【大山茂】みそ汁で豆腐と相性バツグンの具材、ナメコに魅せられて、親子2代にわたり栽培を続けている人がつくば市にいる。同市中別府の鈴木きのこ園代表、鈴木繁男さん(41)。気が付けば県内最大規模の生産者になっていた。

ファームは市西部、東光台団地から上郷方面を結ぶアグリロード沿いにある。ファームにお邪魔すると、頑丈な鉄骨組みの建物が目に飛び込む。内部には空調が管理された培養室や作業室がそろう。原木栽培ではなく、菌床を使った施設空調型の栽培ハウスだ。
きのこ園では広葉樹のおがくずを菌床として瓶に詰めて、高温、高圧殺菌する。瓶に詰めたり、殺菌するなどの工程は専用の機械が行う。殺菌後に種菌(たねきん)を植え込み、培養室で一定の温度と湿度を保ちながら管理すると、2カ月で収穫できる。
同園に種菌を納入する宮城県の業者によると、自然林のナメコ菌を育種したもので、ぬめりが強く傘が大きいのが特徴という。
培養室には菌床が詰め込まれた800ccのプラスチックボトルが棚に無数に並べられ、口元からナメコがぎっしりと顔を出している。別室では4、5人のパート従業員たちが、はさみを手に大きく育ったナメコを器用な手つきで切り落としている。処理する数は1日に平均4500個。四季を通じて収穫している。切り落とされたナメコはその場でふるいにかけられ、サイズ別に袋詰めされていく。
出荷先は全国で宅配を展開する生活協同組合パルシステム。出荷量の約8割を占めており、残りを地元の野菜直売所やスーパーの産直コーナーで販売している。パスシステムの話ではナメコはJAつくば市谷田部の倉庫を経由して新治と岩槻(埼玉)、相模原(神奈川)の物流センターに運ばれ、関東一円に宅配されるという。
冬の副業、気付いたら1人
県林政課のデータによれば2018年度のナメコ生産量は163トン。県内には栽培農家が20戸あるが、ほとんどが県北地域で、県南地域は鈴木きのこ園だけ。しかもその県内生産量の9割を占めている。
そもそも、ナメコ栽培は父親の栄さん(66)が40年前に農家の冬期の副業として知人ら数人と始めた。しかし発泡スチロールにオガクズを敷いただけの栽培方法では病気に侵されたり、大きく育たないなど困難に直面。気付いたら栄さん1人になっていた。
パルシステムから契約栽培の話が持ち込まれたのは20年前。設備投資が高額だったことから悩んだが、当時20歳の繁男さんが「一緒にやろう」と背中を押してくれたことで一歩を踏み出した。繁男さんはJA産直部会のエコファーマー認定取得者。「安全でおいしいなめこを今後も食卓に届けていきたい」と話している。