【コラム・浦本弘海】前回(8月20日掲載)は、隣家から木の枝や根が自分の敷地に入ってきた事例について取り上げました。今回も、前回から引き続き相隣(そうりん)関係(隣りあった土地の間の法律関係を定めるルール)のお話をしますね。

民法には、他人の土地に囲まれていて、公道に接していない土地の所有者が、他人の土地を通行できるという規定があります(210条)。

他人の土地に囲まれていて、公道に接していない土地を「袋地」(ふくろち)、「袋地」を囲んでいる土地を「囲繞地」(いにょうち)、「囲繞地」を通行する権利を「囲繞地通行権」と言ったりします。以下、条文です。

(公道に至るための他の土地の通行権)
210条1項 他の土地に囲まれて公道に通じない土地の所有者は、公道に至るため、その土地を囲んでいる他の土地を通行することができる。
210条2項 池沼、河川、水路若しくは海を通らなければ公道に至ることができないとき、又は崖がけがあって土地と公道とに著しい高低差があるときも、前項と同様とする。

ただ、最近は袋地自体が減ってきているように思います。これは、建築基準法43条1項の規定で、原則として建築物の敷地は道路に2メートル以上接しなければならないという、接道義務が課せられているため、通常、敷地が道路に接していないと家が建てられないということも原因と思われます。

ちなみに、土地の所有者が、土地の一部を売って囲繞地が生じたような場合(大地主さんが、公道に接していない土地を売ったような場合をお考えください)には、その土地の所有者(大地主さん)の土地のみ通ることができるという規定(他の地主さんの土地は通れません)もあります(民法213条)。

「通行だけなの?」

先ほど建築基準法の接道義務を挙げましたが、下水道法にも接続義務がありまして、土地の所有者等は、公共下水道に流入させるための排水管等を設置しなければなりません(下水道法10条)。

この関係で、排水管等の設置義務者は、他人の土地又は排水設備を使用しなければ下水を公共下水道に流入させることが困難であるときは、他人の土地に排水設備を設置し、又は他人の設置した排水設備を使用することができます(下水道法11条1項)。

「通行と下水道だけ?」

この点、ガス、上水道、電気、電話については法律上、直接の規定がありません。しかしながら、これらは「都市生活において必要不可欠」として、設置する権利を認めた裁判例もあります。「法律上の規定がないからそんな権利は認められません」と言わなかった粋な判断と思います。ご参考までに。(弁護士)

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