【橋立多美】公共交通を利用できない移動困難者のために外出支援をしている、つくば市の移送サービスの高齢ドライバーが送迎活動を休止したいと申し出ている。近頃の「高齢者は免許返納すべき」という風潮の影響と見られる。高齢化時代のサービスとして期待され、需要が伸びているだけに関係者に不安が広がる。
同市を中心に、正月三が日を除くほぼ毎日、外出が難しい高齢者や障害者を有償ボランティアがマイカーで送迎するNPO法人「友の会たすけあい」(同市下岩崎)。茎崎町時代に発足、活動は22年になる。国土交通省が認めた福祉有償運送で、市の依頼を受けている。
「たすけあい」は、登録した利用会員からの電話を茎崎高齢者交流センター内の事務局で受け、その居住地や行き先に応じ協力会員(運転ボランティア)を決める。利用は通院や買い物、墓参りなどさまざまで、費用はタクシーの半額程度と格安。昨年1年間で延べ3380人を移送した。
免許返納の広がりを受け、ボランティア会員17人のうち、75歳を過ぎた3人が送迎活動を止めて電話の受付を希望するようになった。無事故で利用会員からの苦情はないが、「利用者が高齢ドライバーの自分の運転を不安に思うのではないか」の思いがこうした状況を生んでいるそうだ。
運転は75歳までのルール
ボランティア会員は定年退職後に活動を始めた人たちだ。佐藤文信理事長は「ボランティア会員の運転は75歳までというルールはあるが、定年後も働き続ける人が増えて運転者が足りず、地域に詳しいベテラン3人に頼らざるを得ない状況が続いてきた」と話す。
申し出を受け入れ、3人の活動は近距離のルートだけに絞り乗車回数も減らしている。これからはボランティア会員を75歳以下にしたい考えだが、佐藤さんは利用会員からの予約を断るケースが出てくるかも知れないとした上で、「今年度の移送は延べ3500人を見込んでいるが乗り切れるかどうか…」と思案する。
移動困難者を支えるボランティアの前に立ちはだかる年齢の壁。その一方で、地区内では高齢化が進行して車を手放す人が増えるなど利用増加が予想される。132人の利用会員中、最近利用会員になった4人は要支援になって免許を返納し、マイカーを処分したためだという。
運転手不足は全国の福祉移送サービス事業者共通の課題だ。取手市のNPO法人「活きる」はボランティア不足で需要に応えきれず、昨年は利用会員の新規登録を中断した。今年は困っている障害者や高齢者を捨て置けないがすべてを受け入れられないと、新規登録を制限する一方、運転ボランティアの活動年齢を75歳から80歳に引き上げた。
佐藤さんは「長く働きたい人が増えてボランティアのなり手がいない今、高齢者に免許返納を迫る風潮が重なった」と現状を憂う。
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