【コラム・橋立多美】当サイトの前身は地域紙「常陽新聞」。多くの地方紙同様、インターネットの普及で購読者と広告料が見込めず、昨年春に休刊した。新聞社の片隅にいた者として、最近ショックを受けたのは通販サイトで「印刷されていない新聞紙」が売られていることだ。そこには「引越しや荷造りの包装材、緩衝材、すき間埋め材として最適」のうたい文句が添えられている。
購入した人のレビュー(評価)を読むと、鳥かごや小動物のゲージの敷物や幼児の落書き用に便利、新聞をとっていない我が家の必需品、かばんや靴などの型くずれ防止に使っているなど好評だ。極め付きは「字だと(印刷されていると)うるさくて生活感がでる」だ。
価格は新聞1カ月分に相当する10㌔で2000円、5㌔は1500円。東京新聞統合版なら1カ月2623円で、600円上乗せすれば情報が入手できる。が、英字新聞ならおしゃれだが日本語の新聞はダサいということだろう。
そこには新聞は生活に必要な情報源という意識は欠落している。また読み終えた古新聞は弁当箱を包む、湿らせてちぎって床にまいて掃く、水を含ませて窓や鏡の掃除に使うといった先人たちの知恵も消え去ったと思われる。
「NEWSつくば」が卒論のテーマ!
これほどまでに市井の人々から見放された新聞の購読部数を調べた。日本新聞協会によると、2000年の1世帯当たりの新聞購読部数は1.13部だったが、17年には0.75部と大きく落ち込んでいる。しかし、1世帯当たり0.75部の新聞を購読しているとする同協会のデータは信用できない。
40世帯の集合住宅に住んでいるが、朝刊は10軒に配達されるだけで、郵便受けに投函された夕刊を見たことはない。多分、新聞社が販売店に実際の宅配部数以上の新聞を押しつけて買い取らせる「押し紙」を含んでいると予想でき、実配部数は新聞協会が公表している部数より低いと考えられる。
常陽新聞が倒れ「地域情報の灯を消したくない」と、わずかな資金で多くの人に情報が届く道を探してたどり着いた「NEWSつくば」。相次ぐ地方紙の廃刊と私たちの取り組みが卒論の格好の題材になったようで、このところ武蔵大や茨城大の学生たちが取材に訪れる。彼らこそ紙媒体よりスマホで情報を得ているのでは、と逆取材したくなる気持ちを抑えて対応している。いずれにしろ、彼らのデジタルな感性で現状をどう捉えるか楽しみだ。
情報をめぐる地殻変動の時代の中で、当サイトはスタートから1年を迎えた。これからが正念場なのだろう。(ライター)