【橋立多美】県内物流大手、沼尻産業㈱のECささげ物流越境センター(つくば市榎戸)で働くキンカイ(金海)さん(32)は、中国内モンゴル自治区出身。昨年春、筑波学院大学経営情報学部(同市吾妻)を卒業して同社の正社員となった。就職を機に就労ビザを取得した。
キンカイさんは2012年に来日して千葉県柏市の日本語学校で2年間日本語を学んだ後、同大に進んだ。学業とアルバイトを両立しながら言葉の壁を克服し、日本語能力試験で最もレベルの高い「N1」に認定された。
職場はEC(中国向けのインターネット通販)物流の発送拠点。約2300平方メートルの倉庫内のスチールラックに保管された化粧品や健康用品、日常品など、数万点に及ぶ日本製品の中から注文に応じて取り出し、検品と計量してから丁寧に梱包して箱詰めする。受注から48時間内に出荷して航空便で中国に輸送される。
今は笑顔で出荷作業をこなすキンカイさんだが、配属されて3カ月は言葉遣いやマナーを考えるあまり、緊張の連続だったという。もう1人の社員と共に、パート4人に作業指示を行う立場だが、謙虚な姿勢が好感を持たれ女性パートさんたちから「キンちゃん」と親しまれている。
時間までに梱包出荷を終えることが重要で、保管された商品の9割は保管場所が頭に入っているという。また広大な中国の省や自治区の名称と位置、そして現地の消費者動向を熟知しているキンカイさんにとって、中国市場への物流は手応え十分のようだ。
正月やイベントなど、中国人が通販サイトで爆買いする繁忙期は、一日で5000件以上を出荷したと話すキンカイさん。「日本製品に対する信頼は厚い」とも。定番人気の美容化粧品に加え、最近はコンタクトレンズの注文が多いそうだ。
プライベートも充実
直属の上司で、ECささげ物流国内センター長兼課長の糸賀陽子さんは「ミスなく仕事ができ、今の時期はパートさんに熱中症に注意を呼びかけるなど、気遣いができる」と評価する。同大学での入社説明会で「聞く姿勢がしっかりしている」と感じた人事課の谷口拓也主任は、前向きに仕事に取組み、人柄が良いと信頼をおく。
経験を積み、会社に貢献したいというキンカイさん。将来は会社が中国に支店を開設し支店長として業績を伸ばすこと。叶わぬなら貿易会社を設立したいと志を熱く語った。
「仕事が安定して幸せ」と話すキンカイさんはプライベートでも充実している。今年6月に長男が誕生。顔を見れば疲れは吹き飛び、父親としての責任感が生まれたという。
留学ビザで来日して7年。これまでを振り返りつつ、外国人留学生たちに「周囲には心優しい人がいる。僕には学院大の先生たちがいた。理解者に相談しながら、目標に向けて諦めずに前進を」とメッセージを送る。
➡キンカイさんのインタビュー記事はこちら