている。定員は男女各15人で参加費は男女共1000円。安い参加費で異国情緒漂う横浜のスポットを楽しめるとあって、参加者の反応は良いという。

10月22日朝、市役所前でバスに乗車したのは男性16人と女性13人、そして市農業行政課の職員2人。横浜元町まで片道約1時間半の行程で、男性が車内で席を移動して交流する。中華街での昼食やクルーズ客船内でも異性同士が会話できるよう配慮されている。

今年は7組のカップルが成立した。「カップルにならなかった人も含めてLINE(ライン)のグループでさらに交流を深め、結婚に結びつけてほしい」と同課の飯泉亮成さんは話す。

来年は身だしなみ指導

これまでの支援で成婚したのは4組。十分な成果は得られず、今後の活動について農業委員会で話し合いが持たれた。ある委員が「内気な息子が農委のパーティーに参加した経験を生かして、他の婚活パーティーで知り合った娘さんと結婚した。事業は後継者への啓蒙活動になっている」と発言。この発言をきっかけに横浜でのカップリングパーティーは継続が決まった。

来年は新しい試みとして、パーティーに参加する後継者に身だしなみなどを指導する場を設ける。担い手対策専門委員の大曾根京子さんの発案だ。「彼らは若い未婚女性と出会うチャンスが少なく、収穫期は天候が良ければ連日作業で休みは取りにくい。その辺りを理解してくれる人と出会う場であってほしい」と話してくれた。

同専門委員会の冨田寛一委員長(75)と高野武久副委員長(74)に話を聞いた。2人は「今は元気な高齢農業者が耕作しているが、これからは次世代の就農が不可欠だ。後継者の結婚が決まれば周りも大喜びで市長に結婚式に出席してほしいほどだ」と口をそろえた。担い手不足は喫緊の課題で、同時に農業後継者の成婚への悩みの大きさを感じさせた。(橋立多美)(つづく)

※メモ

【農業委員会】市町村に置かれ農地に関する事務を行う行政委員会。農地転用の許可や無断転用の監視、農業の担い手の確保・育成などが主な活動。つくば市では、3年に1度の農業者の選挙で選ばれる21人と農業関係団体や議会からの推薦で選ばれる8人で構成されている。委員は特別職の地方公務員。

中華街でランチを楽しみながら交流

「農業は自然を相手に自給自足が基本の営み」と話す担い手対策専門委の高野武久さん=つくば市刈間