【コラム・及川ひろみ】今、宍塚大池は蓮(ハス)が美しく咲いています。「極楽浄土のよう」の声も聞かれます。花に顔を近づけるとミントのようないい香り。池全体に甘い香りが漂っています。
土浦市は日本一のレンコンの産地。霞ケ浦周辺に蓮田の花が見られますが、白い花々が一面に咲くことはありません。昔から日本にある野生の蓮はピンク色ですが、明治時代、食用として中国から輸入された「シナバス」は、レンコンが育つように改良されたもので、花が少ないからです。
シナバスは太く、食べるとシャキシャキとしていますが、野生の蓮は細長く、食べると少し硬く、ねっとり感がある食感。食用とはかなり違います。ピンクの花を咲かせる野生の蓮を地元では「柳バス」と呼びます。蓮田に柳バスが出ると駆除しますが、高級料亭では変わった蓮として料理に使われると聞いたことがあります。
レンコンを食べたとき、細い糸を引きますが、この糸は藕糸(ぐうし)と呼ばれるもので、レンコンだけでなく、花や葉の茎を折っても見られます。茎にもレンコンの穴のような大小10個ほどの穴が空いていますが、その穴から細い糸がばねのような螺旋(らせん)状になって出てきます。
蓮の糸で布を織る 花茶をいただく
茎数本を束ね、ポキッと折り、出てきた数十本の糸を撚(よ)り、撚った糸数本をまとめてさらに撚り、木綿糸ほどの太さの蓮の糸を作り、それを横糸にして布を織ったことがあります。縦糸はハスの茎の皮からとった、茄糸(かし)と呼ばれるハスの糸を使いました。布作りは丸一日、数名がかりで取り組みました。手間をかけ出来上がった布は4✕6センチほど。しっとりとした、動物のなめし皮のような不思議な感触でした。
仏教では聖なる花として慕われる蓮。その糸から作った布は、曼荼羅(まんだら)や袈裟(けさ)に使われ、珍重されているそうですが、布作り体験があまりにも大変だったので、その後は行っていません。
蓮の花茶は、花が開く直前の蕾(つぼみ)の先端を少し開いて緑茶を注ぎ、花の香りを楽しむお茶です。江戸時代、不忍池(しのばずのいけ)の畔で催された優雅な遊びということで、大池でも楽しみました。
皆さま、蓮の花が満開の宍塚大池、ぜひ足をお運びください。そして「蓮の花や葉、レンコンで楽しむ、お楽しみ会」を一緒にしませんか。蓮が覆った池の中では、酸素不足が起こり、他の動植物への影響が…。生態系にとっては困ったことです。(宍塚の自然と歴史の会代表)
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