【コラム・室生勝】つくば市の6圏域ごとに、圏域ケア会議・困難事例検討会が年6回開かれる。自宅での生活が継続困難な事例は、1人暮らし高齢者や高齢者のみの世帯の場合が多い。検討会には、検討事例の担当民生委員が出席して、その高齢者の生活状況や訪問時に感じる心身の状態、近所や知人友人との交流状況などを説明している。
民生委員の役割は、主として1人暮らし高齢者や高齢者のみ世帯などへの年1回の実態調査のための訪問と、その結果、支援や相談相手を必要とする高齢者の見守りを兼ねた継続訪問、そして福祉に関する情報提供や市役所への相談の手助けである。
支援や相談相手が必要と思われる高齢者のなかで、介護保険サービスを利用していない高齢者には社会福祉協議会(社協)の食事サービスを紹介することで、少なくとも月1回は訪問している民生委員が多いと聞く。後期高齢者の健康状態の変化や生活の不自由さは見出しにくい。少なくとも毎月訪問しなくては感知できないだろう。
訪問に迷惑そうな高齢者でも食事の宅配は喜ばれ、次回訪問の際には食事の感想を聞くことをきっかけに会話が広がるようだ。
在宅高齢者助成券(日常生活支援、マッサージ、布団丸洗い乾燥、タクシー利用など)の紹介も喜ばれ、なんとか毎月の訪問につなげる努力をしている。さらに、地域の「ふれあいサロン」や他の高齢者の集まりの勧誘や同行もしている。
日本人の平均寿命が伸び、後期高齢者も増えている。つくば市の後期高齢者人口は2015年には1万8123人だったが、18年には2万426人に増え、これに伴って1人暮らし後期高齢者世帯が4052から4955に増えている。
さりげなく、ゆるやかに
17年版高齢社会白書によれば、14年度の前期高齢者と後期高齢者について、「要介護」の認定を受けた人の割合をみると、前期高齢者では3.0%であるのに対し、後期高齢者では23.5%となっており、75歳以上になると「要介護」の認定を受ける人の割合が大きく上昇している。
民生委員は、1人暮らしや高齢者のみの世帯が閉じこもりにならないように、福祉サービスの利用や近所の高齢者の集いを勧めている。訪問していた80歳代男性の孤独死に遭い、防げなかったと悔やんでいた民生委員がいた。それは民生委員の責任ではない。
民生委員は、個人情報の守秘義務に努める立場から相談相手は限られ、孤独である。集落別、地区別に先輩が後輩の相談を受ける、あるいは民生委員同士がペアになって相談し合う体制にはなっていないのだろうか。
多くの民生委員が相談するのは、地域包括支援課もしくは地域包括支援センター(筑波、茎﨑両圏域)である。保健師、主任ケアマネジャー、社会福祉士のいずれかが同行訪問するが、1回では適切な助言はできないと思う。数回の継続した訪問が民生委員に対しても支援として必要であろう。
現在、社協の地域見守りネットワーク活動が各地区に広がりつつある。区長、民生委員、地域住民、ふれあい相談員などのチームのさりげない、ゆるやかな見守りにより、地域から孤立した人たちが発するSOSを感知する事例が増えている。この活動に関わる人たちは普段の民生委員の活動に情報を提供し、協力してほしい。(高齢者サロン主宰)