【コラム・先﨑千尋】皆さんにとって図書館ってなんだろうか。毎日のように通う人もいれば、縁が遠い人もいるだろう。私が住む那珂市の図書館は、暑いせいもあろうが、連日、車が駐められないほどの盛況(?)ぶりだ。
私は、以前は、本は買って読むものだと考えていたので、あまり図書館を利用することがなかった。しかし最近は、週に2~3回は利用している。よく行くのは、那珂市立、県立、茨城大学の図書館だ。蔵書が増え、置くスペースがないこと、一度しか読まない本は借りて読めばいいと考えるようになったからだ。さらに、図書館のレファレンスが充実してきて、わからないことを聞いたり、資料を取り寄せたりができるようになってきたこともある。
そんな私にピッタリの本を、著者でつくば市在住の竹内悊(さとる)さんが贈ってくれた。あえて竹内さんと呼ばせてもらうが、私が町長のとき、瓜連(うりずら)小学校を木造で建て替えるに当たって、どのような学校図書館にしたらいいかを相談した。竹内さんは私より15歳上で、2004年までつくば市にあった図書館情報大学の副学長を務めた方だ。それ以来、困っていることがあると手紙を書き、適切なアドバイスをいただいている。
竹内さんは、60年以上図書館と関わってきたなかで、「図書館とは人が生きる上で一体なんなのだろうか」と考え続けてきた。そして「本というものは、人の感覚と思考と行動の記録なので、人が生きていく上に大きな働きを持つものである。その多彩な本と、人の多様な要求を適切に繋ぐために、図書館がある」というのがその答えとなった。
『生きるための図書館-一人ひとりのために』(岩波新書)はそのことを踏まえ、地域の図書館の事例や、子どもたちに本を届けようとしてきた石井桃子さんらの活動、公立図書館が直面していること、図書館が東日本大震災に遭ったときどうしたか、小中高、大学での図書館の試み、地域でどのような図書館をつくっていくかなど、本と図書館に関心がある人に多くの示唆を与えてくれる。
図書館は「めがね」「ひきだし」「コンパス」
ここでは本書のあらましを紹介できないので、私の印象に残った言葉をいくつか。
▽ 読書は個人の考えを育て、(授業での)社会科は世の中の仕組みについて知る。さらに、自分を作りながら、人と共に生きる。
▽ 読書とは、それをしたからこれだけの効果があったとはいえない内面的なもので、数量化はできない。行政がかかわることとは、子どもたちが本を自由に手にする環境を作り、そこで子どもと本とを結びつける人を育てることに力を尽すことだ。
▽ 図書館法は、利用者が自由に書架の前に行き、内容を確かめてから読んだり借り出したりできる公開書架制に変えた。
▽ 公共図書館の資料費が削減され、司書の配置転換によるサービス水準が低下してきている。
▽ 生徒は学校図書館で「めがね」と「ひきだし」と「コンパス」という道具を手にする。
本書を、本が大好きなあなた、図書館で仕事をしている人、さらに図書館行政に関わっている首長、議員、教育委員会の人たちにささげたい。(元瓜連町長)
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