【コラム・古家晴美】シラウオは生きた状態で食べる「踊り食い」で有名ですが、「シラウオのような指」と、色白の細くすらりとしたなめらかな女性の指を評す場合にも引き合いに出されます。今回はそのシラウオについてです。
全長10センチほどで体が半透明のサケ目シラウオ科の魚です。シロウオと混同されますが、後者はスズキ目ハゼ科の魚で別種のものです。
現在、霞ケ浦のワカサギのつくだ煮は、県南地域の大型スーパーの店頭に並び、日常食以外に霞ケ浦の手土産として購入される方も多いと思います。ワカサギと共に、シラウオは霞ケ浦で漁獲されてきました。霞ケ浦周辺のつくだ煮専門店では、今でもシラウオの煮干しやつくだ煮が販売されています。
江戸時代には、すでに大型の大徳網(だいとくあみ)でワカサギと共にシラウオも漁獲しています。また、明治時代に折本良平(おりもと・りょうへい)が考案した帆引き船は、最初はシラウオ漁用のものだったのが、後にワカサギ漁用に改良されました。
また、煮干しに加工する以外に、タタミイワシのようにシート状に乾燥させたものが、シラウオの需要が大きい清国に向けて輸出されたという記録があります。
その後、霞ケ浦・北浦での漁獲量は、昭和30年代まではワカサギが最も多く、それにシラウオ、エビが続きました。しかし、昭和40年代にトロール(曳き網)漁業が登場すると、ワカサギ・シラウオは減少し、昭和53(1978)年をピークとして霞ケ浦・北浦の総漁獲量も激減し始めました。
茨城の漁獲量は県別2位
このような状況の中で、平成29(2017)年の茨城県のシラウオの漁獲量は、青森県に次ぎ全国2位で、そのほとんどが霞ケ浦・北浦産です。
3月に入ると、シラウオ漁が全面禁止になります。平成20年代に入り、漁業者の自主的な資源管理が行われるようになったからです。ワカサギ・シラウオのトロール操業は1月1日から7月20日までが禁漁期間、シラウオの刺し網(定置網)は3月の1カ月間と5月16日から10月31日が禁漁期間となっています。
このような漁獲規制が敷かれる以前のシラウオ漁は夏に最盛期を迎え、家庭でも釜揚げや煮干しにして醤油をかけ食べたり、切り干し大根と共に煮つけたものが食卓に上ることもありました。
しかし、白魚1升と米1升が同じ価格とされた高級品で、来客時には、米1升に醤油1合のご飯を炊き、釜揚げ白魚を2~3合混ぜた白魚ごはんを作って出したそうです。また、3月の初節句にはシラウオの卵とじ・お吸いものも出ました。やはり、ごちそうだったんですね。(筑波学院大学教授)
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