【コラム・及川ひろみ】宍塚大池の堤防を彩ったソメイヨシノから、宍塚の里山は淡い紅色の葉を添えて咲く山桜の季節を迎えています。「私はここよ」とばかりに、里山のあちらこちらで咲き誇っています。山桜はソメイヨシノより背が高く、ケヤキのように太い枝を広げて存在感がありますが、あまりの高さに近くを歩いても見落としてしまうこともあります。

さて、桜以外の里山の木々、枝先の若葉が葉を広げ、里山全体が若葉色に色付き始めています。この若葉、木の種類によって色が微妙に異なり、今ごろの里山は緑色とはいいがたく、実に様々な色合いに染まっています。

日本人の繊細な感性が生み出した緑の色を表す呼び名は、草色、若緑、若草色…、70種類以上あると言われますが、里山の春は緑の色のオンパレード。これが日々刻々色を変え、日ごとに山の色合いが変わり、その鮮やかさはまさに山笑うがごとしです。

散策路に目を転じれば、薄紫、濃い紫、白色のスミレ、目が覚めるような鮮やかな黄色の花々、田んぼにはレンゲ、真っ白なタネツケバナやノミノフスマ、そして草原にはピンクのホトケノザ、ムラサキケマンなどが一面に咲き誇り、春爛漫(らんまん)、テントウムシやチョウたちも春を待っていたかのようなにぎわいです。

28日に「里山の春を楽しむ会」開催

この季節のもう一つの楽しみは、春の美味しいものです。写真は、カンゾウの湯通しとタネツケバナ、タチツボスミレの花の和え物、カラスノエンドウの花と若葉、セリ、春の七草のゴギョウことハハコグサ、ヨモギ、そしてタラ、ハリギリ、サンショウの芽の天ぷらです。

ソースは、秋収穫した柚子の冷凍をすりおろしに酢味噌を和えたもの。味噌は宍塚特産大豆で作った、会の部会「野良クラブ」作。フキの若い葉もこの季節ならでは。もう少し後には、藤の花も酢の物、てんぷらにと、絶品の数々はまだまだ続きます。この節は春の野趣が味わえる絶好の季節です。

今回取り上げたものは見分けがやさしいのですが、以前タラの芽が食べたいという友に頼まれ、里山を案内しました。数芽取り、満足して帰ったのはよかったのですが、そのあと友人1人で山に入って、なんと山漆の芽を間違えて食べ入院。危ない目にあったと、あとで聞きました。確実に知ったもの以外は口にしないで。

植物はどれも敵(昆虫)に食べられないよう防衛機能を持っています。要は毒があるのです。それがヒトに影響があるかないかです。今回取り上げたものも食べすぎは厳禁。ほどほどが肝心です。

さて、会では428日、「里山の春を楽しむ会」を開催します。春の野草を味わう、新緑に染まった里山の春を楽しむイベントです。(宍塚の自然と歴史の会 代表)

➡及川ひろみ氏の過去のコラムはこちら