【コラム・相澤冬樹】下戸のくせして、僕はしばしばお酒の取材に駆り出される。つくば産ワインの初蔵出しの記事を手配中、牛久市議会の全員協議会で牛久シャトー(同市中央)の「復活プロジェクト」の説明があったと聞かされて、ワインがらみの取材がハシゴになった。
牛久はNEWSつくばのカバーエリアから外れるものの、コラム「続・平熱日記」で斉藤裕之さんがシャトーについて書いていたので、直後の動きを続報の形で伝えようと思った。シラフの記者の方が適任だろうと、市役所に赴いたのだった。
牛久シャトーは、日本初の本格的ワイン醸造場とされる。国指定の重要文化財となっている建物もあり、お花見や飲食の場として市民に愛された施設だったが、レストランや物販店舗の業績悪化のため、2018年12月28日をもって閉鎖となった。直後、市には再開を願う310団体からの嘆願書、2万2800人余の署名が寄せられたそうだ。
これを受ける形で、市はシャトーを所有する持ち株会社、オエノンホールディングス(東京)と交渉を続けてきた。7月には根本洋治市長がオエノンHDの西永裕司社長と面会して基本合意が成立した。内容は、①市が旧醸造施設などや駐車場、ぶどう畑などを含むシャトー全体(約6.5ヘクタール)の賃借契約を締結②重文施設の保存・活用を先行し、市の文化財担当グループをシャトー内の事務所に置く―など。
賃借契約は今月1日に締結・発効となった。市が借り上げるのは、駐車場を含む同施設の土地と敷地内の全建物(オエノンミュージアムと倉庫を除く)。賃料は月額462万円(税込み)で、契約期間は2039年11月30日までの20年間。
新年に三セクの運営会社立ち上げ
借り上げ後の施設は第三セクター「牛久シャトー株式会社」により運営する。資本金9512万円のうち9500万円を市が出資する。設立は来年1月の予定で、社長には合同酒精元社員、川口孝太郎さん(59)の就任が決まっている。合同酒精は同HDのグループ会社、川口さんはシャトーの事業運営に関わり、昨年まで営業推進部長兼物販部長を務めていた。
すなわち、市は新会社に9500万円を出資したうえで、同HDに年間5544万円もの賃料を支払う。これらは新会社の事業展開で回収を図るわけだが、その指揮を執るのが昨年までの運営担当という図式には、左党ならずともちょっとカラミたくなる。実際、議会の同意を得るまで相当に紛糾したそうだ。
全協にはその川口さん自らが出席し、「復活プロジェクト」を説明した。「歴史的な文化財の積極的な活用はじめワイン文化による都市間交流、生活交流の機能を生かし運営していきたい」というのが骨子だった。
店舗の営業などは桜の花見客を狙い、3月下旬から4月上旬に再開させたい意向。ワイン醸造については新たに免許を取り直す必要があり、現在のブドウ栽培の規模から特区による取得となるため、新会社設立後の検討項目としている。
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