【コラム・玉置晋】2019年5月24日、米国のスペースX社が、巨大通信衛星網「スターリンク」用の最初の衛星60機を「ファルコン9ロケット」で打ち上げました。その直後、一列に並ぶ衛星が太陽光を反射する姿が撮影され、銀河鉄道のようだと話題になりました。
スターリンク開発は2015年に開始され、プロトタイプ2基が18年2月に打ち上げられました。スペースX社は約1万2000基の通信衛星を打上げ、20年代中ごろまでに全世界をカバーする衛星インターネット通信網の構築を計画しています。具体的には、高度550キロに約1600基、1150キロに約2800基、340キロに約7518基が投入されます。これに衛星間光通信機能が加わり、電波による衛星インターネット通信網および宇宙空間に光通信網が完成します。
「ニュースペース」と呼ばれる人たちが、ものすごいことをやろうとしているようだと、話題性に事欠かないこの計画です。しかし、すでに高速インターネットに接続し、生活している人(日本の茨城県に在住している僕も含め)にとって、どんなメリットがあるの? 解を求めて検索してみましたが、よくわかりません。ただ、世の中が大きく変わるかもと、ザワついています。
衛星群は天体観測のジャマ
光を当てると影ができるように、これまでと違うことを行うと、皆が幸せになるとは限りません。この衛星群プロジェクトに対しては懸念が出ています。まず、困っていると声を上げたのは天文学者の方々です。スターリンクが銀河鉄道のようだと書きましたが、今後これらが全天で営業開始してくると、観測のジャマこの上ないのです。
また人工衛星事業者は、自分の衛星とこれらとの衝突を懸念しています。実際に2019年9月2日には、ヨーロッパの地球観測衛星「アイオロス」とスターリンクのうちの1基「スターリンク44」がニアミスを起こしました。このときはアイオロス側が回避制御を行い、衝突事故を防ぎました。明らかに宇宙の交通問題を悪化させます。
僕が高校生のころ(1990年代半ば)、まだインターネットは普及していなくて、調べものはもっぱら書物でした。大学に入ったころネットが普及し始めて、ダイヤルアップ方式(電話回線をパソコンに接続させ、ピーヒョロロという音が出て、プロバイダーにアクセスする古典的な接続方式)でした。動画のダウンロードなんて夢の夢でした。それから20年。10~20年後を想像してみるのも一興です。(宇宙天気防災研究者)
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