【橋立多美】ケーブルテレビが発信するコミュニティチャンネル(自主放送)の番組は、地域の観光資源や行政情報が王道で、ある種のマンネリ感が否めないなか、研究学園都市コミュニティケーブルサービス(ACCS)が制作している「月刊チラシズム」は話が別だ。つくばと土浦の公共施設などで集めた100枚以上のチラシを世相と照らし合わせて斬り込むことに軸足を置く。地域の楽しみ方を広げたと番組ファンの1人は語る。
怪しげな笑い声をバックに「冬木周一がつくばに迫る」と題したオープニング映像が流れる。続いて、つくば市在住の脚本家、冠木新市さんが「語り手」として収録室の壁一面に貼られたチラシを紹介する。色遣いや文章など時代を背景に変化するチラシを独断と偏見で斬り込みつつ、イベントやコンサートなど、お薦めのスポットに焦点を当てる。
そこにもう一工夫加えたのが、冠木さんとタッグを組んで同番組を制作している飯泉彩プロデューサー。ギョロ目のイラストを用い、あえてチラシを指すのに指し棒を使わず、毛深い冠木さんの指にこだわった。
番組放送開始から2年を経た今では「語り手の声が良くて(毛深い)手が気にならなくなった」の声が寄せられる。飯泉さんは「怪しい雰囲気の番組作りを目指した。作戦通り」と満足気だ。
飯泉さんにとって同番組は格別の思い入れがある。チラシ収集家でもある冠木さんにチラシを使った番組制作を持ちかけられていたが、踏み出せぬまま1年間の産休に入った。ところが産休中たびたび「復帰はまだか」と冠木さんから連絡がくる。「早く復帰せねば…」の思いが増幅し、子どもの寝顔を見ながら番組の企画を練ったという。

つくば市在住の櫻井豊さん(55)は番組を楽しみにしている1人。「語り手の価値観でチラシが紹介されているが、鋭い視点で面白い。イベント情報は興味のある分野をチェックするだけになりがちだが、スポットが当てられることで関心を持ち、地域の楽しみ方の次元を上げてくれる」と話す。冬木さんに会いたいと、つくば三井ビル内のACCSを訪ねてくる人もいるそうだ。
「月刊チラシズム」8月号は、夏休みの子ども向けイベントを中心に収録され、8月5日から放送される。番組放送はACCS11チャンネルで午前8時5分~、同11時5分~、午後3時5分~、同6時35分~の1日4回(1回10分)。問い合わせはACCS(電話029-852-6111)まで。