【コラム・川上美智子】来年度から小学校で全面実施される新学習指導要領では、AI時代をたくましく生きる子どもたちに向けてプログラミング教育が導入され、各教科ではデジタル教科書が積極的に活用されます。つくば市ではいち早くこれを取り入れて、「21世紀スキルの育成を目指す~つくば7C教育」が既に始められています。

7Cとは、協同力(Cooperation)、言語力(Communication)、思考・判断力(Critical thinking)、プログラミング的思考(Computational thinking)、知識・理解力(Comprehension)、創造力(Creativity)、市民性・社会力(Citizenship)の7つのCを指します。

さらに、現代的課題であるSDGs(持続可能な社会)の実現を考える教育や、STEAM(Science、Technology、Engineering、Art、Mathematics)教育を積極的に導入し、日本の中では最先端の公教育を展開しようとしています。

先日、学校教員対象の研修会が、市立みどりの学園義務教育学校で開かれ、教育の現場をつぶさに見る機会に恵まれました。1~6年の小学生全員が、ロボットを活用した英語教育、国語、算数、理科、社会、音楽、図工などでのプログラミングに、生き生きと楽しそうに取り組んでいる様子を見ることができました。

指導側も、当初はプログラミング経験者2名だったところが、研修や学び合いで全担任が全教科で実践できるようになったと言います。プログラミングによる教育効果も高く、論理的思考、試行錯誤・問題解決、学び合いの力が大きく育ち、学力調査でも5科目の茨城県平均を30点近く上回る成績が得られています。

つくば市が牽引役になることを期待

ICT(Information and Communication Technology、情報通信技術)の活用は、文科省も日本の教育の最重要課題としています。というのも、OECD/PISA(経済協力開発機構・国際学力調査)の2015年のICT活用調査では、学校で「ほかの生徒と共同作業するためにコンピューターを使う」は、日本は47カ国中最下位でした。毎日、ほぼ毎日使う国の上位は、タイ、オーストラリア、チェコ、デンマーク、ブルガリア、ロシア、スウェーデンなどでした。

「中学校で生徒に課題や学級での活動にICTを活用させる」先生も、51カ国中50位で、国際社会の中での出遅れは否めません。今後、教育の場でのICT環境の整備が不可欠ですが、茨城県のコンピューター整備状況は国内平均を少し下回り、児童生徒6人に1台当たりにとどまっていて、東京を含め、関東圏はどこも低調です。

今後、つくば市が国内のモデルケースになって牽引(けんいん)役を務めていくものと期待されますが、ICT教育には多額の費用がかかるのも事実です。20019年度の日本の一般歳出に占める文部科学費は9%(対GDP比4.9%)にとどまり低水準のままですが、国、地方公共団体が、未来への投資として教育予算を劇的に拡大しなければならない時を迎えています。(茨城キリスト教大学名誉教授)

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