【コラム・坂本栄】土浦駅ビルとその周辺が面白いことになっています。霞ケ浦と筑波山を巡るサイクリングロードの拠点となる「自転車のまち」に、図書館、古書店、新刊店が集まる「本のまち」が加わったからです。バイクとブック。なんの関係もありませんが、この動と静に心地よいものを感じます。

駅から歩いて1分の所に、一昨年オープンした土浦市立図書館があります。その先1分の所には、大きな古書店「つちうら古書倶楽部」があります。これだけでも面白いのに、5月末、駅ビル内に新刊書店「天狼院書店」が開店したのです。店主の意気込みについては、本サイトの記事「土浦駅ビル 『モデルつくり全国展開めざす』 体験型書店が意欲」(5月31日掲載)をチェックしてください。

心配性の私は、こんな近くに貸本と古本と新刊の館店が集まって大丈夫かと思ってしまいます。でも図書館長は、お互い連携して駅前を元気にしようと張り切っています。詳しくは館長のコラム「『本』を通じて賑わうまちへ」(6月6日掲載)をご覧ください。

本3兄弟の集合が、本の供給過剰にならないか? 逆に需要喚起につなげられるか? 後日、館長、両店主と議論できればと思います。電器のまち秋葉原、本のまち神保町は後者の好例でしょう。味噌ラーメン、豚骨ラーメン、支那ソバなどの店が隣接していれば、そこにラーメン好きが集まる相乗効果も、後者の例でしょう。

激変した本の流通と読書の形

小中学生のころ、土浦のまちには新刊本屋が何軒もあり、旧水戸街道沿いの白石書店、駅近くの共栄堂にはよく通ったものです。家の本棚には、これらの店で買った本が並んでいました。東京に住んでいたころは(1966~2003年)、神保町の古本屋と大型新刊店をのぞくのが楽しみでした。千代田区立図書館に足を伸ばしたこともあります。

しかし、ネット販売、電子本が普及した現在、本屋に立ち寄ることはまれになりました。今、私の部屋にある新本と古本の9割は「アマゾン」から取り寄せたものですし、ほぼ同じぐらいの数の電子本がクラウド上のライブラリーに収められています。

新聞もそうですが、本もネットの普及によって、流通形態(本屋で買う→宅配で届く)、読書形態(紙の本で読む→タブレットの画面で読む)が大きく変わりました。発注データで私の読書癖を調べ、推奨本(買ってくれそうな本)までメールで送って来る時代です。

本の入手方法や読書スタイルは、まちの本屋時代とは違ったものになりました。しかし、新本や古本を立ち読みし、その場で包んでもらう感触は別ものです。広い空間と機能的な図書館も別ものです。貸本館+古本屋+新刊店が生み出す、非アマゾンの世界、本好きが集まる場所、そして交歓、とても楽しみです。(経済ジャーナリスト)

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