木曜日, 9月 18, 2025
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【つくば市教育長インタビュー】方針を転換 「5校目の義務教育学校はつくらない」

【鈴木宏子】施設一体型小中一貫校を新設してきたつくば市の教育方針が大きく転換する。門脇厚司教育長は「5校目の義務教育学校はつくらない」と表明し、人口が急増するつくばエクスプレス(TX)沿線に今後新たにつくる小中学校は、施設一体型の一貫校とはしない方針を示した。つくば市の教育はどこに向かうのか、門脇教育長にインタビューした。

大規模校になってしまう

―人口が急増するつくばエクスプレス(TX)沿線にさらに2校を新設する計画が発表された19日の市議会全員協議会で、門脇教育長は「5校目の義務教育学校はつくらない」と明言されました。つくば市の小中一貫校を検証した市教育評価委員会の調査報告書「つくば市の小中一貫教育の成果と課題」(2018年7月)でも「小中一貫教育の効果は小中分離校でも発揮されている。施設一体校では中一ギャップは解消しているが、新たに小6問題が顕在化している」などの課題が出されています。義務教育学校、つまり施設一体型の小中一貫校はつくば市ではもう止めるということでしょうか。

門脇 小中一貫の義務教育学校がつくば市にはすでに4校あり5000人が在籍している。小中学生約2万人のうち4分の1になる。小中一貫教育の義務教育学校を止めるとは言えないが、5校目以降はつくらない。すでにある4校の義務教育学校については、これからはできるだけ小学部と中学部の分離を意識した学校運営をやりたい。

例えば、今は小学6年生を終えても卒業式もないし、中学生になる際に入学式もない。これからは小学部1年生から6年生、中学部1年生から3年生の区切りとし、小学部の卒業式も中学部の入学式もきちんとやるようにしたい。

―義務教育学校をこれ以上つくらない理由は何ですか。

門脇 これからTX沿線につくる新設校を義務教育学校にすると、大規模校になってしまう。それから2018年7月の「小中一貫教育の検証と課題」で指摘されたように、同じ小中一貫教育でも、小学校と中学校が分離していた方が教育効果が高いということなら、高い効果が現れる方を選んだ方がいい。

つくば市で子供の数が増えるのはこれから10年間か15年間。15年後には減ってしまう。これからつくる学校は、将来、何に転用するか考えてつくらないととんでもないことになる。将来どういう施設として活用するかを今から考えながら設計をしていく。

子育て世代 想定以上に増えた

5月30日につくば市が発表した「今後の人口増加地域の児童生徒数の推計値」によると、新たに学校をつくったとしてもTX沿線では引き続き過大規模校のままとなってしまう学校が複数あります。なぜこんなことになってしまったのでしょうか。

門脇 想定より多い子育て世代がどんどん入ってきている。前任者もこうなると思ってなかったのではないか。前任者が「教育日本一」を大々的に掲げたこともある。保護者は、教育日本一とは学力日本一だと考えて、つくば市の学校に入れればわが子の学力が上がると考え、想定以上に増えたのではないか。できたばかりの新しい学校は立派できれいなので、うちの子もこんなすばらしい学校で勉強させたいと、わざわざ引っ越してきた親御さんもいる。

「世界のあした」のトップランナーに

―つくば市の教育はこれからどういう方向を目指すのかを示す教育大綱を今、策定中です。つくば市の教育はこれからどう変わっていくのですか。

門脇 子供たち一人ひとりを徹底的に大事にする教育を目指す。どの子にも、自分はこういうふうに生きていきたいと願う気持ちがあるわけで、それを実現させる教育にしたい。

つくば市は五十嵐市長が「世界のあしたがみえるまち」を掲げている。ならば、つくば市は「世界のあしたの教育」のトップランナーになると言ってきた。これまでどこでもやってない教育をやりたい。

そもそも現在の公教育制度は、150年前に、産業社会を発展させるために必要な人間を育てることを目的に作った制度で、極めて不自然なことを無理を重ねてやってきた。

一例をあげれば、その国に生まれた子供は誰もが一定の年齢になったら必ず学校に行くことを強制されるし、同じ年齢の子でクラスを作り、全員が同じ教科書で同じことを一斉に教わる。学期が終わると必ず競争試験があって、できる子と出来ない子を分けて、できる子にはもっと勉強させて新しいモノを創り出すことができる能力を高め、できない子には先生や経営者の言うことを守ればいいと教える。こんなやり方はいやだ、自分のペースで学びたいと言っても許されないというふうに、今の公教育は経済成長を最優先させるため不自然な教育を無理を承知でやっているというのが実態。

だから、新しい教育大綱をつくって、つくば市がこれから目指す教育をはっきり示さなくてはならない。学力競争の教育から抜け出して社会力を育てることを基本にすえる。社会力とは人と人がつながって社会をつくる力、さまざまな人と人がよい関係をつくり、協力しながらよりよい街をつくる力のこと。子供も大人も社会力を育てるのがつくば市の教育の将来になる。

新設校は固定観念を一新する

―これからできる新しい学校は、つくば市が目指す新しい公教育の在り方を先取りしたものになるのでしょうか。

 

香取台小学校(仮称)建設予定地

門脇 例えばいま設計に取りかかっている香取台小学校(仮称、2023年4月に万博記念公園駅近くに開校予定)は、学校に対する固定観念をぶち破る学校にしたい。

職員室はつくらないで、1年生の教室が並んでいる真ん中あたりに1年生の担任の先生たちの授業準備室をつくる。先生が授業の準備をしたり、お茶を飲んで雑談したり休憩したりする。全教職員が一カ所の部屋に集まる今の職員室は同調圧力のもとで、互いに監視し合ったりする。仕事が終わったので早く帰りたいと思っても隣の先生はまだ帰らないので残っているということになる。

カフェテリアをつくり、勉強に使っている机で給食を食べるのではなく、カフェテリアで食べることで食事そのものを楽しんでほしい。

プールはつくらず、プールの敷地に保育所や児童クラブや、大人が集う市交流センターなどをつくって、学校を小中学生だけの施設でなく市民が集える複合施設にするとか、演劇や音楽や美術の発表を楽しむホールや大勢で遊べる遊び場は作っても、「全体回れ右!」といった軍隊式の集団行動を訓練する体育館は作らないというふうに、学校とはこういうものだというこれまでの固定観念を一新するような学校を作ってみせたい。

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つくつくつくばの七不思議の旅《映画探偵団》92

【コラム・冠木新市】2009年、「つくばの映画・演劇を作ろう」をテ一マにNPO主催の講演会で30人を前に語った。当時、映像のロケ地に誘致する運動は盛んだったが、地元の文化・歴史・伝説を活用して、自ら作る動きは少なかった。 つくばにも面白い素材がいくつかあった。その一つが、茨城県出身の童謡詩人・野口雨情が1930(昭和5)年に作詞した「筑波小唄」「筑波節」で、元は一つの歌をなぜか二つに分けた新民謡だ(映画探偵団22)。 2010年、その理由を「雨情からのメッセージ」と題して講演、朗読劇、踊り、演奏で表現した。新築の筑波銀行ホ一ルに300人ほど集まった。好評だったこともあり、つくばの7地域の話を「つくつくつくばの七不思議」として再創造しようと考えた。 2012年春、北条を竜巻が襲い町を破壊したころ、水戸で「筑波小唄」「筑波節」の幻のSPレコードが見つかった。いろいろな方の協力を得てCDに復刻、また、つくば市の観光物産課の応援で踊りの講習会を5期まで開催した。 同年秋、詩劇「北条芸者ロマン~筑波節を歌う女~」を上演。北条街づくり振興会との縁を深めた。このとき、植田利浩さんが作曲した曲を「筑波恋古道」と名付けた。 2015~16年、「つくつくつくばの七不思議/サイコドン」をACCSケ一ブルテレビで放映。「筑波恋古道」の作詞もでき、歌い手を募集するが、応募はなかった。踊りのイベントでは、植田さんの歌うデモテ一プを使用した。2023年の「金色姫伝説旅行記」のときに、声楽家・大川晴加さんが新たに吹き込んだ。 「はじまりのうた BEGIN AGAIN」 「北条芸者ロマン」に取り組んでいたころ「はじまりのうた BEGIN  AGAIN」(2013)という映画が製作された。オ一プニングはバーのステ一ジ。無名の女性シンガ一が歌い、1人の中年男性が身を乗り出して聞く。そして「その日の朝」とクレジットが出て回想となる。 男は、音楽プロデューサーで5年間失敗続き、妻と別居中。娘に煙たがられ、自分が創立したレコード会社からもクビを宣言され、地下鉄で自殺を考えバーに来る。男は、無名シンガ一の背景にピアノやベースが加わる幻想を見る。 次に女性の回想がはじまり、楽曲を提供した恋人歌手との関係がこじれ争いとなる中、バーでプロデューサーの男と出会ったことが描かれる。 2人は作品を企画する。会社からデモテ一プを要求されるが、録音費用のない男は、デモよりもアルバムを作ろうと考える。路地裏やビルの屋上などで録音する。演奏者には後払いで、才気あふれる無名の若者を集める。さらに女性歌手の誘いで、男の娘をギターに採用。完成したアルバムは高評価を受ける。 エンドクレジットが流れる中、女性がレコード会社と契約したくないとの訴えに男はあっさり了承し、最後にはネットを使い1ドルで売ることにする。アルバムは大ヒットするが、男は元の会社から再びクビになる。そうした時代を先取りした作品だった。 「筑波山 恋うたつづり」 2025年8月27日、「筑波小唄」「筑波節」「筑波山唄」「筑波恋古道」を収録した「筑波山 恋うたつづり」が恩田鳳昇監修で日本コロムビアから発売された。企画から15年かかった。つくつくつくばの七不思議の旅は「はじまりのうた」をヒントにまだまだ続きそうである。サイコドン ハ トコヤンサノセ。(脚本家) ※つくつくつくばの七不思議セミナー(お話と懇談会)のお知らせ:2025年9月27日(土)午後1時~、カピオ小会議室、参加費無料。

洞峰公園などが「自然共生サイト」に NPOとつくば市が共同申請

市内7カ所目 民間の取り組みなどによって生物多様性の保全が図られている区域や活動を認定する環境省の「自然共生サイト」に、つくば市の洞峰公園とその近接公園が16日認定された。同日つくば市が発表した。認定区域は洞峰公園(同市二の宮、17.4ヘクタール)と、近接する二の宮公園(同市二の宮、2.7ヘクタール)、まつぼっくり公園(同市千現、0.6ヘクタール)の3公園で、面積は計20.7ヘクタール。 市環境保全課によると、洞峰公園などで動植物調査や希少種の保護などを実施しているNPOつくばいきものSDGs(木下潔代表)から昨年秋ごろ、つくば市に提案があり、今年4月、同NPOとつくば市が共同で申請した。 市内では奥村組技術研究所内のビオトープ(同市大砂)も同日、自然共生サイトに認定された。市内の自然共生サイトは計7カ所となり、認定数としては全国の市町村で4番目に多くなった。認定サイトのほとんどは国際データベースのOECM(保護地域以外で生物多様性保全に資する区域)にも登録される予定。 認定制度は2023年度から始まり、25年4月に認定の仕組みを法制化した地域生物多様性増進法が施行された。法律に基づく認定は今回が初めて。同法に基づいて民間が作成・実施する増進活動実施計画と、市町村が取りまとめ役となって地域の多様な主体と連携して行う連携増進活動実施計画が認定され、二つの計画の活動実施区域が自然共生サイトとなる。 ゾーニングし緑地管理 市によると、洞峰公園とその近隣公園サイトの活動計画は、800メートルの距離を置く3つの公園の状況について①隣接する複数の研究所の樹林地、草地と共に100ヘクタールを超える緑地を形成し、絶滅危惧種を含むつくばの里地里山、沼・湿地に特徴的な動植物が生息生育している②通勤、通学など日常生活の傍ら、多様な生き物の活動に触れることができる—などが特徴だとしている。 活動計画の目標については①日常生活の中で生物多様性を実感できる市街地ならではの環境を次世代につなぐことを目指す②自然観察会などの環境教育活動を通じて身近な公園の生物多様性の価値に対する認知を高め、市民参加による調査モニタリング活動や保全活動を推進する―の二つを掲げている。 主な活動内容は、植生の特性に応じて園内をゾーニングし緑地管理するというもので①希少動植物生息生育エリアでは保全対象動植物に適した手刈りの草刈り、落ち葉かき、播種、樹木剪定を行い、対象植物の生態系を侵害する動植物は防除する②通常管理エリアは機械刈りや樹木剪定など一般的な公園緑地の管理手法を行う➂希少種エリアと通常管理エリアの間の緩衝的役割を担う緩衝ゾーンは主として背丈が高めの高刈りにより草地管理を行う—としている。 モニタリング計画として①植物、鳥類、昆虫、菌類を対象に年1~2回、有識者の指導の下、市民参加型調査・モニタリングを行う②希少植物種については開花期に生育状況を同NPOが中心となって調査する—とし、実施体制として①市と同NPOは専門家の意見を交えて保全計画を立案し実行する②つくば市は対象サイトの運営管理を統括し、希少動植物の生息生育エリア以外の緑地管理、沼管理を行う➂同NPOは希少動植物の生息生育エリアを管理し、調査・モニタリング活動、環境教育、市民参加型生物多様性保全活動を計画・実施する—となっている。計画期間は今年9月から2030年8月までの5年間。 一方、洞峰公園をめぐっては、2024年2月に県から市に無償譲渡された経緯などを受けて、今年4月、同公園の管理・運営方法などを市に提言する「洞峰公園管理・運営協議会」(委員長・藤田直子筑波大芸術系環境デザイン領域教授)が4月にスタートしたばかり。一般市民が参加してこれからの維持管理について話し合う分科会は1回目が7月に2日間開かれたのみで、本格的な議論はこれからになる。 洞峰公園を管理する市公園・施設課は、今回認定された活動計画は、県が管理していた時を含め、すでに取り組まれてきた活動を継続するものだなどとしている。(鈴木宏子)