堀越智也さん

最近、某芸能人がポケベルという言葉を使うものだから、ポケベル以降の電子端末の移り変わりを年表のように、だけど、そこはかとなく振り返ってみた。

パソコンOSのWindows95が発売された1995年と言えば、野茂英雄投手がメジャーに渡り活躍した年。秋葉原のキヨスクには「野茂〇勝目」というタブロイド紙の見出しが現れ、日本人の通行人を勇気づけた。キヨスクのすぐ隣には、総武線のホームであるにもかかわらず、Windows95を買おうと行列ができていた。

それが世の中を大きく変える出来事だとは、大学1年の自分には全く分からなかった。その3年後にまだワープロを使っていたのだから。そんな自分も、ポケベルや携帯電話は友人よりも早く使い始めた。別に自慢できることではない。自分だけ茨城という遠方に住んでおり、携帯端末を使って友人との距離を埋めたかったからだ。

初めて買ったJ-phoneの携帯電話は、今の携帯電話に比べてずっと重い上に、通話機能しかなかった。しかないと言っても、電話なのだから通話機能しかないのが当たり前。何度か機種交換をしているうちにメールも送れるようになり、なんて便利な機能かと驚いた。

ほぼ同時期に、パソコンのダイヤルアップ接続が過去のものとなっていき、インターネットを利用するストレスが緩和すると、パソコンのメールを使用する頻度も増えていく。

21世紀に入って、携帯業界の競争の激化とともに、その機能が急速に発達する。その発達の産物のように現れたのがSNSだった。僕の場合、mixiから既にSNSという新たな社会にも居場所をつくった。その後、twitterやFacebookにも住まうことになる。メッセージ機能があり、それなりに利用するが、これらにLINEでのやりとりも加わる。

こうして、人と人の気軽な会話も、重い内容の会話も、消えずに残ることが自然となる。これは、裁判で提出できる証拠が増えることを意味する。今では当たり前のようにメールの履歴が証拠として提出されることになった。以前の弁護士はメールの証拠がなくて大変だったろうと思う一方で、20年後の弁護士は今の僕らに同じく同情するのだろう。

Windows95登場のころから振り返ると、この複雑な世の中を少し整理できるというのは嘘ではなさそうだ。(堀越智也)

【ほりこし・ともや】土浦一高校卒。法政大法学部卒。茨城県弁護士会所属「つくば中央法律事務所」代表弁護士。つくばコミュニティ放送株式会社代表取締役。離婚、相続、中小企業・ベンチャー企業、借金の問題、交通事故、成年後見等民事全般、著作権、刑事事件を主な業務とする。筑波大アソシエイトプロフェッサー、スピードリーディングインストラクター。東京都出身、つくば市在住。42歳。