【相澤冬樹】気象庁アメダスの最高気温で35.3℃(つくば)を記録した猛暑日の17日、旧盆の出荷最盛期にようやく一区切りをつけたナシ農家が取材に応じてくれた。つくば市大砂の塚本忠男さん(71)、朝5時からの収穫作業を終え、自宅わきの選果場に戻ってきた。「今年の夏はおもしろかった。異常気象の年ほど栽培の醍醐味がある」と日焼けした顔をほころばせた。
今の時期、塚本さんが収穫しているナシは、早生の代表品種「幸水」。大砂地区の5カ所に約1.5ヘクタールを持つナシ園のうち、約1へクタールで栽培している主力品種だ。ハウス栽培を止めた塚本さんの出荷は7月から始まるが、ピークはお盆需要が高まる8月中旬。炎天下、収穫作業にひとり黙々励む。

「日中の収穫はしない。日差しの中だと皮が厚くなってしまうので、朝5時ごろから遅くても午前10時には切り上げるようにしている」とこだわりをみせる。収穫したナシを自宅に持ち帰ると妻の待つ選果場へ。ここへ客が次々にやってきて、思い思いのサイズを見つくろって購入していく。庭先には試食のテーブルがあり、客が自ら包丁を入れ、手をべとつかせながら味わっていく。
もちろん市場にも出荷している。「7月は長雨の影響で、市場では幸水が小玉のサイズばかりになった。そこへうちが大玉を持ち込んだものだから、高値で商いできた。そこがナシつくりのおもしろいところ」。収穫時期以外は土壌の世話と樹木のせん定に労力を費やす。その結果が収穫となって結実するのが果樹園芸の醍醐味というのだ。
しかし、脱サラして始めたのが約40年前、箱詰めするナシの重さがこたえる年齢になった。苗木から育てた樹木も老木となり、更新をしていかなければならない。そんななか、県の育成品種である「恵水」の育成にも取り組んでいる。4L以上限定という大玉規格なのが特徴だ。「新しい品種というのは接ぎ木によって育てるのだけど、実が穫れるまで大体5年かかる。それを3年でできるようにするのが腕の見せどころ、年の功だね」と胸を張るが、技術を伝える後継者が不在なのが悩ましいところだ。
幸水の出荷はほぼ8月いっぱい、それから豊水に切り替わり、恵水は中旬からお彼岸にかけて出てくるそうだ。
◆塚本梨園(つくば市大砂)電話029-865-0855