土曜日, 12月 27, 2025
ホームつくば【成人式'20】つくばは今年も厳戒態勢 土浦は会場変更に拍手

【成人式’20】つくばは今年も厳戒態勢 土浦は会場変更に拍手

【崎山勝功】つくば・土浦両市で12日、成人式が執り行われた。両市とも式典は約40分と短く、会場内外には警察官などが多数配置された。つくば市は今年も厳戒態勢を敷いた。新成人の声を受け会場を市内8カ所開催から1カ所開催に改めた土浦市は出席率が上がった。つくば中央署と土浦署によると、今年は両市とも逮捕者は出なかった。

つくば 厳重警備に苦言も

つくば市の式典は、五十嵐立青市長の新成人向けスピーチと、筑波大学サークル「斬桐舞(きりきりまい)」のよさこいソーラン演舞などを含めて約40分で終了した。会場のつくばカピオ(同市竹園)周辺では、制服・私服警察官をはじめ、市消防団員や民間警備員も多数動員して警戒に当たった。

2017年の式典で壇上に上がろうとした新成人が逮捕された同市では、18年から手荷物検査をはじめ警察官を大量動員した厳戒態勢を敷いた。19年からは会場前の道路を封鎖して車両侵入を防ぐなど警備体制を強化した。

今年は暴走族対策としてビデオカメラを導入したり、「新成人が式典終了後に会場前で滞留して混雑するのを防止するため」(市職員)として、式典終了後に出口付近をロープで規制して会場隣の大清水公園まで誘導する措置を取った。

式典終了後、警備員たちに規制ロープを張られた中で会場を出る新成人たち=同

捜査関係者の一人は「なあなあにはしない」と厳しい姿勢を見せた。私服警察官たちは「茨城県警」「捜査」などの腕章を付け、折り畳み式警棒など装備品を見えるようにして「見せる警備」を実施し、「騒ぎを起こさせない」抑止効果を狙った。

大学で歴史を学ぶ新成人の松崎未有さん(20)=大学2年=は、会場での厳戒態勢ぶりに「ツイッターで(つくば市の)成人式を見ていると『本当なのかな』と思ったけど、実際に会場に来たら警察の人がたくさんいてビックリした」と話した。

手荷物検査を受けた新成人の女性(20)=大学2年=は、コンサート会場での手荷物検査が一般化していることを挙げ「何とも思っていない」と答えた。

一方、会場付近に居合わせた60代女性は「成田空港より(警備が)厳しい。警備が物々しすぎる」と苦言を呈した。近隣住民の一人は「もっとソフトな警備ができないのか。余計に(新成人の)反感を買ってしまう」と不安げな表情を見せた。「たった40分のためにこの警備か」とあきれる声もあった。

会場周辺の道路では、新成人の名前入りののぼり旗を掲げた乗用車が4台程度走行したが、大きな混乱は無かった。

五十嵐市長は式典終了後の取材に対し「基本的には新成人の実行委員会が話し合いをしながらやっている」と述べ「分散(開催)のメリットもあるけど、デメリットもある。新成人が考えて『今年も合同(開催)でやる』と選んでいるので我々としては当然バックアップをしていく」と答えた。市民から成人式の内容見直しなどの意見が出た場合には「彼らが大人になる節目なので、いろんな意見を聞きながら考えていくことはいいことだと思うので、私が『こうするべきだ』と言うつもりは一切ない」として、新成人たちの判断を尊重する考えを示した。

土浦 「みんなが市役所動かした」

「今日は一堂に会して成人式を迎えられて良かったですね」。昨年11月に土浦市長に就任した安藤真理子市長は、あいさつ冒頭で約1000人の新成人たちを前に、成人式会場が霞ケ浦文化体育会館(同市大岩田)1カ所に変更されたことに触れた。会場の新成人からは拍手が起きた。

土浦市の会場に集まった新成人たち=同市大岩田の霞ケ浦文化体育会館

安藤市長は、市長就任当日に成人式実行委員会の新成人たちから面会を求められた件に触れ、2日後に集まった実行委メンバーの新成人全員から「(全員が)一緒にやりたい。でも市民会館は工事中。何とかできないか」との要望が寄せられたことを明かし「みんなが市役所を動かしました。これはすごいことです。皆さんが市役所に電話して『市長に会いたい』。これは中々言えません。皆さんの勇気に『うれしい』という思いを伝えたい」と述べた。

あいさつ途中で、同市出身の女優で新成人の宮崎さやさん(20)が登壇し、楽曲「未来へ」を熱唱した。宮崎さんは取材に対し「12月後半に、(安藤)市長が伝えたい言葉が『未来へ』に詰まっているというのをお聞きしたので、1人の女優として(安藤市長の)思いを伝えられたらいいなと思い頑張った」と語った。

会場入り口では、隣のつくば市と異なり手荷物検査や鉄柵による規制は行われず、警察官や市職員たちが警戒に当たったものの大きな混乱はなく、式典は約40分で閉幕した。「大学で観光の勉強をしている」という新成人の草野孔明さん(20)=大学2年=は「中学校単位での開催だと過去の友だちに会えなくなるので、ここ(霞ケ浦文化体育会館)で一堂に会えてよかった」と喜びの表情を見せた。昨年に男児(4カ月)を出産した、新成人の三井優奈さん(20)=主婦=は「あっという間だった。これから子育てを頑張りたい」と抱負を述べた。夫の三井伸之さん(24)=運送会社勤務=は「責任感が増えて、何事も頑張らなければと思う」と、父親になった重みをかみしめていた。

会場周辺では、不測の事態に備えて土浦警察署員らが、暴走車両の侵入を阻止するために交差点などで警戒に当たった。昨年の会場の市民会館前では暴走行為や、会館前の広場に一斗樽などの酒類を持ち込んだ例があったが、今年は式典開始前の正午過ぎに雨が降ったこともあり、体育館前広場に酒類を持ち込んで騒ぐ行為はほとんど無かったという。

式典終了後、安藤市長は取材に対し、元々は別の団体が使う予定が入っていたのを譲ってもらったことを明かした上で「みんなが『ここ(霞ケ浦文化体育会館)でやりたい』と思ったので、トラブルもなく出席率も良かったと思う」と述べた。その上で「子どもたちが望んだ成人式なので、子どもたち同士で『いい成人式にしようよ』となったのではないか」と、会場内外での迷惑行為が昨年より沈静化した理由を解説した。

捜査関係者の一人は、県警が昨年の稲敷市での成人式後に集団暴走行為をした新成人ら34人を水戸地検に送検(3人は逮捕後に送検、31人は書類送検)した件に触れ「今年の成人式前に(送検の)新聞報道が出たことも抑止につながったのではないか」と話した。

➡成人式の過去記事はこちら

➡NEWSつくばが取材活動を継続するためには皆様のご支援が必要です。NEWSつくばの賛助会員になって活動を支援してください。詳しくはこちら

スポンサー
一誠商事
tlc
sekisho




spot_img

最近のコメント

最新記事

里山収穫祭 大人も子供もダンス《宍塚の里山》131

【コラム・古川結子】11月23日、土浦市の宍塚の里山で行われた「秋の収穫祭」で、ダンス企画が行われました。私は、法政大学公認の環境系ボランティアサークル「キャンパス・エコロジー・フォーラム」(略称 キャンエコ)の活動として、収穫祭の運営補助をする中で、サークルのオリジナル曲に合わせて踊る機会をいただきました。 「宍塚の里山」はキャンエコのメーン活動の一つであり、普段は毎月第4日曜日に宍塚を訪れ、環境保全活動を行っています。 このダンス企画が始まったのは、昨年4月に行われた「春の収穫祭」からです。バレエやダンスに親しんできた私に対し、里山でキャンエコの活動をサポートしている「宍塚の自然と歴史の会」の齋藤桂子さんが提案してくださったことがきっかけでした。そこから、収穫祭では、はやりの曲に合わせて地域の子供も大人も一緒になって踊ってきました。 そして今回、秋の収穫祭に向けた準備の中で、齋藤さんから「ぜひキャンエコでオリジナルのダンスを作ってほしい」と言っていただきました。卒業を控えた自分にとって、この言葉はとても大きく、思い切ってオリジナル曲の制作と振り付けに挑戦することにしました。 歌詞は、サークルの仲間と協力して書き上げ、AIを使って曲を完成させました。振り付けは子供から大人まで踊れるように意識しました。 里山で生まれた一体感 「踊る」という行為は、慣れない人には少し恥ずかしく感じるかもしれません。それでも、音楽に合わせて身体を動かす楽しさを、少しでも感じてもらえたらという思いがありました。 当日、最初は遠慮がちに周りで見ていた大人の皆さんも、学生や子どもたちにつられるように輪に入り、楽しそうに踊っている様子を見て、とてもうれしかったです。踊り終わったころには、初めて会う人同士でも距離が縮まっているのが、ダンスのすごいところであると感じました。 宍塚の里山は、多くの人の手によって守られています。今回の収穫祭でのダンスが、里山の存在やキャンエコの活動を知るきっかけになっていたら幸いです。みんなで踊った様子は動画として記録し、YouTubeにも公開しています。これをご覧になり、里山で生まれた一体感を、多くの方に感じていただけたらと思います。(法政大学キャンパス・エコロジー・フォーラム 4年) https://youtu.be/lr5EXHD-NLc?si=29c9cISMDT8rN0Tq

個人情報記載の住宅地図を誤配布 つくば市

つくば市は26日、同市谷田部、陣場ふれあい公園周辺の352世帯に、公園近隣の86世帯の名字など個人情報が入った住宅地図を誤って配布してしまったと発表した。うち2世帯は名字と名前が入っていた。 市公園・施設課によると、同公園でのボール遊びについて注意喚起する文書を、公園の位置を示す拡大した住宅地図を付けて周辺世帯に配布した際、本来、地図の個人情報を削除すべきところ、削除せず配布した。 23日午前10時~正午ごろ、市職員が公園周辺の352世帯に配布、2日後の25日、通知文書を受け取った市民から市に、住宅地図に個人情報が記載されている旨の電話があった。 市は26日、地図に個人情報が掲載された公園近隣の86世帯に対し謝罪の文書を配布。さらに周辺の352世帯に対し、23日配布した住宅地図の破棄を依頼する文書を配布したほか、個人情報を削除した住宅地図を改めて配布した。 再発防止策として同課は、個人情報の取り扱いや外部への情報提供の方法について見直しを行い、再発防止に努めますとしている。

大の里の姿を精巧に表現 雲竜型土俵入りなど人形2体を贈呈

横綱昇進祝し 関彰商事 第75代横綱に昇進した大の里を祝し、記念人形の贈呈式が25日、阿見町荒川本郷の二所ノ関部屋で行われ、関彰商事(本社 筑西市・つくば市)の関正樹社長が特別に制作された記念人形2体を大の里に贈った。 人形は、雲竜型の土俵入りをする戦う表情の大の里と、横綱に昇進し着物姿で喜ぶ表情の2体。土俵入りの人形は、高さ36センチ、幅40センチ、奥行き20センチ、着物姿は高さと幅が46センチ、奥行き32センチの大きさで、いずれも大の里の力強く気品あふれる姿を精巧に表現している。 桐の粉で作った胴体に溝を彫り、布の端をきめ込む「江戸木目込人形」の技法を用いて、さいたま市岩槻区の老舗人形店「東玉」の人形師で伝統工芸士の石川佳正さんが製作した。石川さんは「大変名誉な仕事を預かり光栄。制作には、他の仕事をキャンセルして1カ月かかった。陰影を出すように、肌の色などはつるっとしないように工夫した。はかまは京都の西陣織を採用した」などと説明した。 大の里は「素晴らしい作品が出来上がった。大変光栄なことで、感謝とともに、これを励みにさらに精進していきたい」と語った。 関彰商事は、牛久市出身の二所ノ関親方(当時は稀勢の里)が十両だった2004年から、関正夫会長が「稀勢の里郷土後援会」の会長を務めたなど、長年にわたり二所ノ関親方を支援。親方になってからも二所ノ関部屋を支援している。今回の贈呈も、これまでの継続的な後援活動の一環として行われた。 関社長は人形師の石川さんに感謝し、大の里には今後の活躍にエールを送った。(榎田智司)

30年度1学級増、33年度2学級減 つくばエリアの県立高 県高校審議会答申資料で推計値

2027年度以降の県立高校教育改革の方向性を検討する県高校審議会(委員長・笹島律夫常陽銀行会長)が25日、県庁で開かれ、答申をまとめた。 人口が増加している「つくばエリア」(つくば市など4市)の今後の募集学級数と募集定員について、答申の参考資料の中で推計値が示された。同エリアの全日制県立高の2025年度の入学者数は2203人なのに対し、30年度は31人増え2234人となる一方、33年度の入学者数は63人減り(25年度比は32人減)2171人になるとして、25年度の同エリアの学級数が58学級(募集定員2320人)なのに対し、30年度は1学級(40人)増えて59学級(2360人)、33年度は2学級減り(25年度比は1学級減)57学級(2280人)になるとする見通しが示された。 推計値について県高校教育改革推進室は「入学者数や募集学級数はあくまで現時点の推計値であり、(実際には)県教育委員会が志願の状況や欠員の状況などを踏まえて策定する」としている。 市民団体「実態に合わない」 一方、つくば市やTX沿線に県立高校の学級増や新設を要望してきた市民団体「つくば市の小中学生の高校進学を考える会」の片岡英明代表は「つくばエリアの子供たちが増えていることが反映されていない。県の推計値は入学率をもとに入学者数を推計している。もともと県立高校が少ないつくば市は、市内の県立高校に入学する生徒が少なく実態に合わない」と話している。 片岡代表は2033年度のつくばエリアの中学卒業見込者数が25年度の4393人より226人増えて4619人になり、日立エリア(日立市など3市)と水戸エリア(水戸市など4市)を合わせた4425人を上回ると推計され、さらに38年度にはつくば市1市だけで中学卒業見込者が3392人と見込まれ、日立エリアと水戸エリアを合わせた3429人に匹敵する推計値が出されていることから、「つくばエリアは県立高校の緊急な定員拡大と本格的な対応が必要」だなどと指摘している(12月21日付)。 人口増 答申で具体的言及なし つくばエリアで子供の数が増えている問題については、答申に具体的言及は無く、県全体の県立高校の適正規模について「今後、地域ごとの中学卒業者数の差はますます鮮明になっていくと予想されるため、引き続き、県内全ての地域に一律で適用する適正規模の基準は設けないことが望ましい」などとするにとどまった。 ただし同審議会の専門部会(部会長・中村麻子茨城大副学長)では、つくばエリアについて「教育を目当てに移住する人もいるので、学級数の増を考えてもいいのではないか」とする意見が出た一方、「今、人口が増えているつくば市もいずれ減っていくので、新校設置はあまり現実的ではない」「最終的に生徒が減っていく中、学級数の増をすると、近隣の学校に様々な影響が出る。学級数増については慎重に検討していく必要がある」などの意見が出たことが紹介された。 答申もとに基本プラン策定へ 25日まとまった答申は、来年1月下旬に県教育委員会の柳橋常喜委員長に手渡される。答申を踏まえ来年度の早い時期に、県の全体計画である「県立高校改革プラン基本プラン」が策定され、パブリックコメントなどが実施される予定。 答申の主な内容は、県内の中学卒業者数は1989年の4万9441人をピークに年々減少し、2025年には2万5192人となり、35年には約1万9500人まで減少すると予測されているなどから、中学校卒業者数の変動に対する対応として、生徒数が減少傾向にあるエリアでは、高校規模の縮小が一層進むと予想されるためICTを活用した同時双方型の遠隔授業を推進していくことが求められる。規模が縮小した学校の活力向上を図るため学校連携型キャンパス制のような高校同士が連携する学びの仕組みを一層推進することが重要―などとしている。 学級編成については、小中学校の1学級40人学級から35人学級への引き下げを受けて、特に生徒数の減少が大きいエリアでは、高校の特色の一つとして少人数学級編成を行うことも考えられる。農業、工業、商業学科など学科の在り方については、各エリアの生徒数によっては、複数の学科を総合学科に改編することも考えられるーなど、県全体の生徒数減少に対する対応について方向性を示している。 ほかに、今回の答申では新たに「選ばれる県立高校であるための魅力訴求」についての項目が設けられ、情報化社会の広報について、学校説明会への参加意欲を促すため、学校・学科の魅力や生徒の日常の様子、様々な取り組みなどをウェブサイトを活用して日頃から情報発信することが望ましい。AIなど先端技術については、さまざまなリスクが含まれることも想定され、これまで以上に倫理観や情報リテラシーの育成が求められるーなどが盛り込まれた。 参考資料で示された県全体の今後の募集学級数と定員の推計値は、25年度の全日制県立高の入学者数が1万6098人なのに対し、30年度は1111人減って1万4987人となり、33年度はさらに1438人減って(25年度比は2549減)1万3549人になることが推計されることから、募集学級数は25年度が442学級(募集定員は1万7630人)なのに対し、30年度は30学級減り412学級(1万6430人)、33年度はさらに40学級減り(25年比70学級減)、372学級(1万4830人)となる推計値が示された。(鈴木宏子)