【コラム・室生勝】かかりつけ診療所医は、病院専門医のいる病院が緊急時に入院を引き受けてくれれば、安心して在宅医療ができる。在宅療養支援診療所(在支診)の施設基準にも、24時間対応、訪問看護師との連携、看取りなどとともに、緊急時の病院との連携がある。

1人医師の在支診は24時間365日、心身ともに拘束される。私の経験では、在宅医療を行えるのは月間20人までである。月2回の訪問診療を水曜か木曜に、外来診療を休診にして1日7時間行い、時間が足りないときは土曜午後を利用した。

3カ所の在支診が連携すれば、3人以上の常勤がいる診療所と同じく、機能強化型在支診と認められる。そして、機能強化型は過去1年間の緊急往診の実績10件以上、看取り実績4件以上、月1回の合同検討会開催の条件がある。

在宅医療を受けている患者の固定電話番号が医師の携帯に記録されていれば、患家は安心して、むやみに電話をかけてこない。重篤になる可能性がある患者には、毎朝夕電話して病状を聞いて早めに対応し、さらに訪問看護ステーションを利用すれば、医師1人に負担がかからず、24時間365日の拘束感はかなり薄れる。

長期休暇は連携医と交替にとれば、学会参加も海外旅行も可能である。長年通院していた患者と信頼関係ができているので、連携医の一時的な代診も了解してくれる。

「かかりつけ医に最期まで診てほしい」

つくば市には、外来診療を行わず在宅医療専門診療所(在医専診)が5カ所ある。1カ所は常勤医3名で、2カ所は複数の在支診と連携して機能強化型にしているが、2カ所は機能強化型ではない。つくば市の在支診は31と県内で最も多いが、全てが在宅医療を行ってはいない。一部の患者しか在宅医療をしないのは、医師自身の負担を減らす場合もあるが、患者の経済的負担を減らす場合もある。

訪問診療の診療報酬は、在支診も一般診療所も同じである。在支診には月1回、在宅時医学総合管理料あるいは在宅末期医学総合診療料が加算されるが、一般診療所ではその加算がなく費用は在支診より安くなる。安定している患者は月1回の訪問診療でもよく、総合管理料も月2回の費用より低くいので、患者の負担は軽減される。医師の診察が月1回で不安であれば、訪問看護ステーションを2週に1回利用すればよい。

厚労省は、地域包括ケアシステム上、在宅医療・介護サービスを30分以内に提供できることが望ましいとしている。患家から連絡があり、準備をして車に乗り、法定速度で走行し、患家に到着して患者のベッドサイドまでの時間である。診療所から患家までの距離にすると約10キロと思う。

高血圧、糖尿病、腰痛症などの慢性疾患で長年通院していた患者が通えなくなり、在宅医療を希望したときには、在支診でなくてもかかりつけ医として訪問診療してほしい。患者は長年診てくれたかかりつけ医に、最期まで診てほしいと願っているだろう。(高齢者サロン主宰)

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